面の皮は厚いほど剥がしやすい

「グランドキャニオンを全身で堪能してバラバラになれ。

こんばんは、鳩です……。

妄想バロックナイトイクリプス……。

あなたの街の悪意の代表者

――――またまたぁ。殺し屋なんて、そんな職業存在しませんよぉ♪
――――アニメやライトノベルじゃあるまいし。
――――フィクションと現実の区別はきちんとつけないと、友達減っちゃいますよ?
――――少なくとも僕は、「自分は殺し屋だ」なんてセリフを本気で言っちゃうような人を

――――同業者とは、認めない。

エリューションにとって自分の気配を消すことはそう難しいことではない。
誰かがいる、と振り向いたときに既にその手は伸びていて、手首を引き、首を握りへし折る。それですべては終わり。

エリューションにとって、外見を偽ることはそう難しいことではない。
自分を相手好みの美女に似せて、相手が望む痴態を演じて、刹那の満足と引き換えに仕事と情報をもらう。いつだってそのように。

鳩目・ラプラース・あばたはそうして生きるしがないヒットマンだ。アークで仕事をしている時以外は、れっきとした悪人(フィクサード)である。

否、しがないというのは否。
エリューションとしての異能に頼り人殺しの領分を荒らす彼女は、その筋でお世辞にも好かれているとは言えない。
否、れっきとした悪人というのも否。
れっきとした……立派な、確かな悪人など、この世にいない。少なくとも彼女はそうでもない。

「このままですと、わたしたちはあなたを拘束することになります。」

アークの女性職員の言葉を受けて、鳩目は退屈そうに瞼を閉じた。

「なぜあなたは、アークの依頼を受けながらこのような非合法な行動に手を染めるのですか。」
「逆です。わたしは元からそっち側でした。アークの依頼も並行して引き受けているというだけです。」
「足を洗うことはできないのですか。」

あばたはフッ、と息を吐いて心底から嗤った。

「倉岡さん。わたしは人間を愛している。」
「は?」

名前を呼ばれた女性職員が、眼を丸くした。

「わたしは人間を愛しています。ですから、人間の頼みであれば何でも聞く。」
「それが犯罪であってもですか。」
「人間って凄いですよね。
ずっと昔から社会を作り上げてきて、その時々に応じてインフラやルールを作って。
わたしたちはそれにただ乗りさせてもらっているだけ。」
「鳩目さん、」
「人間は凄いんです。理性と秩序と欲望でこの地球上を征服してしまった。
今は国同士で戦争やってる。そりゃそうですよ、もう残った競争相手は同じ人間しかいないんですもんね!」
「鳩目さん!」
「わたしはね。この人間社会で生かしてもらうにゃ、おっかなびっくりじゃなきゃだめだと思ってる。
特にわたしのような、ヒトを食べなきゃ生きていけない奴は。」
「……。」

アーク職員倉岡は、黙ってパイプ式ファイルを閉じた。
百ページはくだらないであろう厚みが重い音を立てた。

「鳩目さん。」
「……はぁい♪」

倉岡の声に、鳩目は唇を歪めて答える。

「今日は、あなたを拘束する準備をしてある。」
「それは参りましたねぇ。」

鳩目はまだ笑ったまま、ちらつく天井の蛍光灯を眺めた。

「これ以上、あなたがフィクサードとして行動するなら、わたしたちはあなたを敵性とみなします。
あなたはご自分をエース級の善人(リベリスタ)だと自覚して、それゆえに排除されないと見込んでいるようですが、逆にいえば。『エース級のリベリスタ相当のフィクサード』に対して、わたしたちは手加減しない理由を十分に持っています。」
「それは怖い♪」
「あなたはこれから、」

部屋の電話が鳴った。倉岡は2コール分ほど鳩目を睨んでから受話器を取った。

「はい。……はい?それはどういう……。」

倉岡が鳩目をちらちらと見ながら困惑した表情をうかべる。

「……承知しました。」

受話器を置くと、倉岡は苦虫をかみつぶしたような顔で、「帰ってください」と言った。鳩目は得意げな表情になって、「では、帰ります♪」と、席を立った。
憎々しげな視線を背中に感じつつ、鳩目は扉を開ける。

わかっている。誰から電話があったのか。
『鳩目・ラプラース・あばたはフィクサードではない』。
そのように決定した何者か。
彼女が誰をどのように殺そうが、どれほどに悪人(フィクサード)らしい行いをしようが、それを消し去れるもの。それを事実としてこの世に反映しないもの。

異世界の種(アザーバイド)。もしかしたら異世界の主(ミラーミス)。いや、もしかしたら造物主とでも呼ぶべき何かが。

そしてそれこそが、鳩目あばたに異能を与え、鳩目あばたが討伐したいと願う敵そのもの。
リノリウムは高く彼女のブーツの音を鳴らした。

 

以上……。」

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