Primeval Soul

「輪廻などあるはずがない。お前のような汚物に前世も来世も考えられない。

こんばんは鳩です……。

……妄想ケルベロスブレイド……。

萌芽の繰り返し

Peace一本が命一人分。
吐き出した煙が消えゆくのを見れば、パトリシア・バラン・瀬田はセンチメンタルな気持ちになれた。シガーホルダーを指先で優雅に持ち上げ、誘うような艶やかさで口づければ女優になれた気がする。
一本燃え尽きれば夢は終わり。処分した奴のことは存分に悲しみ、己の行いには十分に傷ついた。それでおしまい。
それがパトリシアの精神安定方法である。
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煙草を吸いだしたのはここ数年のこと。
来日して出会った『師匠』の一人がPeaceという銘柄を甚く気に入っていて、それが何故だか酷くおかしく思ったので、好奇心半分からかい半分で一箱買った。
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「ワタシも買ってみマシタ。」
「あーらら、そいつは残念。」
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その師匠は眉根を顰めつつ笑った。
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「何故デス?」
「もしあなたがそれに夢中になってしまったら、人類が終わった後は永遠にその夢を失うことになる。」
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煙草を作る技術が失われた後の遥かな時間を、あなたはそれ無しで過ごすことになる。
パトリシアも眉根を顰めて言葉を返した。
​​​
「師匠だってそうデショウ?」
「いいえ?僕にとっては思い出でしかありません。
思い出は僕が覚えていればいいんですから、なくなっても困りません。」
「ならなんで吸うノ?」
「大人の真似事がしたいだけです。」
​​​
その「師匠」は、自分は一人前の人間ではないと言い切った。
この先も、恐らくは人類が地球からいなくなった後も、太陽が赤色巨星となり地球を飲み込んで地球という惑星がなくなった後も、地球外へ進出した人類が宇宙の伸張に耐えきれずついに引き裂かれた後も、大人にはならないつもりだ。
​​​
パトリシアは燃え尽きた煙草を捨てる。
ケルベロスとしての異能を全身にみなぎらせ毒素を無効化し、シガーホルダーをケースにしまう。
肺と胃の腑に魔力を通して煙草の成分を検知、空気と共に口から引きずり出す。
後はシャワーと洗濯で消臭は終了する。
厨房の出口へと歩く。カツカツと響く足音は誇り高いヒールの証。胸を張って歩む。排気の音に負けないように。
扉を開け階段を昇れば喧騒が聞こえる。この旅団『ホテル53X』のケルベロス用集会ロビーの。
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「ハァイ!グッモーニン♪」
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バラン団長のお出ましに、気さくな団員が手を上げグラスを掲げ応えてくれる。
笑顔で手を振ると、パトリシアの胸中に小さな芽が生えた。
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—-
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駐車場に止まった白塗りのバンから目隠し猿轡の男が引きずり出された。
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「じゃ、よろしく姐さん。」
「ハイ。終わったら連絡シマス。」
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そう言ってパトリシアは虜囚の首根っこを掴む。
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「ジャ、短い付き合いだケド、ヨロシク♪」
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嗜虐的に囁くと、パトリシアの胸中にまた小さな芽が生えた。
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—-
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「弱い弱い弱すぎる!その程度では神の一人も殺せはしませんよ!!」
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『Peace好きの師匠』が残心する。
打ち据えられたパトリシアは20mほども先へと吹き飛び倒されていた。
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「……チョーシにノってんじゃナイワヨ……!」
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眩暈に揺らされながら、地に両手を立てて起き上がる。
残心のままの『師匠』を確認し、両足で強く地を踏みしめた。
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「Filho da puta(クソガキ)!!!」
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魂の奥底に魔力を流し込み、本質を引きずり出す。
人前では使えない技、見せられない姿。肉体が別の物質へと置き換わり、吐き気がするような快感と笑いだしたくなるような苦痛が体を駆け巡る。
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異界からの浸食を受け入れたとき、パトリシアの胸中にまた小さな芽が生えた。
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—-
​​​
今日もまた森に芽が生える。
始まりを何度も繰り返し、森は密度を増す。
風にざわつき雨に濡れ訪問者に踏みこまれ。
今日もまた森に芽が生える。
​​​
同じ土に。
原初の土に。
今日もまた芽が生える。

関連
以上……。」

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