命拾いの達人

「視界に入るな。

こんばんは鳩です……。

またもや妄想バロックナイトイクリプス……。

本日はこちらの方をゲストにお呼びしました。これも造物主には許可取ってますので。

 

 

 

Narrow Escape,Escape Artist.

禍原・福松は不測の事態を楽しめる性質ではなかった。
自他共に認めるアウトローではあるが、行動することより寧ろ行動しないことで生き延びてきたから。
左手に提げたアタッシュケースを恨めしげに睨む。
それから音を立てぬようそっと溜息を吐いて、床をそっと踏みしめた。
前方に続く廊下は暗闇に塗りつぶされている。
それでも何か動く影があればわかるから、それを撃つ。
それだけでよい。後方に気を配る必要はない。
不本意ではあるし、信用もできないが、信頼だけは出来るから。

禍原の後方の廊下の角に、鳩目・ラプラース・あばたが背中合わせに立っていたから。

————

簡単な仕事だと思っていたのだ。

『ケースを運び屋に渡せ。中身は見るな。』

依頼を受けた瞬間、禍原は幾通りものシナリオを想定し、結果、「どうとでもなる」と結論を得た。
時刻も場所も渡し方もこちらから指定すればいい、よしんば『運び屋』が『運び屋』でなく『刺客』でも、コインロッカーなどを経由させれば直接接触はしなくて済む。
最悪、ドンパチする羽目になっても相手は『人間』だ。革醒者の自分なら逃げ切るくらいは出来る。

依頼を受けてほどなく、禍原は指定された『運び屋』に電話をかけた。

「もしもし。」
『もしもし?』

聴いたことのある声だ、と気付くことまではできたのだ。
そこで芋を引いていれば。

————

鳩目・ラプラース・あばたと禍原・福松はアークの依頼で顔を合わせたことがほとんどない。
互いにリベリスタ実行隊員として登録はしているものの、同じ依頼を受けたことは数えるほどしか――――互いにただの同行者としてのみ意識する程度にしか――――ない。
だから、電話越しの音質の低い声だけで『コトの真相』を悟れなかったのは禍原の不手際ではない。

鳩目は『たられば』を無価値と断ずる性質であったから、彼や自分を責める気持ちを持っていなかった。経緯はどうあれ今この時だけがすべてなのだ。反省は後ですればよろしい。

廊下の角の向こう側の暗闇から気配はない。
だがそれは何の保障にもならない。なぜならば、人ならぬエリューションには『気配遮断』なるスキルが存在するから。
自分たちをこんな窮地に追い込む相手がそんなスキルを持っていないわけがなかったから。
不毛さに、あばたは天井を仰ぐ。

————

アタッシュケースの重みに、禍原はトラブルの端緒を思い出す。

電話で聴いた声は確かに知った女性の声ではあったが、依頼内容については至極スムーズに会話が運んだ。12歳にして流浪の人生を送った禍原には「接触したことのある人間」は多過ぎたし、増してや一度や二度しかあったことの無い人物のことなど鮮明に思い出せるはずもない。

『運び屋』が鳩目だとわかってさえいれば。
そう考えてから静かに首を振る。
わかっていたところできっと自分はこうなっていただろう。
予想も予測も出来るはずがない。
この依頼そのものが鳩目を殺すためだけに仕組まれたものだったなどと。

————

『掃除屋』とは隠語であり、また直接的な表現でもある。
鳩目は暗殺を本業、ビルメンテナンスを副業とする。
前者において恨みを買うことは多く、本人もそれは承知している。承知している筈だった。

それがよもやこんな仕掛けを食らうことになろうとは。自覚が足りない。
呆れ顔で天井を仰いだまま、鳩目はビルの壁を銃底で二度強く叩いた。

————

振りかえった福松は、背を向けたままのあばたが片手で天井を指差すのを見た。
視線を上に向け『千里眼』を起動すると、天井と上階の間で銃器を手にした者共が蠢いているのが見えた。

お前も千里眼使いなのかよ。

言葉を飲み込んで、代わりに溜息をまた一つ。銃口を上に向ける。
禍原が引き金を引くのと背後から連射音が聞こえるのはほぼ同時であった。

————

「確かに渡したからな。」
「すみませんね、お付き合いさせちゃって。」
「追加料金はお前に請求でいいんだよな?」

落ちた薬莢を拾って見せつけながら、禍原が睨む。

「わたしにとってもアクシデントなんです。どうかご勘弁を。」
「はん!」

手にした空き薬莢を指で弾く。

「リスク管理がなってねーよ。」
「本当に感謝しています。ありがとう。」

鳩目が深々と頭を下げ、禍原はバツが悪そうに後ろ頭を掻く。

「……中身は見てませんよね?」
「あんたと喧嘩する趣味はねえよ。」

禍原が肩を竦めて応えると、鳩目が幽かに笑った。
二人の背後で、天井から撃ち落とされたフィクサードの死体が重なって血の臭いを放っていた。

————

広域指定暴力団組長の私邸玄関前に愛人の首の入ったアタッシュケースが置かれた事件は、テレビを3日ほど、ネットを一カ月ほど賑わせてフェードアウトしていった。

そのニュースが報じられた新聞を禍原は丸めて捨てたし、鳩目宛ての電話番号を携帯のメモリから消した。

――――依頼の『本当の』意図を汲んだなら、あの場で鳩目を殺しておいた方が良かったのか?

それはあり得ない選択だ。
依頼を受けた身としては、『運び屋』に渡すために尽力したという立場が最も安全だから。
『何も知らない』『依頼は忠実に果たそうとする』

それが一番正しい選択だ。クライアントの望む態度だ。
利用されたとわかっていても気づかないふり。
クライアントの思い通りにいかなかったとわかっても知らないふり。

それでも。
――――啖呵くらい、切らせろや。

あばたの嘲笑うような声が、風の中から聞こえた気がした。

 

 

 

以上……。アイデアは一部こちらから盗用いたしました。ありがとうございます……。

そしてシチュエーションはこれの焼き直し……。えへへ♪」

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