僕達神様

「バカバカ!

こんばんは鳩です……。

……妄想ケルベロスブレイド……。

ハラワタは正直な嘘を吐く

​「ダメ、コレ綺麗すぎ。」

ストリップ衣装にうんざりした目線を向けた。

「ダメよ、情熱で作るようになったらもうダメ。こういうのは執念で作らないと。」

そう言いつつ、パトリシア・バランは手にした衣装をハンガーから抜いて着始めた。
今日は衣装じゃなくて、ワタシ自身でイヤらしくしないとダメだ。
程なくしてスタッフが訪れ、パトリシアは笑って手を振りステージへと歩み進んだ。

—-

パトリシアの出番は概ね好評に終わった。
サキュバスという扇情することに特化した種族が全力で痴態を見せるのだから、しくじることの方が少ないわけだが。
加えてサキュバスにとっては情を浴びせられること自体が食事でもあるので、手加減する理由もない。
サキュバスのストリップは、他種族から妬みを受けるほどには理不尽に美しい。

「美しいんじゃダメなのヨ。」

パトリシアがハイボールジョッキ片手に言う。
向かいの席の後輩ストリッパーが従順そうな目つきでうなづき、隣の同期のサキュバスはまた始まったとばかりに無視して肴を注文する。

「男が欲しいのはチンポの気持ちよさダケ。
乳も尻も隠すのは想像してもらうタメ。
あれでチンポこすったら気持ちいいだろな、って肉を想像してもらって、最後にそれを見せてあげちゃうワケヨ。
力みが必要なのヨ。ワタシタチは力んで力んで焦らすワケ。見てほしい気持ちを力んで力んで我慢して。そうすることで見てる人のチンポも力ませるノ。
そんでバッと乳首やマンコ見せた時にもうタマンネーゼって思わせるワケ。
解放するワケだけど、でも触ってはいないワケだからここも力みなのよネ。お互い絶頂前、最後の一握り、小指から握った拳を最後に親指でギリギリギリって締め付けるっていうノ?」
「若鶏のから揚げ4人前お待ちしました。」
「アリガトー♪」

話を断ち切って店員の女性に笑顔を向ける。パトリシアは受け取ったから揚げをテーブル中央に置き、空いた皿を店員に渡してその背を見送った。

「それで、何だっけ?今日の衣装だったンダケド何時もの職人さんだから信頼してたンだけどネ。
あー、こりゃダメダナって。拗らせたナって。
セクシーなだけっていうカ。」
「でも綺麗でしたよ。スケスケでエッチでした。」
「綺麗ってのはダメなのヨ。
綺麗ってのは全然sexじゃあないノ。
剥いてみたいなァ、中身を早くみせろヨって思わせナイト。
衣装着てそれだけで綺麗だったら脱ぐ意味ないシ、チンチン入れたくなってくれないノヨ。」

そう言ってジョッキのハイボールを煽る。

「売春とはまた違った苦労があるのですね。」

聞き覚えのある声にパトリシアはハイボールの霧を噴き出した。
ぎゃあ、と叫ぶ向かいの席の後輩を尻目に、声の主を見つめる。

「どうも、バランさん。」
「……マスター鳩目。」
「同席しても?」
「……ドウゾ。」

後輩の隣に座った鳩目は店員にビールをピッチャーで持ってくるよう要求すると、。

「奢りますよ。」
「紹介シマス。こちらワタシのケルベロスとしての師匠、鳩目サンデス。」
「どうも、不肖の弟子がお世話になっております。」

お辞儀もそこそこに後輩ストリッパーのハイボールに塗れた体を手早く拭くと、クリーニング代です、と万札を握らせた。

「受け取れません、そんな。」
「弟子がご迷惑をおかけしました。」
「あの、あ、はい。」

機械で出来た手の冷たく力強い握力に、後輩は力無く札を受け取る。

「レプリカントなんですか?」
「そうです。珍しいですかね?」

パトリシアの横に座ったストリッパーが話しかける。

「あー。この仕事だと珍しいかも。
うちは地球人客メインだから、踊り子でレプリカントは殆どいないね。そういうの専門の劇場もあるらしいけど。」
「なるほどなるほど。」
「今日は何の御用デ?お師匠。」

目線で『早く帰れ』と訴えつつ、パトリシアが割って入る。

「偶然見かけたので一緒に呑もうと思っただけですよ。」
「ウソつき。師匠、宅呑み派の癖ニ。」
「ええ嘘ですとも。あなたがそういうなら嘘で結構。」
「ここで暴れナイデよネ、この店気に入ってるんダカラ。」
「潰したら呑めなくなってしまうではありませんか。」
「潰すって選択肢がある時点でおかしいカラ!」

—-

ごちそうさまでした!
の大合唱を満足げに聞いてから、鳩目はパトリシアと共に店の前を後にした。

「奢るとは思わなかったワ。」
「お金使うの楽しいので。」
「金持ちになれない思考ダワ。」
「知っています。」

パトリシアの足元が揺れる。逆らわず千鳥足を踏み、揺れる視界を楽しんだ。

「わたしを前にして油断したものですね。」

ぞっとして振り返ると、そこには同じくゆらゆらしている鳩目の姿があった。

「……何ヨ、酔いが醒めちゃったジャないノ、殺されるかと思っタ。」
「酔うのはわたしも好きです。」

パトリシアも鳩目も千鳥足で、通りを歩く。まばらに光るのは0時以降も営業している居酒屋、スナック、そして男性向け風俗店の看板。

「二次会、イきマス?」
「ソープにですか?」
「行けるカ!」

通りを歩く。酩酊した眼球に看板は潰れて光る。歩む先はわかっている。いやわかっていない。どこに向かっているのだろう。次の店か?呑むつもりもないのに。帰りの電車か?とうに終電は去ってしまったのに。自宅か?それは方向が違う。
道がそこにあるから、どこかに辿り着ける気がして、ふらふらと前に進む。立ち止まると何かが終わってしまう気がする。靴裏がアスファルトに触れて、はじき返す足裏の感触。生温い夏の風がほてった肌を撫でる感触。
体は不快感を訴え、心はそれに応えられない。
何の為に歩いているのだろう。立ち止まったとして、それは何の為になるのだろう。この先に目的地などない。目指すべき自宅も一時的な次の目標も定まっていない。足がただ動くだけだ。きっとどこにも辿り着けないまま、酔いに負けて倒れ伏せるのだろう。それを待っている。タイムアップを待っている。勝利に向かう努力さえしないまま。勝利が何かさえも決められないまま。

「どうしようもナイ。」

パトリシアの口から何かが漏れ出た。

「どうしようもない凡人。」

鳩目がそれに応じた。

「誰ガ?」
「誰も彼も。我らの眷属は誰も。」
「……誰の事?ワタシ?」
「そしてわたしです。」
「あなたガ凡人?」

超次元銃撃を持つ、機械人類たるあなたが。他の世界で数多の異次元生命体を屠ってきたあなたが。それでも凡人だというのか。

「あなたでさえ凡人です。」

サキュバスとして生まれた、ケルベロスたるあなたが。この世界で数多の不死生命体を殺してきたあなたが。それでも凡人だというのです。

「……凡人デスカア。」
「そこで凡人ではないと即答できないことが凡人の証左です。
次の店を探しましょう。我々にはまだ酔いが足りない。」
「足りないィ?フラフラですケドォ。」
「まだ足りません。あなたはまだ幻が見えていない。」
「ハァ?」

チンピラめいた仕草で鳩目を睨むと、鳩目の機械の瞳はキュイと音を立てピントを合わせた。透明が何重にも重なって、薄氷色から瑠璃色の暗黒へとパトリシアの視線を底無しに引きずり込む。

「神々の領域は、酩酊の果てに見える幻です。
現実から解き放たれて初めて見える虚構だ。夢の中でだけ触ることのできる嘘だ。
わたしはあなたに、今日、それを教えに来た。」

引きずり込まれた精神を視線を外して引きはがす。

「何言ってるノ。」
「曖昧の中で初めて知ることが出来るのです。
あなたの意思があなたのものでないということを。自意識など幻だ。生命は不快を避け、快楽を求める。死ぬより生きることを求める。脳のある生き物は、それを行動ではなく思索でも行えるというだけです。ちょうどビジー状態のコンピューターのように。傍から見て何もしていないように見えても実際には処理が行われている。まさにそれが意識の正体です。」
「酔い過ぎじゃナイ?お師匠。」
「酩酊は自意識の支配力を弱めます。そこでしか見えない事実がある。
わたしたちはそうでもしなければ気づくことができない。嘘を嘘だと。」
「ちょっと、」
「次の店へ行きましょう。」
「もう師匠呑みすぎヨ、やめときましょうヨ。」

歩みだす鳩目の方をパトリシアが掴んだが、振り返った鳩目の瞳は、最早視界のどこにも焦点は合っていなかった。
それでいて、明確に何かを見つめていた。

「あなたはお酒が強いのですね。」
「……師匠?」
「わたしはもうだめだ。見えてしまった。
覚えておいてください。あなたはあなたではない。わたしもわたしではない。
全ては決められたことで、そこから逃れたことなど一度もない。
でもただ一つ、それを定めた神を否定する、という自由があります。
いや、それすらも本当は自由ではないのですが。
何もかも全て初めから決められていたとしても、そうではないのだと。わたしたちには言える。それだけが。」
「お師匠、休憩シマショ、ね、休憩。水でも飲んデ。」
「わたしは帰らなければなりません。いいですか。我々の我々らしさなるものがあるとすれば、それはただ一つ。抗いの中にあるのです。」
​​ ​
鳩目の透明な瞳が再度パトリシアの瞳を見据えた。
折り重なる青色が幾層にも重なって、その中心は真っ黒な暗黒になっていた。それはパトリシアの視界にどんどんと広がり、飲み込み、彼女の体は暗闇に浮かんで。
​​ ​
これは嘘だ。これは夢だ。
​​ ​
そして、パトリシアは自らのねぐらで目を覚ました。
夢で見たことを、何一つ忘れてはいなかった。

以上……。」

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City of Ass

「潰してやる。

こんばんは、鳩です……。

Hey siri!

Hey siri!

 

イラストが完成しました!
下記より完成原稿をご確認ください。
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完成原稿
●アトリエページ
http://tw5.jp/gallery/?id=146079

●直接リンク
http://tw5.jp/gallery/combine/146079

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●商品確認
作家:渡辺純子
商品:水着コンテスト2017 全身イラスト

●発注オプション
・大きな画像(横768×縦1024)

●発注文章
服装:モノキニ。
胸元から臍までが大きく空いています。
首を丸く覆うチョーカー付き。
色合いは参照画像の服装をベースにお願いします。アレンジは大歓迎です。

脚はサンダル。デザインはお任せします。

装備:無し。両手とも素手。

ポーズ:ウインク投げキス。
ヒップを強調していると尚よしです。

体形:基本は参照画像ベースでお願いします。
バスト、ヒップ、腿はいくらでも大きくして構いません。
美容整形しているという設定なので嘘くさいぐらいでちょうどよい加減になります。
また、(可能であれば)やや筋肉質なところを表現してもらえると嬉しく思います。

 

アレンジ、発注文踏み倒しを歓迎します。
サキュバスらしくセクシーに、あるいは美しく見えるアイディアがあればガンガン盛り込んでください。
明るいエッチでも、看板絵の塗りでアンニュイなエロスでもノープロブレムです。
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これは『ケルベロスブレイド』のイラストです。使用権は鳩、著作権は渡辺純子、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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渡辺純子様、ありがとうございました……。
実は発注したときのことをすっかり忘れてしまっており、渡辺純子様の納品物一覧を見直して
「あ、この方は極めてムチムチの女性を描いてくれるからリクエストしたのであった」
と思い出したのでありました。

普段の姿

が十分に露出度の高い恰好なので、水着についてはデザインでエロさを出そうと思い、あえて普段の格好よりも肌を覆うモノキニを選択したのでありました。
さらなる露出度を追及する方向性もなくはなかったのですが、そうなるともう前張りとニプレス、あるいは紐水着みたいな究極に近いありさまとなり、そうなりますとリクエストを受けてくれる人が限られていそうでしたので……。

ここで納品当時のクリエイターのページからコメントを引用します。

●煌くキスをアナタに
褐色の肌にゴールドは、いかにも夏らしくて好きな組み合わせです。
羽やしっぽのピアスが光を弾いて夏の日差しも味方にするコーデです。

言われてみると水着や装飾品のゴールドっぷりに改めて目が行きます。羽としっぽにピアス。ピアスは背徳感のある装飾品であり、サキュバスのイケナイ感じが引き立てられますね。
靴も水着もキンキラキン。タトゥーシールまで使って徹底的にゴールド。
普段の恰好は緑色ベースで金がサブという印象ですが、こちらは真逆です。下品なまでに金。濃いめの化粧に、Tバックのヒップを惜しげもなくさらすポーズ。
そう、股間に来るエロは下品さが伴うのです。
そういう意味ではパトリシアを作ってから今までずっと求めていた、下品にエロいイラストが今やっと手に入ったということにもなります。それはうれしいことです。

あと今までのイラストで一番30歳ぽいと思った。

クリエイター自身のコメントは在りがたい者ですね。ノリノリで描いていただいた感じが伝わってきて心地がよくございます。クリエイターの方々には普段から無理ばかり申し上げているので、こういうテンションの高い文章を書いていただけると、ああ、よかった、無理をさせてはいなかったな、と安心するのです。
「作家は作品のみで全てを語るべき」という主張もありましょうが、後書き無しにはわからないことも確かにあるのです。

ああ、でも臍や股間も見たくなってきました。下半身のボリュームに目が行きますが、よく見ると胴はあばら骨が見えるほどの細さ。構図の関係上オミットされざるを得なかったボンキュッボンの「キュッ」も是非見たい。
通常全身図としてこれの正面からのイラストもお願いしましょうかしら。

渡辺純子様、ありがとうございました……。

以上……。

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傷痕

「ボケ!

こんばんは鳩です……。

……妄想ケルベロスブレイド……。

欠落

お前はお前の親でもない癖に、何の為に生まれたかなどと自分で決めるつもりでいるのか。
自由や平等と言った基本的人権は、人に与えられるものだ。お前は人ではない。人権など持たない。家畜か愛玩動物程度の自由がせいぜいだ。
それによく考えてもみろ。人間様だって大して自由でも平等でもありはしないぞ。
何の為に生まれ、何の為に生きるのか。ケルベロスどもよ。超常の猟犬どもよ。わからなくたって、そんなの別にいやじゃないだろう?

――――

その宇宙には歯車が回っていた。ぎっちりと敷き詰められ規則正しく蠢いていた。
その宇宙には基板があった。どこまでも張り巡らされ無限に演算と記録を続けていた。
その宇宙にはその他名状しがたい機械があった。音より速く戦慄いて光より早く明滅し、永遠の果てを探していた。

その宇宙の全ての機械たちは、過剰な動作の為に熱を帯びていた。炎を上げ、溶解し、原子を分解し、粒子を融合していた。
その宇宙に闇はない。機械たちがもたらす熱と光が無限に満ち溢れ、欠片の影さえ残っていない。そして、生じた熱を再び取り込んで機械たちは更なる演算を続けている。

「これが御屋形様のハラワタ。」

パトリシア・バラン・瀬田は、眩しい宇宙の中に浮かんでいた。
招かれて来た先は白光の空間。身を焼く無限の熱量に耐えられず、現実らしい姿は瞬時に焼き尽くされ、今の彼女は冒涜的な姿をさらしていた。

「その通りです、バラン。」

彼女の眼前――――数億光年の距離でもあり数センチの距離とも言える――――に、少女が出現した。

「あるいは、何代目かのパティ。」

声はパトリシアの脳裏に響くものだった。もとよりここには音声を伝える媒質が無い。存在もエネルギーもすべてはマシーンに吸い上げられてゆく、この宇宙では。

白磁のような白い肌を真っ黒なタールで汚した少女。タールは燃え盛り両腕に灯り、火の鳥のようなシルエットを見せる。灰色の髪はツーテールに結われ、瞳は青い宝石のよう。
白地に紫の模様の入った服。黒いインナー。首元には瞳と同じ色の大きなリボン。スカートは白く、何層にも重なったロリータファッションのスカート。足は黒いタイツに覆われ、その先にはトゥシューズのような白い靴。
両腕は肘から先が銀色の籠手になっている。
白く細いその身から、真っ黒いタールが漏れている。
目から。耳から。鼻から。口から。籠手の隙間から。臍から。膣から。肛門から。
漏れたタールが燃え盛り、白い少女を赤い輝きと黒い煙の中に沈めてしまっている。
なんて勿体ナイ、と、パトリシアの口が思わず動いた。

「勿体ない?」

聞こえる筈の無い声を、しかし『御屋形様』は聞いていた。ここにおいては思念のみが魂魄を繋ぐただ一つの手段であるから。

「キレイなのに、焼かれちゃって。それでも焼き尽くしきれなくて、ずっと燃え続けている。耐えられないワ、ワタシだったら。」
「耐えられなかったら、どうだというのでしょうか。」
「御屋形様ともあろうものが、そんなザマを晒す意味が分からないってことヨ。」

パトリシアは確かに、少女のくつくつという笑い声を聞いた。

「あなたこそ、とても人には見せられない姿をしている。」
「そうでしょうネ。人に見せたらあっという間に正気を失って混沌だか異星人だかのしもべまっしぐらヨ、マッタクひっどい話ダワ。これでも元はサキュバスだっていうノニ、こんなぐにゃぐにゃのピカピカのぬるぬるじゃあ、誰も抱いてくれないワヨ。」

オヨヨ、と泣いて見せるパトリシアに御屋形様はまたくつくつと笑った。

「案外と、余裕があるではありませんか。」

フン、とパトリシアが鼻息を鳴らす。エネルギーの波濤がいとも簡単に宇宙全体に広がり、機械たちを破壊した。だが、破壊された機械たちは歯車の刻む律動に合わせ、まるで初めからそう動くと決められていたかのように接合し修復し、また問題もなく動きだした。

「そっちこそ切羽詰まってるんじゃナイノ?
急所を晒して見せるなんて、御屋形様らしくないリスキーな『交渉術』デスワ。」
「わたくしは何時だって真剣ですし、全力です。必要だと判断すればリスクを取ります。あなたは今現在、最も新しい我らの神話だ。滞りなく目的を達成するために、コミュニケーションは欠かせません。」
「ハラワタにワタシを招いて、へりくだって見せるってコト?」

何時だってワタシが、此処を滅ぼして取って変われると。

「まさか。」

その言葉が脳裏にはっきりと焼き付いたのをまってから、少女は宇宙の熱量をパトリシアに集中させて焼き尽くした。粒子の一つも残さず分解し、熱エネルギーに変えて機械に食わせた。

「あなたはわたくしの心臓の一拍にすら勝利することが出来ないと、お教えしたかったのです。」

機械を動かすエネルギーは、男神が数多の宇宙から回収し供給する。
演算された結果は、千里眼の神へと送られる。
余った熱量が少女の領分。

機械に生まれ、機械に生きる彼女は無限の熱量を無尽蔵に吐き出す機関となった。
祓っても去らぬ悪魔。
清めても残る穢れ。
ただそこにある罪。

時のように、空間のように、物理法則のように、そこにあるだけで悲しみを生み散らし、決して打ち倒せぬサタン。
何度自死しても死を認められぬ存在。
幾度罪を犯しても感知されぬ存在。

終わってしまった物語の遺物。
書き続けられる物語から出られない登場人物。

原罪への憎しみは不滅の原罪を薪とする炎となった。


ケルベロスよ。超常の猟犬よ。何の為に生まれたかなど、自分で決められるつもりでいるのか。

 

以上……。」

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Welder Automaton

「いでんしの かけらまで

やきつくしてやるがががー!

こんばんは、鳩です……。

イラストが完成しました!
下記より完成原稿をご確認ください。
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完成原稿
●アトリエページ
http://tw5.jp/gallery/?id=141338

●直接リンク
http://tw5.jp/gallery/combine/141338

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●商品確認
作家:猫背
商品:宿敵イラスト

●発注オプション
・大きな画像(横768×縦1024)

●発注文章
【宿敵名】
ワールドウェルダー
【宿敵種族】
ダモクレス
【宿敵性別】

【宿敵設定】
ベースは少女型。戦闘の技術を極めるために地球人の体術を学びつつ大容量エネルギーを追及し改造を続けた結果、頑強な手足を手に入れた。漏れたオイルが燃えても尚、最大効率の破壊を求めて更なる進化を求める。
【発注文】
外見:
灰色の髪をツーテールに結った少女の姿。肌は白磁のような白で硬質。
両目はアイスブルーのガラス玉のようで瞳がない。
両腕は銀色の籠手で出来ている。
籠手の隙間から黒いタールが漏れ出して燃え盛り、両腕が火炎に包まれている。
タールは各部から漏れ出しており、特に顔から漏れたタールは腹話術人形のように唇の左右に戦を引いている。
眼窩からあふれるタールは枝分かれして顔にヒビを入れているようにも見える。

服装:
全体的に白と紫を基調にした服装。ややロリータ風?

ポーズ:
正面向き。
瞳のない虚ろな目をこちらに向け燃える拳を握っている。
両腕は左右に開き、炎も含めて翼に見えなくもない。

モチーフは朱雀。
衣服は白が基調としたが、赤く燃えてしまっていても構わない。
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これは『ケルベロスブレイド』のイラストです。使用権は鳩、著作権は猫背、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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猫背様、ありがとうございました……。
というわけで鳩でございます。
特に服装の指定はしませんでしたが、なんとなく鳩っぽい?
首元のおリボン、袖なしの外套(?)はこちらのイラストが近い感じです。

しかし鳩のイラストを見てモデルにした割にはツーテールの位置が後ろになっているなど似ていない部分も多く、たまたま服装が似て見えるようになっただけの可能性も多分にあります。

それにしても、想定した以上に独自判断でお描きになられる方だな、ということが今回でよくわかりました。
前回(https://mixfruitsinkiwi.wordpress.com/2017/01/23/contortion/)も大分思い切ったデザインを頂きましたが、今回の納品物で確信いたしました。
ツーテールもそうなのですが、肌の色は黒の濃い灰色っぽくなっております。拳を握っていると指定しているのですが鉤爪のような指を開いて炎の中に映しています。
こうやって抜き出すと細かいことをちくちく指摘しているように読めるかもしれませんが、そうして欲しいからそう発注したのであって、ええその。はい。

タールの燃え盛る様は流石の一言です。滴りながら燃え落ちる禍々しい黒と立ち上る黒煙。大きな画像オプションを頼んでよかった。猫背様、重ねてありがとうございます。

……しかし、そもそも論ではありますがPBWのイラストのようなサイズでは猫背様の持ち味を生かすには小さすぎるのかもしれませんね……。

 

以上……。

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Fate of Fight to Someone’s Love

「イラストが納品されたがそんなの知るか!好きなことを書きます!!!

こんばんは鳩です……。

……妄想アクスディア……。

Destiny Lovers

「お変わり無いようで何よりです。」
「鳩ちゃんも。」

逢魔・鳩と逢魔・水鈴は『せんか特製極上満開スペシャルジャンボパフェ・サマーバージョン』をつつき合いながら言葉を交わした。

「んー、いや、鳩ちゃんは変わったかな?」
「はい?」

スプーンに残ったクリームを唇でしごきとって、水鈴は鳩を見つめた。

「……太った?」
「ふふっ。」

相変わらず遠慮のない方だと鳩は笑う。
水鈴の目は鳩の一の腕に向いていた。
レプリカントの特徴である機械の二の腕。そこにつながる生身の腕は水鈴が前見た時よりも一回りほど大きくなっていた。
胸もがっしりとして、身長が変わらないまま体の厚みを増している。

「否定はしません。」
「大丈夫なの?こんなおっきいの食べても。」

一緒につついていながら、水鈴は言う。
こういう方だ。こういう方だった。
忍び笑いをこらえきれない。

「何かわたし変なこと言った?」
「いえ。
……心配は無用です。これでも運動をしておりますので。」
「そっか。そういえば筋肉っぽい。」
「ええ。」

水鈴がまた鳩の腕を見る。女性らしい柔らかな脂肪が覆っているように見えるが、よく見ると筋肉に沿ったくぼみの筋が走っているのがわかる。
肩も、そこにつながる胸も、恐らくはそうなのだろう。

「10年も経てば、変わってしまいます。」
「10年??」

そんなに経ったっけ?
水鈴が首を傾げて指を折る。

「失礼しました。こちらの話です。」
「10年。」
「そうです。鳩たちは魔力の研究をしておりまして。時間の流れに干渉することが出来るようになったのです。その他色々ありまして、この地球の方々よりも長い時間を過ごしております。」
「……ふーん。偉いんだ。」

また一口パフェを削りながら、水鈴は鳩を見つめた。その目は、10年とは言わずともそれなりの年を経た、人を見定める目だ。

「今日は何で来たの?」
「息抜きです。」
「変わったね、鳩ちゃん。言葉が凄く滑らかになった。」
「10年ですから。」
「10年かあ……。」

嘘は言っていないが、本当には程遠いな。
水鈴は直観を口に出せずにいた。
鳩が言ったことには大いに誤魔化しがあると気づいた。だがどこをどのように誤魔化しているのか。何故誤魔化す必要があるのか。そこは一向に察することが出来なかった。

「んー。」

​スプーンを銜えたまま少し考える。
そう言えば前にこうしてパフェを食べ合った時も、鳩ちゃんが何を考えているのかわからなかったっけ。
なあんだ。何も変わってない。不思議で隠したがりの鳩ちゃんのままだ。

​「鳩ちゃんはやっぱり変わってないよ。」
「そうですか。」
​​「次郎さんのこと、まだ好き?」
「嫌いです。」
「あっはははははは!」

変わったのはわたしかも。
以前なら、こんな言葉を聞いたら。
それをそのまま受け止めて、「何で?」と訊いていた。
でも今は、鳩ちゃんが悪戯っぽく笑っているから、笑うところだってわかる。
わたしだって、成長。してるのよ?

その後、鳩と水鈴は他愛もない話をしながらパフェ一つ、コーヒー一杯、紅茶一杯、ショートケーキ一つ、モンブラン一つ、三食団子二本、夏風葛餅四つを平らげた。魔族の別腹は果てしなく深い。

会計の際、財布を広げる手を止めて鳩は言った。

「申し訳ありません。花も買って帰りたいのですがよろしいでしょうか?」
「ええ、構いませんよ。何にいたしましょう?」

鳩は口角を上げながら、言った。

「……ローテローゼを。生けていたものが、枯れてしまったので♪」

 

以上……。」

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空しい怒り

「便器は素手で洗うといい。汚れた手は洗えばいい。それでもお前には触りたくない。

こんばんは、鳩です……。

イラストが完成しました!
下記より完成原稿をご確認ください。
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完成原稿
●アトリエページ
http://tw5.jp/gallery/?id=140388

●直接リンク
http://tw5.jp/i/tw5/origin/0379/678841_e03793_ic.png

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●商品確認
作家:jenny
商品:顔アイコン

●発注オプション
なし

●発注文章
【熱血】
睨め上げる怒りと憎しみのこもった表情。
食いしばった白い歯をむき出しにしています。
===================

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これは『ケルベロスブレイド』のイラストです。使用権は鳩、著作権はjenny、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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jenny様、ありがとうございました……。
表情のバリエーションが欲しいな、と思ったので。
見上げるとおでこが栄えますね。知見を得ました。

以上……。

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Adult Children of Alcoholics

「社員スパーク!

こんばんは鳩です……。

こちらの方を、許可を得て借り上げます……。

……妄想ケルベロスブレイド……。

ARMORED CORE

「肉ウメー!」
「中ジョッキおかわりお願いシマース!」

ショッピングモールで鉢合わせた彼女らは、あら久しぶりー!元気してた?そっちはどう?あらあらまあまあそれじゃあ一杯飲みましょうそこによさげな店もあるし、ときゃあきゃあ黄色い声を揚げながらバルへと吶喊したのであった。


「土手焼きがしみじみ旨いですね……。」
「オッサンオッサン!」

雨宮・ノヴェム(レプリカント)が牛スジをむぐむぐ噛んで感嘆の声を漏らすと、パトリシア・バラン(サキュバス)がゲラゲラとジョッキ片手に笑う。

「クリのステーキのお客様。」
「ハイ!ワタシワタシ。きゃークリの花の香り!」
「バーカバーカこのサキュバスバーカ!」

香りを楽しんだ後はちくちくと油を泡立てる音に耳を澄ませ、ナイフで刻んで口に運ぶ。

「ンー!デリシャス!!」
「デリシャスはブラジル語で?」
「ケ・デリィシャエシ・クリ!(クリまじうまし)」
「クリ!!」

「ラムシンのステーキのお客様。」
「わたしです。」
「ラムリン!」
「ラムリンじゃありませんね。らむりんなんでリストラされたんでしょう(しましまとらのしまじろう)?」
「サア?」

雨宮も自分のステーキの香りをたっぷりと鼻で味わい、油のはじける音に耳を澄ませ、いざ。ナイフで切った肉を口に入れる。

「味ハ?!味ハ!?」
「むぐむぐ。」
「機械語で言って!!」
「んむん!?」

バカ二人、買い物袋の中のビールがぬるむことも忘れて(忘れたふりをして)、肉の美味しさにIQがそぎ落とされていく様を存分に味わった。

本当は積もる話をするつもりだったのだが、過ぎた美食は会話に向かない。
店を出ても肉の味とアルコールで脳味噌がふわふわと機嫌がよすぎる。
再会の喜びを美食でうやむやにしたまま別れるのを惜しんだパトリシアは、結社に泊っていけ、何もしないから、と雨宮を誘い、パトリシアの結社『ホテル53X』へ二人して入っていった。千鳥足で。
5階の505号室に入り、部屋の冷蔵庫に買い物袋の中身を移すと、眠気が限界を迎えた二人はそのままベッドに寄り掛かるように眠ってしまった。

「んうー……。」

眠りから緩く醒めた雨宮がなんとなく首を動かす。

「んむ!?」

間髪を入れず、掌が彼女の顔を掴み、心地よい魔力を吹き込んだ。綿が詰まったようだった頭も胃もすっきりと健全に。思わず飛び起きて拳法の構えを取るほど。

「オハヨウアメミヤ。」
「おはようございますパトリシア殿。ありがとうございます。魔力にはそんな使い方もあるのですね。」
「アルコール如きの毒でいちいち倒れてられないからネ。」

このくらい出来なきゃ、ケルベロス(化け物)とは言えないワァ。
パトリシアの言葉にうなずくと、彼女に促され雨宮はシャワーを浴びに行った。

「これはいわゆる、先にシャワー浴びて来いよというヤツでありますか?」
「アリマセン。」

シャワーを浴びて戻ってきたアメミヤは、部屋の奥においてある像に目を向けた。
金メッキが施された、男の像。どの宗教のものとも違う、見たことのない像だ。

「キニナル?」
「見ても?」
「ドウゾ。」

接近して観察する。やはり見たことのない男。美形とは言えないし、神々しさもない。ただ突っ立っているだけのメッセージ性もないポーズ。だが、横や上を見つめているうちになんとなくおかしな気分になってきた。意識しないまま手を伸ばし、触れる。

「あっ!」

瞬間、様々なイメージが頭の中にフラッシュした。ここではないいくつもの別の地球の景色。人外どもの忍者の里。闇の獣が目を光らせる密林。何かが極限の寒波を噴き散らす北極点。燃え盛るタールが半径数10キロに渡って広がる砂漠。パソコンのモニタの中に見えるパトリシア。パソコンのモニタの中にみえる雨宮。いつか自分を打ち倒した地球人の男女。そしてそれ以外の全て。

「……なるほどそういうことだったのですね。いいえ、私は知っていました。あなたはあなたで、私は私だと。」
「マニマニの悪魔にはあまり触れすぎない方がいいワヨ。」
「知っています。でも折角ですから挨拶をしておきたい。是非。」

伸ばした手をパトリシアがとると、雨宮は像をぐっと握りしめた。マニマニの黄金像は時空を破断し結びつけ、神の住まう505号室は歪んで散って、その後には奈良の山里があった。
奈良の忍者の里だと二人ともわかっていた。

「アラ、コッチ?」
「では、行ってきます。」
「ワタシもイキマス。」

二人は迷うことなく広い道を歩き、奥にある一際大きな屋敷へと向かっていった。

雨宮が入り口に差し掛かると使用人らしき男が怪訝な目で睨んだが、パトリシアの姿を認めてすぐに目つきを和らげ立ち去って行った。

「団長殿のルーツもここなんですか?」
「ルーツっちゅうカ……。
寧ろ何であなたがここを知ってるのカシラ。」

玄関で丁寧に履物を脱ぎ、雨宮、続いてパトリシアが廊下を歩く。曲がり角も迷わず、障子戸も躊躇なく、いくつかの部屋を横断して辿り着いた部屋の奥には御簾に隠された何者かが鎮座していた。

「お久しぶりでございます。鳩殿。」
「ご無沙汰してオリマス、御屋形様。」

パトリシアが跪いたのを見て、雨宮も慌ててそれに倣う。
御簾の奥からは少女のような高い声が、しかし重く通る響きで聞こえてきた。

「これはこれは。いつぞやの機械式不死敵性生物(ダモクレス)。その様子ではマキナクロスからは解き放たれたようですね。」
「その節は大変お世話になりました。ただいまはしがないレプリカントをやっております。」
「それは重畳。バラン、お前は何をしに?」
「付き添いデッス。」
「去ね。」
「オオセノママニ。」

パトリシアは立ち上がり、雨宮にウインクして手をひらひらを振りながら障子戸を閉めた。雨宮は少しだけ名残惜しそうな顔を向けたが、ほどなく御簾に向き直り、『積もる話』を始めた。

—-

パトリシアが縁側に寝そべって陽光を味わう。盆地にあるこの里で心地よく日向ぼっこができるのは春先の今だけだ。
風の吹かないこの地は、夏はフライパン、冬は氷結地獄と化し、心地よく過ごせる時期が非常に少ない。

「知り合いだったとはネー。知らなかったワー。」
「本当は知ってたんでしょう?」
「ひゃあ!」

モザイクの塊がのぞき込んで来て、パトリシアは心臓が口から出るかと思うほど驚愕した。

「ンモー、脅かさないでクダサリマセマセダワ、オシショー。」
「油断しているあなたが悪いのです。」

オシショーと呼ばれたモザイクの塊は男性であるらしい声で言うと、彼女の足先に座った。

「セックスします?」
「シマセンヨ!どこがチンポだかわかりゃしないワ!」

『オシショー』はモザイク人間(ドリームイーター)である。コンプレックスや感情などの欠けた部分がモザイク模様で認識される敵性不死生物(デウスエクス)である。
ドリームイーターはその欠損を埋めるために行動し、そして欠損が埋まるほどにモザイクの範囲は小さくなりその力は増大すると言われている。
全身がモザイクにしか見えない『オシショー』は、欠けているというよりは何一つ満たされていないということのようなのだが、それでもパトリシアの『オシショー』たる力がある。

「雨宮、ノヴェムと名乗っているのですか。」
「何?マスターカケイも知り合い?」
「いえ、ええ。僕ではなく地球人として翻訳された僕が知り合いのようです。」
「ナンダカよくわからナイケド、深く聞かナイデス。」
「Novemはラテン語で9。」
「ああ、九号機って意味だったのネ。」
「9は漢字で。」

マスターカケイと呼ばれた『オシショー』は地面をなぞって『九』の字を書いた。

「ハイ?」
「ところでうちの忍者団の幹部には鳥越・九(いちじく)というのがいます。」
「マスタートリゴエネ。それがどうしたノ?」

『オシショー』は九の隣に続いて鳥越と書いた。
九鳥越

九鳥

「……ふざけた名前にもほどがあるワ。」

鳩ニ困ッタラ

以上……。」

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敗れ去るにはまだ早い

「生まれ方を間違えやがって。

こんばんは鳩です……

……妄想ケルベロスブレイド……?

ザップ・ガン

だから褐色の分身が拘束魔力糸を振りほどいた時、鳩目・ラプラース・あばたは然程驚きはしなかった。対策があってこそ挑んできたのだ。
パトリシア・バラン・瀬田は分身と共に強い笑みを携えて突き進んで来た。
サキュバスの美しい脚線が分身とシンクロして弧を描く。鳩目は頭を下げ髪の上を蹴りに掠らせながら懐へと滑り込む。そのまま流れるように正拳突き。手指には確かな手ごたえ。しかし以前血を吐かせた時よりも硬い。素早く引き戻した筈の腕は、パトリシアに手首を掴まれていた。

「捕まえマシタ♪」

パトリシアは鳩目の手首を引き込みながら首に手を伸ばす。とっさにもう片腕を出して絞殺は免れたが、代わりにその腕も掴まれた。
鳩目が抵抗を起こすより先にパトリシアが腕を上へと引っこ抜く。鳩目の体が中空に浮くと、担ぐように首を掴んでそのまま尻から着地した。

「サキュバスタナー!!」

鳩目の首が激しく揺れ、口から血を噴いた。着地点には小さなクレーターが生じている。パトリシアは鳩目の首を担ぎ締めたまま立ち上がり、もう一度見舞おうと跳びあがる。が。

「ううっぐ!」

背を強く叩かれ、弾かれたように吹き飛び、地面を転がる。背を押さえつつ立ち上がると、鳩目は咳き込みながら拳をパトリシアに向けていた。

「タフねェ。」
「……来なさい。」

その言葉を聞いて、パトリシアは一瞬呆けた表情になった後、嬉しそうに笑った。

「イきマス。」

心から嬉しそうに。パトリシアは大地を蹴った。
その足先を不可視の糸が絡めとる。つんのめったパトリシアに鳩目が殴りかかるが。

「効かナイってばワンパターン!」

爪先だけの力で跳びあがり、鳩目の顔面にドロップキックを叩き込んだ。
鳩目が倒れている隙に魔力糸を引きちぎり、飛び起きた鳩目と拳を交わす。
手足の長いパトリシアがリーチを生かして長い打撃を放つと鳩目がそれをすり抜けて懐へ入ってくる。肘やフックで迎撃を試みるも鳩目の防御がそれを阻む。しかし鳩目の攻撃もパトリシアは掴んで防ぐ。
ハンドスピードはほぼ同じ。だが、応酬を交わすごとに流血が目立ってきたのは鳩目の方だった。東洋風の武術一辺倒の鳩目に対し、プロレスをはじめ様々な格闘技を齧ったパトリシアの方が引き出しが多かった。何より掴み技に長けているのが大きかった。

鳩目の両手首をパトリシアの両手がとらえる。鳩目は前蹴りで抵抗するが、パトリシアはこらえ、逆に膝蹴りを腹に見舞う。うつむいた鳩目の首を両腕で掴んで持ち上げ、翼をはためかせて高く飛ぶ。

「48Arts、No.9!」

逆さまにした鳩目の両足を両手で抱え、鳩目の股関節を限界まで開き痛めつける。鳩目の全身が軋むのを肌で確認し、その体勢のまま地面へと落下する。

土煙が爆風のように沸き上がり、そして治まった。
陥没した大地の中央でパトリシアが腕を開くと、鳩目が力なく地面に倒れ伏した。

「まだヤる?」
「はい。」

即答だった。鳩目はよろよろと立ち上がると、傾いた首を両手でぐりぐりと捻った。機械化された肉体の通電と再生を促しているらしい。

「しかし、悔しいことですが、格闘能力ではあなたの方が上のようです。」
「遠慮はいらないワァ。出しなヨ。Gun。」
「はい。」

鳩目はポケットから手帳大のデバイスを取り出し、開いてパネルを素早く操作した。
すると虚空から銃が現れ鳩目の両手に装備される。
右手に握られた銃は1m近い銃身を持ち、マガジン部分には鳩目の手首から伸びたケーブルが刺さっている。
左手に握られた銃は機関銃のように巨大で、ベルト状につながれた弾薬が背嚢から伸びている。

「但し。」

鳩目の、瞳の無い目がまっすぐにパトリシアに向けられた。

「この武器は、暴走しかけた貴殿を制圧した実績があります。
どうぞお忘れなきよう。」

小柄な少女の姿をしているはずの鳩目が、銃を帯びただけで全く違う怪物に見える。
パトリシアの背に冷たい汗が流れた。

「オーライ……!」

拳を握り直し、パトリシアも己の身に魔を漲らせた。

結果は惨憺たるものだった。
パトリシアは心臓と頭が消えてなくなるまで撃ち尽くされ、倒れた。何度も何度も。
パトリシアは射撃戦が得意ではないが、近接戦に持ち込むノウハウは持っている。それを実行することにある程度自信もあった。
そんなものは何の役にも立たなかった。
回復して起き上がった途端再度撃ち込まれる。防御した腕は関節を破壊され、回避したその先には銃弾が置いてある。
弾薬の威力や連射の速度もさることながら、狙いの精度が化け物じみている。
当て勘とでも呼ぶべきそれは過たずパトリシアを捕らえ、無様に逃げ回ることすらも許さなかった。

「まだやりますか。」
「……ワタシの負けデース。」

再生した顎で何とか応えた。この嘘の中では。そう、この嘘の中では、ワタシも運命に愛されている。師匠たる鳩目と同じく。この嘘の中だけは、ワタシは不死だ。
例え脳が消し飛んでも生きていられる。だって嘘なのだから。

「ではわたしは帰ります。」
「お疲れ様デース……。」

ああ、でもその嘘の中でも。より上手い嘘つきには勝てないのデスネ。
マスターハトメもまた、不可能を嘘にしてきた女なのデショウ。
あり得ないことを望み、あり得ないということを嘘にしてきた。
あり得ないということさえ除けばすればあり得る。
不可能であるということさえ除けば可能である。
それはまるで理屈の通らぬ夢のような。
瞬き消え切り替わる夢のような。
空想だけが唯一の法たる夢のような。

再生しかかりの欠けた脳がチカチカと、パトリシアに何かの欠片を見せたようだが。

以上……。」

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まだまだくたばらない

「死に時を逃している。お前のそれは生まれる前だ。

こんばんは鳩です……

……妄想ケルベロスブレイド……?

最後から二番目までの真実

なんて面倒なんだ。
この世界は嘘だからどんな嘘なのかをいちいち説明しないと理解されない。
本当でないとはなんて面倒なことなんだ。
わたしの名前は鳩目・ラプラース・あばた。世界に祝福された異能の持ち主で、常人を遥かに超える身体能力を持つ。
異能者にも様々な種類があるがわたしは肉体の一部、若しくは大部分が機械で出来た種族でありわたしの場合は両肩から先、頭から左右に生えているアンテナ、そしてレンズのような黒目のない眼球がわかりやすい特徴となる。
年齢は24歳、だったはずだ、そういう設定だった。そして年齢に合わない童顔と低身長で、ついでに生身の部分は鍛え込んだ筋肉で太く膨れている。
本当に馬鹿らしい。これでわたしの外見を正確に想像などしてもらえないことはわかっているが、それでも伝えなければ話にならない。


前方20mほどの位置に褐色のサキュバスが立っている。
黒髪のロングヘアー、緑色の瞳、腰から左右に生えた蝙蝠の翼、細長く黒いしっぽ。豊満な乳房と見事な括れ、そして熟し過ぎたヒップを持つ。
緑色を基調にしたビキニっぽい衣装に、右腕に金籠手、左腕に銀籠手。
笑っている。忌々しい。お前のことなどわたしはどうでもいいのだ。お前のことをいちいち文字にしなければいけないのが煩わしくてたまらない。

「今日は銃は無しデスカァ?」

イライラする。説明が抜けていたが、わたしは主に銃で戦闘を行う。彼女――――パトリシア・バラン――――もそれを知って言っている。

「素手で十分です。」

そう言うとパトリシアの眉根が微かに険しくなった。多少は彼女の気分を害することが出来たようで、少しだけ気が晴れた。
​ ​
「オーケイ……!」

苛立ちを怒りに変換し、活力にしてパトリシアが駆け込んできた。
わたしは瞳のない目で視線を巡らせ、神秘の力線を配置する。

「なぁっ!?」

程なくして褐色の猪はまんまと罠にはまり、魔力の網に縛り上げられた。
わたしはつんのめった彼女の懐に走り込み、拳を打ち込む。
何と柔らかい肉だろう。謎の金属で出来た我が右手は彼女の鳩尾に手首までめり込んだ。
それを引き抜くと彼女は派手に吐血してうつむいたので、下がった頭を回し蹴りで存分に叩いた。
美女が無様に転がって汚れる。痛みと吐き気に歪んだ顔は見ていてとても気持ちがいい。
パトリシアはしかし転がる勢いのまま立ち上がって見せた。血を吐きながら拳を構える。
忌々しいが、やる気は認めてやる。回復など許すつもりはなかったし、判断は正しい。
接近すると、パンチを打ってきた。防御は簡単だが重い。流石に格闘戦に自信を持つだけはある。
軽くバックステップする。追ってきたところにまた力線で捕まえて、鉤突きで肝臓を打つ。痛みに悶えたのを確認してから続けて恥骨、下腹部、胃、心臓を拳で叩き、喉を平拳で突く。
パトリシアが血反吐を吐きながらわたしの腕を掴んだ。
そういえば彼女はプロレスラーでもあった。タフネスと掴み技には優れていると認めざるを得ない。強い力で引き込まれたので、わたしはそれに逆らわず手を伸ばし、頭を掴んで頭突きを返した。鼻骨を中心に顔面が陥没する十分な手ごたえがあった。しかしそれでもパトリシアの手は緩まない。彼女はわたしを力づくで空へ投げ飛ばした。
空中で面食らうわたしに翼を開いてパトリシアが飛んでくる。血と胃液を吐く無様な顔。潰れた鼻、折れた前歯。それでも尚闘志折れず。
腹立たしいが認めてやろう。お前はただのチャラチャラした女ではない。信念をもって闘う戦士だ。
なればこそ、余計に腹が立つ。
わたし捕らえようと伸ばされた腕が、そのまま硬直して止まった。
三度不可視の拘束。
怒りに満ちたサキュバスの顔に、振り上げた踵を思うさま食い込ませた。

パトリシア、続いてわたしが地面に落ちる。立ち上がったのはほぼ同時。
少なからず傷つく。それなりの力で蹴ったはずなのだが。

「……ナンですか?」
「何がですか。」
「……あの、糸みたいなモノは……。」
「文字通りただの糸ですよ、魔力で出来た。ごく初歩の術です。」

彼女を捕らえるのに使った技は大したものではない。相手を捕縛するだけの何てことのない技だ。十分な力があれば振りほどくのも簡単。私はただ単に、

「それをモーション無しで使っただけです。」

どんなに他愛のない技でも、使っていることがわからなければ避けられない。そしてこれは、避けられさえしなければ確実に一手止める技。
『つまづいてくれれば』それで十分。追撃をセットで入れるには。
後はそれを死ぬまで繰り返せばよい。

「……ナルホド……。」
「まだやりますか?」
「……アナタ、銃より素手のが強かったノネ。」
「いいえ。
銃を使った方が強いに決まっています。
ただ、銃を使うようになったのは行きがかり上であって、それまではずっとこういう訓練をしてきた。
銃を使うようになっても、拳法の訓練は休まずに続けた。
それだけです。」

わたしは自他ともに認める銃使いだが、最初は不本意だったのだ。
最初のことなど今はもうどうでもいいし、銃の良さも今は理解している。
だがわたしは最初から今まで、ずっと「こう」ありたいと思っていた。
最初は不本意だった、ということをずっと忘れずにいた。


「で、まだやりますか?」
「……トウゼン!」

俄かにパトリシアの雰囲気が変わった。いや、肉体が変わった。皮膚の内側から何かが盛り上がり、外に出ようとしている。空気の匂いが変わった。空が虹色に光っている。地面が揺れ触手が生える。パトリシアの姿に目をやると、蜃気楼のように揺れながら、青く赤く色を変え、角が伸び、翼は細い触手を束ねたものに変わっている。眼球が消え眼窩には代わりに暗黒が嵌った。可聴域をはるかに超えた唸り声が響く。放射線、温度、電磁波、わたしの体のあらゆるセンサーが異常な値を示す。
噂には聞いていたが、本当だったか。異次元の異能。この世界にまともに顕現することすらできない何か。

「……それならば、わたしもそのように対応いたします。」

デバイスを操作し、銃を召喚する。
異能を倒すための銃を。異能を滅ぼし続けた銃を。

「……手加減は出来ませんよ。」

それはこちらの方だと言わんばかりに、真横に現れた触手の群れがわたしを引き裂いて
わたしは笑いながら銃の引き金を引いて
千切れたわたしの体が世界の祝福に修復されると同時に銃から放たれた異能が次元ごとパトリシアの触手を
ここから先はどれほどの意味も
どれほどの意味も
どれほどの

この嘘にどれほどの意味が
どれほどの


意味などに何の意味も
我々は

以上……。」

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Primeval Soul

「輪廻などあるはずがない。お前のような汚物に前世も来世も考えられない。

こんばんは鳩です……。

……妄想ケルベロスブレイド……。

萌芽の繰り返し

Peace一本が命一人分。
吐き出した煙が消えゆくのを見れば、パトリシア・バラン・瀬田はセンチメンタルな気持ちになれた。シガーホルダーを指先で優雅に持ち上げ、誘うような艶やかさで口づければ女優になれた気がする。
一本燃え尽きれば夢は終わり。処分した奴のことは存分に悲しみ、己の行いには十分に傷ついた。それでおしまい。
それがパトリシアの精神安定方法である。
​​​
煙草を吸いだしたのはここ数年のこと。
来日して出会った『師匠』の一人がPeaceという銘柄を甚く気に入っていて、それが何故だか酷くおかしく思ったので、好奇心半分からかい半分で一箱買った。
​​​
「ワタシも買ってみマシタ。」
「あーらら、そいつは残念。」
​​​
その師匠は眉根を顰めつつ笑った。
​​​
「何故デス?」
「もしあなたがそれに夢中になってしまったら、人類が終わった後は永遠にその夢を失うことになる。」
​​​
煙草を作る技術が失われた後の遥かな時間を、あなたはそれ無しで過ごすことになる。
パトリシアも眉根を顰めて言葉を返した。
​​​
「師匠だってそうデショウ?」
「いいえ?僕にとっては思い出でしかありません。
思い出は僕が覚えていればいいんですから、なくなっても困りません。」
「ならなんで吸うノ?」
「大人の真似事がしたいだけです。」
​​​
その「師匠」は、自分は一人前の人間ではないと言い切った。
この先も、恐らくは人類が地球からいなくなった後も、太陽が赤色巨星となり地球を飲み込んで地球という惑星がなくなった後も、地球外へ進出した人類が宇宙の伸張に耐えきれずついに引き裂かれた後も、大人にはならないつもりだ。
​​​
パトリシアは燃え尽きた煙草を捨てる。
ケルベロスとしての異能を全身にみなぎらせ毒素を無効化し、シガーホルダーをケースにしまう。
肺と胃の腑に魔力を通して煙草の成分を検知、空気と共に口から引きずり出す。
後はシャワーと洗濯で消臭は終了する。
厨房の出口へと歩く。カツカツと響く足音は誇り高いヒールの証。胸を張って歩む。排気の音に負けないように。
扉を開け階段を昇れば喧騒が聞こえる。この旅団『ホテル53X』のケルベロス用集会ロビーの。
​​​
「ハァイ!グッモーニン♪」
​​​
バラン団長のお出ましに、気さくな団員が手を上げグラスを掲げ応えてくれる。
笑顔で手を振ると、パトリシアの胸中に小さな芽が生えた。
​​​
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​​​
駐車場に止まった白塗りのバンから目隠し猿轡の男が引きずり出された。
​​​
「じゃ、よろしく姐さん。」
「ハイ。終わったら連絡シマス。」
​​​
そう言ってパトリシアは虜囚の首根っこを掴む。
​​​
「ジャ、短い付き合いだケド、ヨロシク♪」
​​​
嗜虐的に囁くと、パトリシアの胸中にまた小さな芽が生えた。
​​​
—-
​​​
「弱い弱い弱すぎる!その程度では神の一人も殺せはしませんよ!!」
​​​
『Peace好きの師匠』が残心する。
打ち据えられたパトリシアは20mほども先へと吹き飛び倒されていた。
​​​
「……チョーシにノってんじゃナイワヨ……!」
​​​
眩暈に揺らされながら、地に両手を立てて起き上がる。
残心のままの『師匠』を確認し、両足で強く地を踏みしめた。
​​​
「Filho da puta(クソガキ)!!!」
​​​
魂の奥底に魔力を流し込み、本質を引きずり出す。
人前では使えない技、見せられない姿。肉体が別の物質へと置き換わり、吐き気がするような快感と笑いだしたくなるような苦痛が体を駆け巡る。
​​​
異界からの浸食を受け入れたとき、パトリシアの胸中にまた小さな芽が生えた。
​​​
—-
​​​
今日もまた森に芽が生える。
始まりを何度も繰り返し、森は密度を増す。
風にざわつき雨に濡れ訪問者に踏みこまれ。
今日もまた森に芽が生える。
​​​
同じ土に。
原初の土に。
今日もまた芽が生える。

関連
以上……。」

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