時も空間も歩いて越えろ

「このクソが!

こんばんは、鳩です……。

妄想バロックナイトイクリプス……。

蛇に生まれて竜に育とう 幻に生まれて現になろう

しまった、と思った瞬間に総身が砕けていた。
折れた白銀の指先から血がほとばしった瞬間、まずいと悪寒が走ったが、間に合いはしなかった。
それが鳩目・ラプラース・あばたが目覚めてから思い出した最新の記憶。

長い黒髪が視界に揺れ、ニコニコ笑う少年の顔が割りこんでくる。

「お目覚めですか?♪」

あばたは、師匠の言葉に返す言葉を持たなかった。
ただ反射的に「はい」、と答えただけだ。

破裂して砕けたはずの手足も、背も腹も、傷の痛みを感じない。
金属で出来た手を目の前に持ち上げたが、これも無傷。

「ああいうのも抵抗できるようになりませんとねー♪」

何をされたのかはわかっている。
血液を掌握され、体を内側から切り刻まれたのだ。

目の前でツーテールを揺らすこの少年は、あばたの師匠。
人から生まれ神秘の加護を受け異能を我欲の為に操る、即ち「フィクサード」。

「組み手であれを使うのは……訓練にならないと思うのですが。」
「僕とガチでやる時にも同じ言い訳が出来るんですかね?」
「……。」

陰陽・流体内破。
敵の体内にある血液や水分を操作して、内部から相手の体を破壊するスキルである。
師匠曰く、「格上の相手を斃すための技」とのこと。

わたしたちのような異能同士の戦いでは、単純な地力の差が大きく出る。
最大の攻撃を撃ちこんでも、涼しい顔で耐えられることなどしょっちゅう。
それでも勝つためにはどうするか?
フルパワーでも及ばず、こちらは一発当たれば沈む。
そんな遥か格上相手に、負けずに戦うためには。
その葛藤の果てに生まれた問い、“お前自身の力ならどうです?”

僅かでも出血させることが出来れば、その流血を掌握し刃と化して体内に逆流させるスキル。

格上の相手を屠る可能性のあるスキルであるが、逆に言えば、これは師にとって切り札中の切り札のはず。そんな技を弟子に遠慮なく使うのは、奥の手を秘すると言う意味でも弟子の修練を行うと言う意味でも非合理である。

「何故?」
「あなたが弱いからです。」

体を起こそうとするが力が入らない。傷は塞がっても、失われた体力までは戻ってきていない。
目覚める前に肉体を微塵に刻まれたのは残念ながら夢ではないというわけだ。

「……。」
「あなたが、弱いからです。」

『弱い』。
この言葉が示す意味を鳩目は正しく認識しているが、言語化するのは難しい。
身体能力のことではない。そうではあるがそうではない。
戦闘技術のことではない。そうではあるがそうではない。
心理精神のことではない。そうではあるがそうではない。

存在が『弱い』と言われているのだ。
ステージが低いと言われているのだ。

蟻を潰すように軽い力で、走り書きを消すように気軽に、己を再定義しろ。
想像した通りの自分にすぐになれ。
『想像したことがすぐに実現するようなお前になれ』。

それは神の視座。
師匠はそれを問うている。

「あなたは弱すぎる。」

発想が縛られすぎている。
限界の見積もりが低すぎる。
僕の技の本質を、何度も食らって覚えたろう?
だったら『お前の妄想の中でぐらい』これを超える設定を持ってこいよ。
それが出来ないから弱いのだ。頭が弱い。力が弱い。存在が弱い。

黒髪ツーテールの少年は部屋を出た。
あばたが寝たままの首を横に向けると、起動済みのPCのモニタが光っていた。

まずは発想せよ。
己の実力から見積もるのはやめろ。何故ならば。

何故ならば。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

その理由を、頼むから言わせるな。

以上……。

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