Spite and Malice

「何故その年齢まで生存できた。

こんばんは鳩です……。

またもや妄想バロックナイトイクリプス……。

 

Catch and Release

 (私は何をしているのでしょう……)
口にくわえた体温計をピコピコと振りながら、天井を眺める。木目だったら面白かったのに、などと考えてしまうあたり、本当に熱があるのかもしれない。頭がぼんやりとしているのは確かだ。けれどそれは体調の不良によるものとは真逆で、大量の情報を一斉に処理しようとフル回転しているからこそのオーバーヒートであるともいえた。

「お機嫌はいかがですか。」

鳩目・ラプラース・あばたの足音が、ああそう言えば聞こえていた。

「ええ、だいぶ楽になりました。」

言い終える間もなく鳩目は体温計を取り上げると目盛を見もせず液だめ部分をパクりと口にくわえた。

「ちょ、え、あば、あばっ、あ、いえ、ええーー!?」
「ニンジャスレイヤーみたいになってますが大丈夫ですか?」

ティッシュで液だめを拭きとり、ケースにしまう。

「いや、あの。今のは、」
「何か。」
「あの。」
「何か落ち度でも。」
「ん、えと。その。」

鳩目様ってそういう趣味だったんですか連れ込んだのもそう言う目的でまさかいやそんなだってそもそも何で熱測ってたんですか全然目盛見てないじゃないですかじゃあなんですか間接キスの為だけに体温計を渡したとでもしかしわたしには想い人がいえわたし鳩目様のことそういう目では全然見ることは

「もうちょっと休んで行った方がよさそうですね。」

クルクルと顔色を変えるリリ・シュヴァイヤーの姿を見て、鳩目は事もなげに言った。

「いや、もう大丈夫です。お世話になってしまって。」
「いいから寝ててください。ちょっとからかっただけなのにその取り乱しようでは、無意識化にまだ濃く残滓が残っているらしい。
酔っ払いを外に出すわけにはいきません。」
「酔っ払い。」
「幻想酔いです。」
「それって、何です?」

壁を隔てて扉を空ける音、続いてただいまという少女の声。

「おかえりなさい。こっちです。」

鳩目が呼ぶと、ランドセルを背負った小柄な少女が部屋に入ってきた。

「ただいまママ。」
「おかえりサンダー。」
「……サンダー?」
「これはわたしの娘。鳩目サンダーと言います。」
「こんにちは、初めまして。」

サンダーと呼ばれた少女は深く頭を下げて挨拶する。

「サンダー、こちらの方はリリ・シュヴァイヤーさんと言います。」
「こんにちは、サンダーちゃん。」
「職業は売女。」
「ちょっと!」

ベッドから跳ね起きたリリだが、立ちくらみに近い眩暈を感じくらくらと頭を揺らした。

「バイタって何?」
「売春婦のことです。男にいやらしく抱かれてあげることでお金をもらう職業です。」
「違います!違いますからねサンダーちゃん!」
「じゃあバイタって何?」
「そこが違うんじゃないんですー!!」
「サンダー、手を洗って着替えて、宿題してなさい。」
「はーい。」
「ちょっと待ってちょっと聴いてくださいサンダーちゃん!」

サンダーは心配そうに振り返ったが、鳩目がしっしっと手を振るのを見て無慈悲に退出した。

「……何であんなことを言ったんですか。」
「わたしが面白いので。」
「酷いです……。」

がっくりとうなだれるリリ。

「お疲れのようですしやはりもう少しおやすみになって行ってください。」
「誰のせいだと思ってるんですか。」
「あなたがわたしの頭を覗いたりしたせいですからあなたのせいです。」
「むう……。」

リリは落ちたぬれタオルを拾い、自分の額に当てて横になる。

「あなたのせいと言えば、わたし最近指をツメましたよ。手足の指全部。」

リリが鳩目に横顔を向ける。鳩目の顔はクローゼットを見つめていた。

「指は生えてくるからいいんですけど。……他の方は知りませんが少なくともわたしは、欠損が完全に治るタイプのE能力者なので。
でも、それじゃあ納得は出来ないのですよ。あなたにも相応に苦しんで頂きませんと。」

ですから今日のことは、ザマあ見ろって気分でした。
鳩目の口の端がいやらしく持ちあがる。

「でもまだ釣り合いませんねえ。痛かったし暫くは不自由でしたし。もうちょっと苦しんで欲しいかな。」
「勝手なことを……。」
「例えば、教会の運営費の一部を毎月わたしに振りこむとか。」
「そんなことはできません。」
「そんじゃあわたしのパトロンにあなたの教会へ定期的に寄付をさせましょう。
わたしには、そうですね。半分は言い過ぎですから、寄付の4割ぐらいを流してください。」
「キックバックですか。」
「そうそう、悪い話じゃないでしょ?」
「あなたのパトロンさんがその話に載るメリットがわかりません。」
「メリットはありますよ。
金を受け取ったら、あなたの教会はわたしたちの下部組織になる。」
「……。」
「いらないなら寄付を引き上げるだけです。でもこの日本で、しかもマイナーな宗派の教会となると裕福であるとは考えにくいことですね。水回りや電気ガスは十全ですか?修繕が必要な部分があるのでは?買い換えたい物も沢山あるでしょう。」
「……。」
「別に『金をやるからあれこれしろ』とは忙しく命令したりしません。たまーに、わたしたちの言うことを聴いてくれたらいい。あと、電化製品の買い換えやリフォームのときには、業者を指定させてほしい。」
「……?」
「資金を洗浄させてほしいのです。」

リリはゆっくりと起き上がり、今度こそはっきりとした意識で告げた。

「お断りします。」
「そうですか残念。」

さほど感慨もなく鳩目も告げる。

「しかしなるほど。正義の味方(リベリスタ)は仕事で悪党(フィクサード)は生き様と前おっしゃっておられましたが、一理ありますね。」
「恐喝や強盗だけが悪行ではないのですよ。
ご飯、食べて行きますよね。」
「いえ。」
「倒れたあなたをここまで運んであげたんですから、娘と一緒に夕飯囲むくらいはしてくれてもいいんじゃありませんか?」
「……仕方ありませんね。」

リリは深いため息を吐いたが、その表情は少し嬉しさも混ざっていた。
子供のご機嫌取り。鉄火場で撃ち合うアークの仕事に比べれば、少しは和みそうでもある。

「しかし、サンダーちゃんってなかなか珍しい名前ですね?」
「ゴージャス宝田と言うエロマンガ家の描かれた妹ゴコロというロリエロ漫画の中にズバ山サンダー、本名兎羽山(とばやま)サンダーという男性が出てきまして、その名前が余りにも印象に残ったのでわたしのパトロンが付けたのです。」
「碌でもない!」

以上……。」

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