まだまだくたばらない

「死に時を逃している。お前のそれは生まれる前だ。

こんばんは鳩です……

……妄想ケルベロスブレイド……?

最後から二番目までの真実

なんて面倒なんだ。
この世界は嘘だからどんな嘘なのかをいちいち説明しないと理解されない。
本当でないとはなんて面倒なことなんだ。
わたしの名前は鳩目・ラプラース・あばた。世界に祝福された異能の持ち主で、常人を遥かに超える身体能力を持つ。
異能者にも様々な種類があるがわたしは肉体の一部、若しくは大部分が機械で出来た種族でありわたしの場合は両肩から先、頭から左右に生えているアンテナ、そしてレンズのような黒目のない眼球がわかりやすい特徴となる。
年齢は24歳、だったはずだ、そういう設定だった。そして年齢に合わない童顔と低身長で、ついでに生身の部分は鍛え込んだ筋肉で太く膨れている。
本当に馬鹿らしい。これでわたしの外見を正確に想像などしてもらえないことはわかっているが、それでも伝えなければ話にならない。


前方20mほどの位置に褐色のサキュバスが立っている。
黒髪のロングヘアー、緑色の瞳、腰から左右に生えた蝙蝠の翼、細長く黒いしっぽ。豊満な乳房と見事な括れ、そして熟し過ぎたヒップを持つ。
緑色を基調にしたビキニっぽい衣装に、右腕に金籠手、左腕に銀籠手。
笑っている。忌々しい。お前のことなどわたしはどうでもいいのだ。お前のことをいちいち文字にしなければいけないのが煩わしくてたまらない。

「今日は銃は無しデスカァ?」

イライラする。説明が抜けていたが、わたしは主に銃で戦闘を行う。彼女――――パトリシア・バラン――――もそれを知って言っている。

「素手で十分です。」

そう言うとパトリシアの眉根が微かに険しくなった。多少は彼女の気分を害することが出来たようで、少しだけ気が晴れた。
​ ​
「オーケイ……!」

苛立ちを怒りに変換し、活力にしてパトリシアが駆け込んできた。
わたしは瞳のない目で視線を巡らせ、神秘の力線を配置する。

「なぁっ!?」

程なくして褐色の猪はまんまと罠にはまり、魔力の網に縛り上げられた。
わたしはつんのめった彼女の懐に走り込み、拳を打ち込む。
何と柔らかい肉だろう。謎の金属で出来た我が右手は彼女の鳩尾に手首までめり込んだ。
それを引き抜くと彼女は派手に吐血してうつむいたので、下がった頭を回し蹴りで存分に叩いた。
美女が無様に転がって汚れる。痛みと吐き気に歪んだ顔は見ていてとても気持ちがいい。
パトリシアはしかし転がる勢いのまま立ち上がって見せた。血を吐きながら拳を構える。
忌々しいが、やる気は認めてやる。回復など許すつもりはなかったし、判断は正しい。
接近すると、パンチを打ってきた。防御は簡単だが重い。流石に格闘戦に自信を持つだけはある。
軽くバックステップする。追ってきたところにまた力線で捕まえて、鉤突きで肝臓を打つ。痛みに悶えたのを確認してから続けて恥骨、下腹部、胃、心臓を拳で叩き、喉を平拳で突く。
パトリシアが血反吐を吐きながらわたしの腕を掴んだ。
そういえば彼女はプロレスラーでもあった。タフネスと掴み技には優れていると認めざるを得ない。強い力で引き込まれたので、わたしはそれに逆らわず手を伸ばし、頭を掴んで頭突きを返した。鼻骨を中心に顔面が陥没する十分な手ごたえがあった。しかしそれでもパトリシアの手は緩まない。彼女はわたしを力づくで空へ投げ飛ばした。
空中で面食らうわたしに翼を開いてパトリシアが飛んでくる。血と胃液を吐く無様な顔。潰れた鼻、折れた前歯。それでも尚闘志折れず。
腹立たしいが認めてやろう。お前はただのチャラチャラした女ではない。信念をもって闘う戦士だ。
なればこそ、余計に腹が立つ。
わたし捕らえようと伸ばされた腕が、そのまま硬直して止まった。
三度不可視の拘束。
怒りに満ちたサキュバスの顔に、振り上げた踵を思うさま食い込ませた。

パトリシア、続いてわたしが地面に落ちる。立ち上がったのはほぼ同時。
少なからず傷つく。それなりの力で蹴ったはずなのだが。

「……ナンですか?」
「何がですか。」
「……あの、糸みたいなモノは……。」
「文字通りただの糸ですよ、魔力で出来た。ごく初歩の術です。」

彼女を捕らえるのに使った技は大したものではない。相手を捕縛するだけの何てことのない技だ。十分な力があれば振りほどくのも簡単。私はただ単に、

「それをモーション無しで使っただけです。」

どんなに他愛のない技でも、使っていることがわからなければ避けられない。そしてこれは、避けられさえしなければ確実に一手止める技。
『つまづいてくれれば』それで十分。追撃をセットで入れるには。
後はそれを死ぬまで繰り返せばよい。

「……ナルホド……。」
「まだやりますか?」
「……アナタ、銃より素手のが強かったノネ。」
「いいえ。
銃を使った方が強いに決まっています。
ただ、銃を使うようになったのは行きがかり上であって、それまではずっとこういう訓練をしてきた。
銃を使うようになっても、拳法の訓練は休まずに続けた。
それだけです。」

わたしは自他ともに認める銃使いだが、最初は不本意だったのだ。
最初のことなど今はもうどうでもいいし、銃の良さも今は理解している。
だがわたしは最初から今まで、ずっと「こう」ありたいと思っていた。
最初は不本意だった、ということをずっと忘れずにいた。


「で、まだやりますか?」
「……トウゼン!」

俄かにパトリシアの雰囲気が変わった。いや、肉体が変わった。皮膚の内側から何かが盛り上がり、外に出ようとしている。空気の匂いが変わった。空が虹色に光っている。地面が揺れ触手が生える。パトリシアの姿に目をやると、蜃気楼のように揺れながら、青く赤く色を変え、角が伸び、翼は細い触手を束ねたものに変わっている。眼球が消え眼窩には代わりに暗黒が嵌った。可聴域をはるかに超えた唸り声が響く。放射線、温度、電磁波、わたしの体のあらゆるセンサーが異常な値を示す。
噂には聞いていたが、本当だったか。異次元の異能。この世界にまともに顕現することすらできない何か。

「……それならば、わたしもそのように対応いたします。」

デバイスを操作し、銃を召喚する。
異能を倒すための銃を。異能を滅ぼし続けた銃を。

「……手加減は出来ませんよ。」

それはこちらの方だと言わんばかりに、真横に現れた触手の群れがわたしを引き裂いて
わたしは笑いながら銃の引き金を引いて
千切れたわたしの体が世界の祝福に修復されると同時に銃から放たれた異能が次元ごとパトリシアの触手を
ここから先はどれほどの意味も
どれほどの意味も
どれほどの

この嘘にどれほどの意味が
どれほどの


意味などに何の意味も
我々は

以上……。」

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