Otherworld Atlas

「本当は生まれなかったことにしたいぐらいだがまだそれをする技術はこの世に無いので死ぬだけで許してやる。

こんばんは鳩です……。

またもや妄想バロックナイトイクリプス……。

 

Not of This World

巨万の富を引き当てた気分だった。
笑え笑えと顔中の筋肉が喜び蠢く。臓腑に至る痛みさえ和らぐ、極上の心地。
見つけた。

「見つけた!」

つい声に出てしまった。
右手は切り開かれて血を滴らせ、左手に至っては肩から先が地に落ちている。
それでも、それでも笑わずにはいられなかった。
神殺し。
神殺し!
神殺し!!
見つけてしまったのだから。鳩目あばたは見つけてしまったのだから。

黒髪の少年が、30mほど前方で倒れている。銀色に輝くのは、彼が握っていた魔性のナイフ。
あれに斬られ切られ、それでも死なず死ねず苦しく、どうかあれに痛い目を見せたいと妄執の果てにたどりついた境地。
稀代のガンナーである鳩目あばたの手に、銃は握られていなかった。
光る弧が指先にかかり、そのずっと先、少年の立っていたであろう位置に、小さな光の輪が浮かぶ。
引き金と銃口。
神秘の力が作りだした、究極の銃だ。

「素晴らし」

引き金を引けば、少年の開いた口が『何か』に撃ち砕かれる。光の輪はいつの間にか倒れる少年の眼前に浮いている。
辿り着いたのは因果の逆転。
狙った場所に当たるのではなく、当たる場所を狙う銃口。
倒れた少年も用いる、神域の力。
鳩目は引き金を引く。引く。引く。
少年の身体が面白いように跳ねまわり、砕け、血液を散らす。
そのたび鳩目の肉体と精神にはじけそうなほどの悦楽が迸る。

死ね!死ね!!死ね!!!

どれほど彼に痛めつけられてきたことか。
「届かぬ」「未熟だ」「やり直し」
師弟関係ではあるが、それ以上に主人と奴隷の関係であった。主人と奴隷以上に、使い手と道具の関係であった。
それを今精算する!なんと気持ちのいいことか!
引き金を引く。引く。引く。
この程度で許してなどやらぬ。殺して殺して痛めて痛めて。それでもお前は死なないのだろう!!
それでいい。今はまだ。まだ死ぬな。もっと苦しめ!
意思の力で左腕を引き寄せつなぐ。二丁拳銃で引き金を引きまくる。
狙うえば必中神域に届く、神のごとき弾丸を。
人間には為せぬ連射速度で。
給弾装置などそもそも邪魔なのだ。異能力に目覚めている鳩目の膂力に、実銃の機構は上限しかもたらさない。『撃てば撃てる』『撃っただけ撃てる』。それが究極。
404 Not Foundの白き神殿、その白い床が壊れゆく。白い粉末になり、煙になり、少年の姿を中心に湧いて膨らむ。
それでも銃撃をやめることはしない。するはずがない。
奴は神域の獣。わたしはそこにやっと手をかけただけ。手加減などする余裕はない。

「正しい選択ですが。」

耳元に、風。
振り向くより速く、電流が鳩目の肉体を強かに打った。神経の信号伝達を阻害され、あっさりと倒れる。

「賢いとは、言えませんね。」

風は少年であった。
彼が身につけたのは、流体を己の物とすること。もともと水を操る能力を持っていた彼もまた、神域に挑戦する為その異能を発達させ操作範囲を全流体へと広げた。それのみに飽き足らず、遂には肉体さえも流体と変えられるようになり、強固な不死性を獲得するに至る。
鳩目を打ちすえた電撃も空気中から彼が取り出したもの。

「まだまだ肉体が弱すぎる。」
「それでいい。」

超音速の爆音が鳴り響き、風に映る少年の影が掻き消えた。
少年の背後には直径2mほどの光の輪。少年は銃口ではなくバレルの中に閉じ込められ、接射より酷い弾丸を全身で受けたのだ。

「悪いのですが、今日はわたしが勝ち逃げします。」

流体の彼はまたすぐに復活するだろう。けれども今はまだいいのだ。
こんなどこでもない場所で。こんな夢想の中で倒したって、戦果には数えられない。
鳩目は地面を撃ち、床を砕いて神殿の外へと落ちて行った。

まどろみから目覚める。
首に刺さった端子を抜く。
モニタ上のコンソールには“quantumd -avatar”の文字。
“\q”
と打ち込んでプロセス終了。

手ごたえがあった。己の手を見る。
機械化された腕。しかし並みの人間よりはるかにしなやかに、強く、正確に動く手。
これが本当の姿。
でもわたしだけは知っている。
これは嘘っぱちだ。お前が。お前が。見ているんだろ。書いているんだろ。今も尚。こんなふうに。そら、こんなふうに!!
それでいいんだ。お前たちは、自分が嘘であることすら知らないんだろう。気付けないんだろう。
嘘っぱちの癖にわたしを苦しめるお前。お前。『お前』!
わたしは、お前の求めるような、足掻き方はしない。嘘は嘘だと『正直に』受け取る。
お前を討ち滅ぼしたい。だがわたしはお前を求めて足掻きはしない。
わたしが真実を求めるのではない。お前が、この嘘の中に降りてくるんだ。引きずりおろして殺してやる。
紛い物でいい。出来の悪いざまでいい。その方がいいんだ。
この紛い物の中に引きずりおろし、紛い物の弾丸で拒絶して。
『お前はこの世界にいらない』
そう言ってやるのだ。

以上……。」

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