罪々の取引

「生まれて来るな。

こんばんは鳩です……。

……妄想ケルベロスブレイド……。

望外の潔白

​その銃殺事件の犯人はわたしだ。
湯船にてテレビの画面を注視すると、現場は繁華街を少し離れた路上、殺害されたのはある暴力団組員で、犯行に使われたと思われる拳銃が現場付近で見つかり現在は検証中とのこと。

一応チャンネルを変えて他局の報道もチェックする。殺害理由に対する推測が若干違う程度で、どこもほぼ同じ内容だった。

予定通り。そしてこの事件は迷宮入りに終わるだろう。
ヤクザ同士の抗争に人も警察も大して興味を持たない。誰がハジいたかなんて意味がない。興味の対象は、「どこの組が」ハジいたかなのだから。

わたしは立ち上がると仕上げにシャワーを浴び、バスルームを後にした。

キッチンに赴き、グラスに氷を満載させてカシャッサとソーダを注ぎライムを絞ると、ナッツを持った皿と共にソファに座り、渇きに任せて口一杯を流し込む。
喉が焼けて胃が翻る。口に入れたナッツをペースト状にかみ砕いて嚥下すると、いくらか落ち着く。
不死不滅のケルベロスでありながらこんな無意味な反射があるのは不本意だが、アルコールによる酩酊という「不調」の代償と思えば多少は気も晴れる。

抱かれて油断させて殺す。
いつもと同じ任務だった。一つだけ特徴的なところは、死体を処理しないこと。
行方不明にするのではなく、殺害した痕跡を明確に残すこと。
今回の仕事は示威と脅迫が目的であってその人物の排除が目的ではなかったから。
標的自身の命に価値があるわけではない。「殺された」という事実にだけ価値があった。
カラス除けに吊るされるカラスの死骸と同じだ。

死体を放置して逃げるのはとても久しぶりのことだった。
通常は解体してから引き渡すか、或いは茹でてバラして砕いてばら撒くか、溶かして業者に任せるかで遺体という証拠ごと隠滅するのだが。

今回の殺しの報酬は、このカシャッサを100本も買ったら消えてしまう。
「一般人にも出来るから」とは上のお達しだが、それならば異能者ケルベロスたるこのパトリシア・バランに頼まなくてもよかろうに。

一般人の犯行に見せれば、ケルベロスに捜査が及ぶ確率は低いと言われた。
確かにそれは理屈だが、安値で受ける理由にはならない。

依頼を受けたのは値段ではなく、ひとえに上部からの圧力だ。
忍者団に所属するわたしは、忍者としての命令には逆らえない。外様の途中参加組であるからこそ、余計に。
この依頼を安値でこなすことに何の意味があるのかの説明もされなかった。訊けば答えてもらえたかもしれないが、命令の意義を問う忍者などナンセンスだということも分かっていた。少なくとも我が忍者団では。

グラスは、氷を残してすぐ空になった。
氷で満たせば酒の量は減る。自分なりの節酒方法だ。
キッチンに再度立ち寄り、カシャッサを注ぎ、ソーダを……。
思い直してソーダの代わりにビールを注いだ。
ナツメグの粉を振って、その場で呑む。

「今日は酔いが要る。」

独り言が出た。酩酊している証拠だ。今日はこのまま沈んでしまおう。

以上……。」

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