Fireball

「お前がいるこの現実が夢であればよいのに。

こんばんは鳩です……。

……妄想ケルベロスブレイド……。

暴力の投与量

スポーツにおいて、もしもドーピングが許されたなら。
世界トップの領域では、薬物を使うことがスタート地点になるだろう。
短期的に人間の性能を向上させる薬物は、例外なく人体に深刻なダメージを与える。
一つの種目を極める為に不健康を受け入れなければならない、そんなものを最早スポーツと呼べるものか。
如何なる競技も出来うる限り怪我をしないようルールや服装の整備が続けられているというのに、選手当人が望んで破滅に向かうのでは全くお話にならない。
それを許したなら、すべてのスポーツは文字通り命を捧げられる狂人だけが闊歩する世界になるだろう。
薬物を使い、命を縮め。それを良しとする者だけの世界。それはおよそ人間社会に存在を許してはいけない地獄だ。
因って、スポーツにおいて薬物は禁止されなければならない。
​ ​
翻るに。
挑む物がスポーツでないのならどうだろうか?
怪我を避ける努力など全く望まれていないのなら?
……この世に存在することを許されてなどいないのなら?
如何なることも禁じられる故はあるまい。

パトリシア・バラン・瀬田は走っていた。
前に進んだ端から地面が崩れて落ちてゆく。振り向き確かめた訳ではないがそうに違いない。奈落に落ちないように必死に前へ。
走り続けなければならない。さもなくば足場は崩れそのままオシマイ。
疲労を感じたら、魔術で以て回復する。
腿を上げることも出来なくなったなら、念動力で無理やり釣り上げる。
やがて精神力も使い切りどうにもならなくなって、ばたりと倒れる。
そこでパトリシアのロードワークは終わる。

異能者である彼女が有り余る身体能力を使い尽くすにはこんな方法しかない。
パトリシアは飢えていた。培った力を放出する機会に。
思い切り殴りたい。蹴りたい。締め上げたい。魔力を叩きつけたい。
そんな無法が許される訳もなく、パトリシアはただ走っていた。
倒れるほど走っても、異能の肉体は程なく回復する。
立ち上がり息を整えると、足につけていたウェイトを腕のそれに足し、シャドーを開始する。
目の前にいるのは敵。
避け切れぬ攻撃を放つ強敵であり、全力の攻撃を当てても揺らがぬ難敵。
頭を振り、ステップを踏む。防御が甘いと思った箇所に的確に当ててくる。鋭さの足りない攻撃は容易に躱される。
逃げようとすれば背中を刺され殺される。確かめた訳ではないがそうに違いない。今この場で殺さなければいけない相手だ。
全力で振りぬく。殺すつもりの拳を。壊すつもりの蹴りを。締め技は……実力差のせいで決まらない、らしい。
やがて腕も上がらなくなり、脚も縺れ息が乱れると、敵の攻撃が顔を捉え腹を打ち、たまらずノックダウン。
そこでパトリシアのシャドーは終わる。

疲労の果ての気絶に近い浅い眠りの中、神は姿を現す。それは高層ビルほどもある巨体。上半分は格子状の立体、下半分は縮れ伸びるおびただしい量の触手で構成された異界の王。
青く赤く黒く白く、見ることのできない波長の光を放つ。入り組んだ頭部から聞くことのできない音を立てる。ありとあらゆる放射線を放ち、空間を捩じり書き換え玉座に腰掛ける。
わかるのだ、これは夢だから。どういう設定のものなのかわかる。見えなくても聞こえなくても『そうだ』とわかる。
それなのに、その神が何者なのかは一向にわからない。どこから来た何者なのか、何度夢に見てもわからない。わからないという設定なのか、そうではないのかもわからない。
夢に理由を求めるのは空しいが。
パトリシアはそれを見上げ、そして駆け出す。足元が崩れ落ちるから。戦う。命を狙う強敵だから。
そして、敗北し、さらなる奈落へと落ちる。
​​
パトリシアのような異能者には、相応の仕事がある。
彼女らは『ケルベロス』と呼ばれる。地球外敵性不死存在『デウスエクス』を絶命させることのできる唯一の存在。
デウスエクスとは基本的に和平はできない。殺害するしかない。
殺害してもいい。殺害しなければいけない。
数少ない、全力を振るってもいい機会。そうしなければ殺されてしまう難敵。

パトリシアは笑う。
言い訳がすべて用意されている。

火の玉のように駆け出す。地面は崩れなどしない。
烈火のごとく叩きつける。拳は空を切りなどしない。

人間社会が我々に求めることは唯一つ、不死を殺滅する暴力だけ。
地獄の番犬であること以外何も期待されていない。

挑むのは人類に仇為す怪物。
怪我を避けるなど望むべくもない戦闘。
この世のどこにも歓迎されない『殺し合い』という地獄。
如何なることも、如何なることも。禁じられる故は無い。

以上……。」

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