正しくあることの代えがたい安心感

「お前に由来する物質やエネルギーを保持し続けなければならない物理法則がかわいそうだ。

こんばんは鳩です……。

……妄想ケルベロスブレイド……。

楽しいお仕事

「いいんじゃないですか。正義の味方のふりで。」

丘・敬次郎は意外にも朗らかな笑みで弟子を肯定した。
パトリシア・バラン・瀬田は目を見開いて彼の顔を見返した。

「それがあなたの望みならば♪」

浮かび上がった湯気が、師匠の笑顔をまるで美しいものであるかのように演出したので、パトリシアは手にした湯呑みを急いで口に運んだ。
日本に来てから早数年、グリーンティーの風味にもおいしさを感じられるようになってきた。

「ソウ、ですか。」
「そうですとも。」

パトリシアは視線を落とし、丘は中庭に顔を向ける。

「僕の弟子が言っていました。悪党は生き様で、正義の味方は仕事だって。
生意気なことを言いやがってと初めは思いましたが、自分を思い返すと笑えるほどその通りなんです。」

パトリシアが顔を向けると、丘は自分の茶を一口啜っていた。

「どれだけ女の子をさらっても、バラしても、捨てても。
僕は『ゴーストを退治する能力者』でしかなかった。
あなたの知る悪党としての丘・敬次郎はどこにも認められなかった。」

もう一口、湯呑に口づける。湯気がたなびいて丘の顔を撫ぜた。遠くを眺める瞳は白い煙の中に揺らいで朧気に見える。

「僕は、正義の味方でありたいなんて望んでない。
でも、正義の味方でない能力者なんてありえなかったんです。
僕は大御神が許可しない限り死ねない。しかし、生きているともとても言えない。
……あなたは?」

細い目が、パトリシアを射すくめる。
眉間に寄せられた皺はしかし、不満や不服というよりも単に疲れと老いが刻んだようにパトリシアには見えた。

「ワタシもそうデス。
ワタシのジョブは、きっとGodには認められないデショウ。
でも、ワタシは生きている。人を殺している。ケルベロスであることに関わりなく、ワタシは悪党デス。
その弟子のヒト?の言う通り、ワタシの生き様は悪党デス。正義の味方は、結果的にそうであるというダケ。
でも、正義のために両親の呵責なく敵を叩き潰すのハ、とても楽しい。」

クスクスと丘が笑った。

「僕もあなたのように単純であれたならよかったのに♪」
「バカにしましたネ?そういうのワカルンですからネ、マスターオカ。」
「ええバカにしましたともバカだと思いましたよバーカバーカ♪」
「ぶっ飛ばすワヨお師匠サマ、何の意味もないケド。」
「ええ、どうぞおやりなさい、誰も認めてはくれませんけど。」

我戦うゆえに我あり。

戦うとは、勝利を求めることではない。
戦うとは、敗北を覚悟することではない。
戦うとは、抗うということだ。
戦うとは、ただではすまさないということだ。

たとえ誰も見ていなくとも。たとえ如何なる歴史に刻まれることがなくとも。
誰かが見ろよ。どこかに残れ。
そう、祈る。

「あなたはあなたの望む『普通』じゃない。だが、取り立てて目立つところもない凡人だ。」

声が聞こえる。
だが戦うのだ。無為と戦うのだ。
他愛もない喧嘩でも。それが戦いであるならば、祈りが宿る。
どうか誰かが見ていますように。永遠に爪痕が残りますように。

お前が。お前が。こっちを見ろ。
パトリシアが銀の籠手で放った左フックを、丘はたやすく受け止めた。

 

以上……。」

アイコン

広告

kiwivege について

nothing
カテゴリー: ケルベロスブレイド パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中