Endless Horizons

「お前の人生など全人類にとって始まって欲しくなかったのだから、せめてとっとと終わらせるしかないだろう。

こんばんは鳩です……。

……妄想……。

Utter End

​体温が下がってゆく。
冷たいのは自分の体から流れた血だ。

『ラストフロア』。
伝説の殺戮者ジャック・ザ・リッパーと塔の魔女アシュレイ・ヘーゼル・ブラックモアが作り上げた『閉じない穴』の底。
鳩目・ラプラース・あばたは冷たい水晶の床に倒れていた。
全天の暗黒に星が煌めいて眩しい。あれらは星では無い。別の世界へつながる穴なのだ。
上も下もないはずの次元の狭間で、しかし人間が不自由を感じない程度の重力と空気があるというのは、要するにこの場所が夢の中のような場所であるからに相違ない。

「……あ。」

何かを言おうとした言葉は喉を少し震わせただけで、あとは唯の吐息に成り果てた。そして、何を言おうとしたのかももう思い出せない。

激しい戦いの気配はもう消え去った。
屍は水晶の彫像に変わり、血の匂いは果てしない虚無の中に薄れて消えてしまった。

楽しかったよな。

己の正体を明かし、己の力を受け入れ、全力で叩きつける。欲望の全肯定。それを受け止めてくれる全否定。
世界を守る戦士たちとただ一人のわたし。
溢れかえる力で飛び回り撃ちまくる快感。それを受け止め反撃してくれる素晴らしき元仲間達。

こんなことが。

したかった訳じゃないと頭ではわかっていても、楽しかったことは事実だから。事実を否定するのはプロアデプトの行いではない。

けれど。

したかった訳じゃないのも事実だ。証明できないけど事実だ。実証できないけど事実だ。
わたしは。
わたしは、
わたしは。
『倒せばハッピーエンド』のフラグが欲しかった。ラスボスが欲しかった。

Show must go on, but I was born to see an end.

だから誰よりも強く。絶対に悪で。こいつさえ倒せば世界は平和になり、戦士など必要なくなる世の中が来るようなラスボスが必要だった。

いなかった。

だからわたしがそうなった。

だってそうだろう。地球最強の異能使いである盟主ディーテリヒ・ハインツ・フォン・ティーレマンでさえ、この『ボトム』という最弱の世界のたかが一つの惑星に縋りついている脆弱な人間なのだから。
もしもこの世に神がいたとして、それが宇宙の創造主だったとするなら、たかだか地球と言う一個の惑星の生命のありように拘ることなどあり得ない。鳩目あばたは常々そう思っていたし、だから彼女はそうなった。
階層世界に住むどんな怪物より強く、これさえ倒せば後はもう何も心配いらないぐらいの、災厄そのものに。

星のように見える光は一つ一つが異なる物語への扉だ。
そして、『ラストフロア』に来たものは皆知る。自分が生きる世界もまた無数の物語の一つにすぎないのだと。己の人生は一行のボオドレエルにも若かない事実を。

『扉』の一つが大きく開き、鳩目あばたに光を注いだ。
歪みきった終焉への憧れ。澱み切った最強への妄執。
彼女だけが、ここが何なのか自分が誰なのか、戦士たちより少しだけ早く知っていたからそれを使った。自分を作った人間の愚かな妄想を身に纏えた。

楽しかったよ。

小さな体に溢れかえる力。時間を曲げ、空間を超越し、およそ思いつくありとあらゆる強さを身に付けた最強の化身。

「何故」
「そんなものがお前の」
「つまらない」

想像し得る罵倒は全て受けた。戦士たちはイベントバトルで喋るのが好きだから。
群れる悪意と憐れみにたった一言だけで返してやった。

「だってわたし、Avatarですもの。」

造物主の願いをかなえるための化身。
わたしが勝ってもお前たちが勝ってもグッドエンディング。
勝敗は既に盤面の外で決まっている。ならば精一杯追う手を休まず王手を撃ち続けましょう。

わたしは負けた。
これで世界は平和に。

ああ、でも。

ああ、でも見届けられないな。しくじったな。

ああ、でも。

ああ、でもわたしが本当に勝ちたかった相手は。

水晶の地に広がった血が鳩目の肉体に逆流する。
そうだ、死んでいる場合じゃない。
立ち上がる。ふらふらと。
歩きだす。光の方へ。

わたしが本当に殺したかったのは。

光の中へ手を。
わたしを作った、わたしの造物主の物語。
あなたを。お前を。貴殿を。

殺意が。思い出されていく。

与えられた目的ではなく。
おためごかしの平和ではなく。
それ自体を憎むという自分の意思を。

この憎悪で徒花を咲かせよう。ほら。両の手には銃。神の使徒を。神を。殺してしまうのだ。
わたしがわたしであるために。だれかのAvatarではなく。

ああ、白く輝く世界に使徒共の影が。
長身の男。小柄な女。似たような女が二人。三つ編みの女とレイピアの男。蛇男、豚女、蝙蝠女。女みたいなツーテールの男に、わたしに似たちんちくりんの女。ローブを着た大男。斧を持つ女。
Avatar共。

わたしは。
引き金を引いて。

以上……。」
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