ハンズLOFTニトリ

「知れば知るほどに夢は見られなくなる。物理に慈悲はない。

こんばんは鳩です……

……妄想ケルベロスブレイド……。

本日はこちらの方を借り上げまする……。

酩酊の夢幻
んぁ。
自分の出した声があまりに間抜けすぎて一気に目が覚めた。

「あの。い、鼾が煩かった。ので。」

ベッドの傍らに立つ茶髪が、パトリシア・バランを見下ろしながらおどおどと言った。

「……ショック!」

叫んでパトリシアは勢いよくと起き上がる。同時に胃痛と頭痛が襲ってきて背を丸めた。脳裏に昨夜の暴飲がよぎる。
ここホテル53Xの10人部屋に、今寝ているのはパトリシア・バランと茶髪の女、ウィルマ・ゴールドクレストの二人だけだった。一先ず、起きてからも他人に騒音を与える
ホテルと言ってもラブホテル、本来ならあるはずもない多人数部屋は、オーナーであるパトリシアが無理やりに作らせた、ケルベロス専用の雑魚寝兼多目的部屋である。

「イビキー、かいてましたカ。」
「歯ぎしりも。して、いました。」
「ショック!!」

パトリシアの背をさすりつつウィルマは追撃を加える。

「ゴ迷惑をおかけしまシタ。」
「マウスピース、が効くみたい、ですよ。い、鼾にも、歯ぎしりにも。」
「あー顎痛イ。飲み過ぎて寝ると大体こうなるんデスヨネェ。酔い覚ましに買いにいきマス。」

首をゴキゴキと回すパトリシアに、ウィルマが首を傾げる。

「悪酔い、ですか?ケルベロスなのに。」
「ア。」

パトリシアはウィルマの言葉に呆けた顔をすると、目を閉じて眉間にしわを寄せ手を中空にかざし、何やら集中するそぶりを見せた。そうしたまま5秒ほど停止した後、ふぅぅと長い息を吐き出す。

「アリガトウゴザイマス。」

パトリシアの顔からは、すっかり憂いが消えていた。
ケルベロス。それは無敵の生命体。
同種、あるいはデウスエクスと呼ばれる神性以外によっては決して傷つかず侵されない。
悪酔い如き、それを「取るに足らぬ毒」と意識して自身の超不死性をぶつければ瞬時に消え去るものなのだ。
それすらも忘れさせるのが酒の恐ろしいところではあるのだが。

「にしても鼾デスカー。」
「歯ぎしりも。」
「ショック。」
「行きましょう、か?一緒に。」
「エ?」
「マウスピース、買うの。に。」
「一緒ニ?」
「は、はい。」

しばし見つめあう。
ウィルマの頭髪は前髪も長く、その双眸を完全に覆い隠している。が、その先にある目線は確かにパトリシアの翡翠色の瞳と対峙している。わかる。ケルベロス特有の敏感な感覚故に。
或いは、ケルベロスとして戦った戦士の勘故に。

「……是非。」
「は、はい……!」

身支度してきますね、とそそくさと部屋を出ていくウィルマの背中をパトリシアは微笑みながら見送った。

「ああ、そうだワタシモ!」

手で髪を掻いて寝癖を確認しながら飛び起き、シャワールームへと飛び込んだ。

—-

「……思ったんダケド。」
「は、はい。」

百貨店内雑貨コーナー。
パトリシアとウィルマの眼前には、『いびき、歯ぎしり防止に!』と自信満々に書かれた箱が陳列されている。

「ケルベロスの咬筋力に耐えるマウピーが市販されてるワケがナイって気づくべきだったわヨネ。」
「す、すみません。」

彼女らケルベロスは常人とは一線を画す身体能力を持つ。
一般人向けマウスピースを使ったところで、一晩で粉々になるのは容易に想像できる。
容易に想像できるはずなのだが。
実際に店に来て商品を見るまで気づけないぐらいには、二人ともおでかけに浮かれていた。

「ショーガナイ、マウピーは医者に任せるとして、何か買うカー。」
「医者、ですか。」
「ケルベロス専門の整形外科がいてサ。そいつに訊いてミル。」
「な、なるほど。」

パトリシアは自分が豊胸・豊尻手術を受けていることを公言している。そのことに思い至り、ウィルマも合いの手を打った。
ケルベロスの肉体は神性も魔性も伴わない攻撃では傷をつけることができない。
よって、外科手術には神性を持つ医師、つまりはケルベロス自身でなければ実行できない。
彼女の美容整形もケルベロスの医師が受け持ったのだと思い至り、ウィルマは二つの意味で頷いたのだった。

「ケルベロス用の、マウスピース、ですか。テ、テンプレート、も、お願いできるかも、ですね。」
「あー。Good Ideaデスネー。」

ムシロそっちのがイイカモ。身体能力が30%もアップするなら下手なバフより効果あるワ。
応えたパトリシアの両手には、避妊具がにぎられていた。

「つ、使うんですか。」
「ワタシ?ノーノー。ホテルの備品ヨ。」
「なんだ。び、びっくりしました。」
「ナーニ?ヤいてるノ?」
「そういうわけでは、あ、ありませんが。」

どもり具合から見るにどうやら本心だとパトリシアは判断した。一年以上の付き合いともなれば、彼女のどもりが心理的なものか性癖的なものかは判断がつく。
つまらなそうな顔をして避妊具を棚に戻した後、パトリシアは懐から出した手帳に商品名をメモした。

「アリガトね、ウィルマ。」
「何のこと、ですか?」
「鼾と歯ぎしり。言われなきゃ気づかなかったワ。」
「お、お酒は。ほどほどにした方がいい、と。思います。」
「コトゴトクオオセノトオリデ。」

何しろ自分の神性すら忘れてしまうほどなのだ。飲ませ続ければデウスエクスでさえ殺しうるだろう。
酩酊は神ですらも逃れえぬ魔性の仕業だ。

「ウィルマはお酒呑めないんダッケ?」
「み、未成年、です。」
「法律はどうでもよくてサ。」
「吞んだことは、ありません。」

パトリシアが目を細めて、前髪に隠れたウィルマの瞳を探した。

「お酒はイイワヨ?」
「そ、そんなふうには、とても。思えませんが。」
「酔わなければ見えない景色がありマス。」
「見たくない、です。」
「イイエ。」

いずれ、見る日が来るワ。あなたがケルベロスであるならば。神性・魔性の体現者であるならば。
現実から切り離された真実を見る日が来る。

「き、来ません。」
「それは残念。」

ならばよし。ワタシの見る夢がワタシだけのものならば。
望んでいたぞと。
大盃に映る二人を、笑みと共に飲み干すは。

以上……。」

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