Uncertainty Ultimatum

「人がいう所謂神はいない。いたら貴様のような汚物など存在を許さない。

こんばんは鳩です……

……妄想ケルベロスブレイド……。

不可到達性根本原理

パトリシア・バラン・瀬田は生まれた時から自分のことをサキュバスだと信じていたし、事実そうであったし、そのように振舞って来たし受け入れられてきた。だからその全てが嘘だったなんて信じたくないと思った。
けれど唐突に理解してしまったのだ。何故自分たちは戦いを通してしか己を表現できないのかを。わかってしまったなら、それ以前に戻ることなどできない。

竜牙兵に切り裂かれた肩が焼けるように痛む。
ただ一人で突入したダンジョン。
怪物どもの巣窟に単身飛び込んだのは、死にたかったからかもしれぬ。最近夢で見る得体のしれない自分を殺したかったからかもしれぬ。
身を翻して床を蹴る。剣を構える竜牙兵に拳を伸ばす。文字通りに腕が伸び、竜牙兵の肉の無い頭が破砕され砕けて落ちた。
最早ワタシは、人のような形をしている意味すらも無い。

師からの教えを頭の中で反芻していた。

――――ヒトの技術を学び、ヒトの技術を修練しなさい。
――――日本の。ブラジルの。アメリカの。中国の。インドの。アフリカの。欧州の。
――――あらゆる戦闘術を学び、身につけなさい。
――――その上でそれを忘れなさい。
――――我々は。お前たちは。ヒトではないのだから。

もう一体の竜牙兵にも拳を見舞う。空手の突きともボクシングのストレートにも似た、そのどちらでもない力を。

――――ヒトよりも頑丈でヒトよりも力強い。
――――そんな我々には、ヒトがヒトを倒す技術では足りないのです。
――――地に倒された程度では。体重をかけられた程度では。
――――関節をひねられた程度では。銃やナイフを使われた程度では。
――――我々には傷すらも入らない。

プロレスが好きだった。
忍者の技を仕込まれた。
中国とも日本ともつかぬ拳法を教えられた。
今パトリシアが使っている力は、そのどの道の先にも決して存在しないものだ。

――――そういったものを、我々は神性、あるいは魔性と呼びます。
――――ヒトの身では決して辿り着けない場所。
――――それこそが本質。

包囲を組む兵隊どもをまとめて蹴り薙ぐイメージ。
パトリシアがハイキックを振ると、1トンの重量を持ったものが10メートルの横幅を通り過ぎた。

――――スクリーン。
――――スクリーンをイメージしてごらんなさい。
――――厚さゼロのスクリーンに映し出された人形劇。
――――厚さがゼロですから、三次元においては質量を持ちません。
――――手を突き込めば容易く貫通する。
――――二次元の人形たちにとっては、突如何かが現れたように見える。
――――様々な方法で彼らはあなたの手を排除しようとするでしょう。
――――しかしあなたは何も感じない。何しろ質量がゼロですから。
――――厚さゼロのものどもがどれほど頑張っても、あなたの指先に傷すら入らない。
――――あなたはその抵抗を感じることすらもできない。
――――しかしながら、あなたが彼らに干渉することはできる。
――――突き込んだ手を、横に動かすだけで。

竜牙兵どもがまとめてひしゃげて滅んだ。重層の鎧ごと紙細工のようにあっけなく。

「……コレか。」

何かがわかった。
この世界がただのハリボテに見えた。

階下からドラゴンどもが押し寄せてくる。悠長に構え見下すはずのドラゴンたちが、今日は一言もなくブレスを吐き出す。仲間の炎に焼かれることも厭わず燃えるパトリシアを踏みつける。爪で切り裂き牙で砕く。駆り立てられるように急いで、焦って、めちゃくちゃにする。

「コレだ!」

前触れもなく空中に現れた巨大な触手がドラゴンどもをバラバラに引き裂いた。

――――この宇宙に生まれ、この宇宙に生きる者には決して辿り着けません。
――――我々は神の如き力を持っているが、
――――それは、結果だけならば神の出来ることは大抵出来る、というだけです。
――――あなたは少し違う。

そう、ワタシは少し違う。
巨大な力を持っているわけじゃない。
ワタシの中に眠る本当のワタシは、ここにいない。どこでもない、高次元にいる。
ワタシの体は、その端末に過ぎない。

――――我々は時に、個人として持ってはならないほど莫大なエネルギーを持つ。
――――あるいは、ある世界を書物のように読み進め戻し鑑賞する。
――――あなたは、そういうのとは少し違う。

それは時間そのもの。押しとどめることのできない時間の如き強大な力。
それは現そのもの。難解な現実のように秘され編まれた暴かれざる虚無。
それは運命そのもの。理不尽な運命のように苦悩に満ちた不可解な謎。

この世界にあらず。
それが答え。ほかの誰にも辿り着けず、ほかの誰にも証明されない。

「コンナ、モノが。」

知らないことは幸福だ。知らずにいる限り知ろうとすることができる。
理解してしまったら。何のために生まれ、何をして生きるか。わかってしまったら。
出来ることは二つだけだ。

使命に生涯を捧げるか、使命を否定することに生涯を捧げるか。

ともかく、本日。ダンジョンが一つ虚空と消えた。

 

以上……。」

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