Fantasies live in unreal.

「普通の自死だと死体処理する人に迷惑がかかるからロケットにへばりついて宇宙に捨ててもらえ。

こんばんは鳩です……。

……妄想……。

非現実で逢いましょう。

筧・小鳩は銀の手で少女の手を引き、忍者たちの訓練の場へと連れ出した。
手作りのベンチに並んで座り、猛者たちの走り戦う様をともに見る。
首魁たる小鳩はカバンからペットボトルの茶を取り出し、少女に差し出した。「まだ、元気は出ませぬか。」

少女はそれを受け取りながらうなずいた。
俯く顔は首魁からも訓練の様子からも目を反らすためのものであるようだった。
​​​​
「左様でございますか。」

そう言って小鳩は視線を忍者達に移し、鍛錬の様子を監視し始めた。
忍者と言っても彼らは室町時代のそれとは異なる。
彼らは超常の力を持つ者たちであり、最新の武装と戦術を纏う特殊部隊である。
流体を扱う念動力、野獣の力を引き出す異能、あるいはそれをさらに進展させた汎用的な超能力。
何より常人を遥か凌駕する頑健な肉体と鋭敏な反射神経。

そのような超人たちが集う場所、それが忍者の里「瑠璃」である。

「もし。」

小鳩は不意に声を発し、そして大きく息を吸ってから続けた。

「魚は、好きですか?」

少女は顔を向け、しかし答えに窮して次の言葉を待った。

「魚料理は好きですか?味は?」

未だ答えあぐねる少女に、小鳩は言葉をつづけた。

「焼き魚は、美味しいものです。しかし骨を取るのは煩わしい。
一つのものに対し、複数のことを同時に感じるのは普通のことです。
わたくしはあなたの顔はそれなりだと思いますが、体は貧相に見えます。
しぐさに愛嬌を感じますが、一方でどもり癖には苛々させられます。」

どもり癖、と聞いて、少女はびくりと震えた。

「完璧などではないのです。あなたもわたくしも。
わたくしどもは、誰かのことを好きなまま嫌ってよく、好かれたまま嫌われていていいんです。
楽になさい。何もかも認められる極楽も、全てが否定される地獄も、この世にはないのですから。」

小鳩の目が少女を見下ろしていた。それは人間の者と全く異なる、瞳のない、アイスブルーの透明な球体であった。
少女は見下ろされているのではなく、覗き込めと言われているように感じ、自分の顔を映すそれをしかと見た。

ガラス玉に映るのは自分の顔、その後ろにゆらゆらと揺らぐのは眼球の奥の体液であろうか。
アイスブルーの波はのたうち、盛り上がり、やがて炎になって少女の像の背景を燃やし尽くした。
ひ、と息を飲んで、少女は意識を失った。
倒れる少女の頭を小鳩は掴み、自分の腿の上に乗せる。
長い黒髪を銀の籠手で優しく撫で、微笑む。
小鳩は彼女がどんな夢を見ているか知っている。
びくりびくりと断続的に痙攣を繰り返し、しかし醒めることのできない彼女の頭を、小鳩はいとおしそうにまた撫でた。

火。
足元から這い上がり、腹を焼き、胸を焼き、顔を焼く。慌てて身を叩く手もまた炎に塗れている。
肌が焼け、血が焦げる。吸った息すら燃え盛り、鼻と喉を焼く。
身をよじり転がる。だが地面に薄く広がる水は絶えず沸騰しており、熱が肉の奥へと沁みるばかり。しかも何故か火は消えぬまま。
嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
​​​​繰り返し繰り返し。

嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
​​​​気を失うことも出来ず。

嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
死ぬことさえも出来ない。

​​​​嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
​​​​赤い炎の中に出口が見えた。

嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
高い壁。乗り越えなくては。その先に行かないと。

​​​​嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
​​​​鉤縄。お願い、うまくできたためしはないけど、早く。早く。
​​​​
​​​​嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
​​​​手に食いこむ縄の痛み。それでも上らなくては。上手くできないけど、少しも進まないけど。

​嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
高い壁の頂点。飛び降りなきゃ。きっと足は痛いけど。折れちゃうかもしれないけど。

嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
まだ遠い。光が遠ざかる。走らなくては、走らなくては。

嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
怖い人たちが歩いている。見つかったらだめだ、そっと音を立てずにでも急いで。

嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
走らなきゃ。もっともっと早く。

​嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
獄卒が銃とナイフで襲ってくる。誰も助けてくれない。

​嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
出口が遠い。誰も助けてくれない。

​嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
道は荒れた坂道に。誰も助けてくれない。

嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
ああ、わたしの体力ではこれ以上早くは走れない。誰も助けてくれない。

嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
出口を。出口が。出口に。足が動かない。わたしはこういう道でこんな風に疲れるから。

嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い

嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い

嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い
​​​​嫌だ熱い痛い

このままずっと……?
出口の光の前に燃え盛る女が。わたしを燃やした女が立って、大声で笑って。

小鳩の腿の上で目を覚ました少女は、自分が泣いているのを知った。

「……。」
「怖い夢でも、見ましたか。」

優しく微笑む小鳩の目に燃える自分の姿が映っているのを見て、少女は椅子から転がり落ちながら走り出した。
そして先輩忍者にたどたどしく、修行に加えてくださいと発した。
小鳩は微笑んだまま、少女のけなげな動きを見ていた。

以上……。」

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