ありふれた月

「生まれて来るな。

こんばんは鳩です……。

……妄想ケルベロスブレイド……。

血染めの言葉

​今日は解体の日だった。
マスター・オカから教わった手順はもうすっかり手になじみ、どこをどう切ればどこが外せるのかを手が覚えてしまっている。
肉や魚もこのぐらい粛々と捌ければいいのだが。


血抜きもそこそこにパーツを鍋の中に投入する。
茹で固めてしまえば血が流れ出ないし、殺菌によってある程度は腐らずに持つようになる。酵素を変性することで自己融解を止めることもできる。

最初は匂いの際立つ内臓。茹で上がったらブルーシートの上に放りだし、次いで頭部、腕、脚を茹でていく。鍋の中は既に灰汁と血液で充満しているが、用途は加熱であるから問題はない。
茹で上がるまでの間に、都度胴体を解体していく。
胴体は縦横に大きく鍋に入らない。そこで、背骨の関節を一つ一つ切り離し、あばらに沿って一枚ずつ切り分けていくのだ。
粉砕した方が遥かに早いのだが、それでは骨片が散る恐れがある。肉片は放っておけば朽ちて溶けるが、骨はそうはいかない。うっかり排水溝にでも流してしまったら最後、隠滅不能の証拠となって下水を漂うことになる。
そして、恐ろしいことに1cmにも満たぬ遺体の欠片から犯行を特定した実例が存在する。

人の人たる力こそが、人の社会において最も恐ろしい。
人の社会の中に溶け込み生きるのであれば、人の強さを熟知しなければ狩り殺されてしまう。
指先に神経を集中させ、背骨と背骨の隙間を探り、ナイフを差し込む。
骨に当たらぬよう、軟骨だけを切り裂く。そして切り口に指を入れ、ゆっくりと力を入れて引き外す。文明の利器と異能者ケルベロスの膂力の合わせ技だ。
背骨を外す都度に、あばらに沿ってナイフを走らせて輪切りにしていく。
こればかりはどうしても時間がかかる。肉は硬直し腐敗と融解を始めており、悪臭と血があふれる。
輪切りにした端から鍋に投入し、他のパーツと共に茹で上げ、ブルーシートの上に並べる。

全てのパーツの処理が終わったらシートを畳み、鍋を洗って部屋中をシャワーで流す。
この部屋はもともと多人数シャワー室として作られており、水はけはとても良好だ。
目に見える血液を流し切ったら換気扇のスイッチを入れ、引き取り役に電話をかけて待つ。

程なくして到着したバンにブルーシートの包みを載せ、一礼。
お疲れ様です、と労いを残して、男の車は去って行った。

パトリシアは懐からシガーホルダーと煙草を取り出した。
ホルダーの先に煙草を据え付け、指先から魔力の熱で発して火をつける。
細く長くゆっくりと、十秒ほどかけて吸い、十秒ほど息を止め、十秒ほどかけて吐き出した。

それは、Peaceという名の煙草であった。

 

以上……。」

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