Adult Children of Alcoholics

「社員スパーク!

こんばんは鳩です……。

こちらの方を、許可を得て借り上げます……。

……妄想ケルベロスブレイド……。

ARMORED CORE

「肉ウメー!」
「中ジョッキおかわりお願いシマース!」

ショッピングモールで鉢合わせた彼女らは、あら久しぶりー!元気してた?そっちはどう?あらあらまあまあそれじゃあ一杯飲みましょうそこによさげな店もあるし、ときゃあきゃあ黄色い声を揚げながらバルへと吶喊したのであった。


「土手焼きがしみじみ旨いですね……。」
「オッサンオッサン!」

雨宮・ノヴェム(レプリカント)が牛スジをむぐむぐ噛んで感嘆の声を漏らすと、パトリシア・バラン(サキュバス)がゲラゲラとジョッキ片手に笑う。

「クリのステーキのお客様。」
「ハイ!ワタシワタシ。きゃークリの花の香り!」
「バーカバーカこのサキュバスバーカ!」

香りを楽しんだ後はちくちくと油を泡立てる音に耳を澄ませ、ナイフで刻んで口に運ぶ。

「ンー!デリシャス!!」
「デリシャスはブラジル語で?」
「ケ・デリィシャエシ・クリ!(クリまじうまし)」
「クリ!!」

「ラムシンのステーキのお客様。」
「わたしです。」
「ラムリン!」
「ラムリンじゃありませんね。らむりんなんでリストラされたんでしょう(しましまとらのしまじろう)?」
「サア?」

雨宮も自分のステーキの香りをたっぷりと鼻で味わい、油のはじける音に耳を澄ませ、いざ。ナイフで切った肉を口に入れる。

「味ハ?!味ハ!?」
「むぐむぐ。」
「機械語で言って!!」
「んむん!?」

バカ二人、買い物袋の中のビールがぬるむことも忘れて(忘れたふりをして)、肉の美味しさにIQがそぎ落とされていく様を存分に味わった。

本当は積もる話をするつもりだったのだが、過ぎた美食は会話に向かない。
店を出ても肉の味とアルコールで脳味噌がふわふわと機嫌がよすぎる。
再会の喜びを美食でうやむやにしたまま別れるのを惜しんだパトリシアは、結社に泊っていけ、何もしないから、と雨宮を誘い、パトリシアの結社『ホテル53X』へ二人して入っていった。千鳥足で。
5階の505号室に入り、部屋の冷蔵庫に買い物袋の中身を移すと、眠気が限界を迎えた二人はそのままベッドに寄り掛かるように眠ってしまった。

「んうー……。」

眠りから緩く醒めた雨宮がなんとなく首を動かす。

「んむ!?」

間髪を入れず、掌が彼女の顔を掴み、心地よい魔力を吹き込んだ。綿が詰まったようだった頭も胃もすっきりと健全に。思わず飛び起きて拳法の構えを取るほど。

「オハヨウアメミヤ。」
「おはようございますパトリシア殿。ありがとうございます。魔力にはそんな使い方もあるのですね。」
「アルコール如きの毒でいちいち倒れてられないからネ。」

このくらい出来なきゃ、ケルベロス(化け物)とは言えないワァ。
パトリシアの言葉にうなずくと、彼女に促され雨宮はシャワーを浴びに行った。

「これはいわゆる、先にシャワー浴びて来いよというヤツでありますか?」
「アリマセン。」

シャワーを浴びて戻ってきたアメミヤは、部屋の奥においてある像に目を向けた。
金メッキが施された、男の像。どの宗教のものとも違う、見たことのない像だ。

「キニナル?」
「見ても?」
「ドウゾ。」

接近して観察する。やはり見たことのない男。美形とは言えないし、神々しさもない。ただ突っ立っているだけのメッセージ性もないポーズ。だが、横や上を見つめているうちになんとなくおかしな気分になってきた。意識しないまま手を伸ばし、触れる。

「あっ!」

瞬間、様々なイメージが頭の中にフラッシュした。ここではないいくつもの別の地球の景色。人外どもの忍者の里。闇の獣が目を光らせる密林。何かが極限の寒波を噴き散らす北極点。燃え盛るタールが半径数10キロに渡って広がる砂漠。パソコンのモニタの中に見えるパトリシア。パソコンのモニタの中にみえる雨宮。いつか自分を打ち倒した地球人の男女。そしてそれ以外の全て。

「……なるほどそういうことだったのですね。いいえ、私は知っていました。あなたはあなたで、私は私だと。」
「マニマニの悪魔にはあまり触れすぎない方がいいワヨ。」
「知っています。でも折角ですから挨拶をしておきたい。是非。」

伸ばした手をパトリシアがとると、雨宮は像をぐっと握りしめた。マニマニの黄金像は時空を破断し結びつけ、神の住まう505号室は歪んで散って、その後には奈良の山里があった。
奈良の忍者の里だと二人ともわかっていた。

「アラ、コッチ?」
「では、行ってきます。」
「ワタシもイキマス。」

二人は迷うことなく広い道を歩き、奥にある一際大きな屋敷へと向かっていった。

雨宮が入り口に差し掛かると使用人らしき男が怪訝な目で睨んだが、パトリシアの姿を認めてすぐに目つきを和らげ立ち去って行った。

「団長殿のルーツもここなんですか?」
「ルーツっちゅうカ……。
寧ろ何であなたがここを知ってるのカシラ。」

玄関で丁寧に履物を脱ぎ、雨宮、続いてパトリシアが廊下を歩く。曲がり角も迷わず、障子戸も躊躇なく、いくつかの部屋を横断して辿り着いた部屋の奥には御簾に隠された何者かが鎮座していた。

「お久しぶりでございます。鳩殿。」
「ご無沙汰してオリマス、御屋形様。」

パトリシアが跪いたのを見て、雨宮も慌ててそれに倣う。
御簾の奥からは少女のような高い声が、しかし重く通る響きで聞こえてきた。

「これはこれは。いつぞやの機械式不死敵性生物(ダモクレス)。その様子ではマキナクロスからは解き放たれたようですね。」
「その節は大変お世話になりました。ただいまはしがないレプリカントをやっております。」
「それは重畳。バラン、お前は何をしに?」
「付き添いデッス。」
「去ね。」
「オオセノママニ。」

パトリシアは立ち上がり、雨宮にウインクして手をひらひらを振りながら障子戸を閉めた。雨宮は少しだけ名残惜しそうな顔を向けたが、ほどなく御簾に向き直り、『積もる話』を始めた。

—-

パトリシアが縁側に寝そべって陽光を味わう。盆地にあるこの里で心地よく日向ぼっこができるのは春先の今だけだ。
風の吹かないこの地は、夏はフライパン、冬は氷結地獄と化し、心地よく過ごせる時期が非常に少ない。

「知り合いだったとはネー。知らなかったワー。」
「本当は知ってたんでしょう?」
「ひゃあ!」

モザイクの塊がのぞき込んで来て、パトリシアは心臓が口から出るかと思うほど驚愕した。

「ンモー、脅かさないでクダサリマセマセダワ、オシショー。」
「油断しているあなたが悪いのです。」

オシショーと呼ばれたモザイクの塊は男性であるらしい声で言うと、彼女の足先に座った。

「セックスします?」
「シマセンヨ!どこがチンポだかわかりゃしないワ!」

『オシショー』はモザイク人間(ドリームイーター)である。コンプレックスや感情などの欠けた部分がモザイク模様で認識される敵性不死生物(デウスエクス)である。
ドリームイーターはその欠損を埋めるために行動し、そして欠損が埋まるほどにモザイクの範囲は小さくなりその力は増大すると言われている。
全身がモザイクにしか見えない『オシショー』は、欠けているというよりは何一つ満たされていないということのようなのだが、それでもパトリシアの『オシショー』たる力がある。

「雨宮、ノヴェムと名乗っているのですか。」
「何?マスターカケイも知り合い?」
「いえ、ええ。僕ではなく地球人として翻訳された僕が知り合いのようです。」
「ナンダカよくわからナイケド、深く聞かナイデス。」
「Novemはラテン語で9。」
「ああ、九号機って意味だったのネ。」
「9は漢字で。」

マスターカケイと呼ばれた『オシショー』は地面をなぞって『九』の字を書いた。

「ハイ?」
「ところでうちの忍者団の幹部には鳥越・九(いちじく)というのがいます。」
「マスタートリゴエネ。それがどうしたノ?」

『オシショー』は九の隣に続いて鳥越と書いた。
九鳥越

九鳥

「……ふざけた名前にもほどがあるワ。」

鳩ニ困ッタラ

以上……。」

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敗れ去るにはまだ早い

「生まれ方を間違えやがって。

こんばんは鳩です……

……妄想ケルベロスブレイド……?

ザップ・ガン

だから褐色の分身が拘束魔力糸を振りほどいた時、鳩目・ラプラース・あばたは然程驚きはしなかった。対策があってこそ挑んできたのだ。
パトリシア・バラン・瀬田は分身と共に強い笑みを携えて突き進んで来た。
サキュバスの美しい脚線が分身とシンクロして弧を描く。鳩目は頭を下げ髪の上を蹴りに掠らせながら懐へと滑り込む。そのまま流れるように正拳突き。手指には確かな手ごたえ。しかし以前血を吐かせた時よりも硬い。素早く引き戻した筈の腕は、パトリシアに手首を掴まれていた。

「捕まえマシタ♪」

パトリシアは鳩目の手首を引き込みながら首に手を伸ばす。とっさにもう片腕を出して絞殺は免れたが、代わりにその腕も掴まれた。
鳩目が抵抗を起こすより先にパトリシアが腕を上へと引っこ抜く。鳩目の体が中空に浮くと、担ぐように首を掴んでそのまま尻から着地した。

「サキュバスタナー!!」

鳩目の首が激しく揺れ、口から血を噴いた。着地点には小さなクレーターが生じている。パトリシアは鳩目の首を担ぎ締めたまま立ち上がり、もう一度見舞おうと跳びあがる。が。

「ううっぐ!」

背を強く叩かれ、弾かれたように吹き飛び、地面を転がる。背を押さえつつ立ち上がると、鳩目は咳き込みながら拳をパトリシアに向けていた。

「タフねェ。」
「……来なさい。」

その言葉を聞いて、パトリシアは一瞬呆けた表情になった後、嬉しそうに笑った。

「イきマス。」

心から嬉しそうに。パトリシアは大地を蹴った。
その足先を不可視の糸が絡めとる。つんのめったパトリシアに鳩目が殴りかかるが。

「効かナイってばワンパターン!」

爪先だけの力で跳びあがり、鳩目の顔面にドロップキックを叩き込んだ。
鳩目が倒れている隙に魔力糸を引きちぎり、飛び起きた鳩目と拳を交わす。
手足の長いパトリシアがリーチを生かして長い打撃を放つと鳩目がそれをすり抜けて懐へ入ってくる。肘やフックで迎撃を試みるも鳩目の防御がそれを阻む。しかし鳩目の攻撃もパトリシアは掴んで防ぐ。
ハンドスピードはほぼ同じ。だが、応酬を交わすごとに流血が目立ってきたのは鳩目の方だった。東洋風の武術一辺倒の鳩目に対し、プロレスをはじめ様々な格闘技を齧ったパトリシアの方が引き出しが多かった。何より掴み技に長けているのが大きかった。

鳩目の両手首をパトリシアの両手がとらえる。鳩目は前蹴りで抵抗するが、パトリシアはこらえ、逆に膝蹴りを腹に見舞う。うつむいた鳩目の首を両腕で掴んで持ち上げ、翼をはためかせて高く飛ぶ。

「48Arts、No.9!」

逆さまにした鳩目の両足を両手で抱え、鳩目の股関節を限界まで開き痛めつける。鳩目の全身が軋むのを肌で確認し、その体勢のまま地面へと落下する。

土煙が爆風のように沸き上がり、そして治まった。
陥没した大地の中央でパトリシアが腕を開くと、鳩目が力なく地面に倒れ伏した。

「まだヤる?」
「はい。」

即答だった。鳩目はよろよろと立ち上がると、傾いた首を両手でぐりぐりと捻った。機械化された肉体の通電と再生を促しているらしい。

「しかし、悔しいことですが、格闘能力ではあなたの方が上のようです。」
「遠慮はいらないワァ。出しなヨ。Gun。」
「はい。」

鳩目はポケットから手帳大のデバイスを取り出し、開いてパネルを素早く操作した。
すると虚空から銃が現れ鳩目の両手に装備される。
右手に握られた銃は1m近い銃身を持ち、マガジン部分には鳩目の手首から伸びたケーブルが刺さっている。
左手に握られた銃は機関銃のように巨大で、ベルト状につながれた弾薬が背嚢から伸びている。

「但し。」

鳩目の、瞳の無い目がまっすぐにパトリシアに向けられた。

「この武器は、暴走しかけた貴殿を制圧した実績があります。
どうぞお忘れなきよう。」

小柄な少女の姿をしているはずの鳩目が、銃を帯びただけで全く違う怪物に見える。
パトリシアの背に冷たい汗が流れた。

「オーライ……!」

拳を握り直し、パトリシアも己の身に魔を漲らせた。

結果は惨憺たるものだった。
パトリシアは心臓と頭が消えてなくなるまで撃ち尽くされ、倒れた。何度も何度も。
パトリシアは射撃戦が得意ではないが、近接戦に持ち込むノウハウは持っている。それを実行することにある程度自信もあった。
そんなものは何の役にも立たなかった。
回復して起き上がった途端再度撃ち込まれる。防御した腕は関節を破壊され、回避したその先には銃弾が置いてある。
弾薬の威力や連射の速度もさることながら、狙いの精度が化け物じみている。
当て勘とでも呼ぶべきそれは過たずパトリシアを捕らえ、無様に逃げ回ることすらも許さなかった。

「まだやりますか。」
「……ワタシの負けデース。」

再生した顎で何とか応えた。この嘘の中では。そう、この嘘の中では、ワタシも運命に愛されている。師匠たる鳩目と同じく。この嘘の中だけは、ワタシは不死だ。
例え脳が消し飛んでも生きていられる。だって嘘なのだから。

「ではわたしは帰ります。」
「お疲れ様デース……。」

ああ、でもその嘘の中でも。より上手い嘘つきには勝てないのデスネ。
マスターハトメもまた、不可能を嘘にしてきた女なのデショウ。
あり得ないことを望み、あり得ないということを嘘にしてきた。
あり得ないということさえ除けばすればあり得る。
不可能であるということさえ除けば可能である。
それはまるで理屈の通らぬ夢のような。
瞬き消え切り替わる夢のような。
空想だけが唯一の法たる夢のような。

再生しかかりの欠けた脳がチカチカと、パトリシアに何かの欠片を見せたようだが。

以上……。」

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まだまだくたばらない

「死に時を逃している。お前のそれは生まれる前だ。

こんばんは鳩です……

……妄想ケルベロスブレイド……?

最後から二番目までの真実

なんて面倒なんだ。
この世界は嘘だからどんな嘘なのかをいちいち説明しないと理解されない。
本当でないとはなんて面倒なことなんだ。
わたしの名前は鳩目・ラプラース・あばた。世界に祝福された異能の持ち主で、常人を遥かに超える身体能力を持つ。
異能者にも様々な種類があるがわたしは肉体の一部、若しくは大部分が機械で出来た種族でありわたしの場合は両肩から先、頭から左右に生えているアンテナ、そしてレンズのような黒目のない眼球がわかりやすい特徴となる。
年齢は24歳、だったはずだ、そういう設定だった。そして年齢に合わない童顔と低身長で、ついでに生身の部分は鍛え込んだ筋肉で太く膨れている。
本当に馬鹿らしい。これでわたしの外見を正確に想像などしてもらえないことはわかっているが、それでも伝えなければ話にならない。


前方20mほどの位置に褐色のサキュバスが立っている。
黒髪のロングヘアー、緑色の瞳、腰から左右に生えた蝙蝠の翼、細長く黒いしっぽ。豊満な乳房と見事な括れ、そして熟し過ぎたヒップを持つ。
緑色を基調にしたビキニっぽい衣装に、右腕に金籠手、左腕に銀籠手。
笑っている。忌々しい。お前のことなどわたしはどうでもいいのだ。お前のことをいちいち文字にしなければいけないのが煩わしくてたまらない。

「今日は銃は無しデスカァ?」

イライラする。説明が抜けていたが、わたしは主に銃で戦闘を行う。彼女――――パトリシア・バラン――――もそれを知って言っている。

「素手で十分です。」

そう言うとパトリシアの眉根が微かに険しくなった。多少は彼女の気分を害することが出来たようで、少しだけ気が晴れた。
​ ​
「オーケイ……!」

苛立ちを怒りに変換し、活力にしてパトリシアが駆け込んできた。
わたしは瞳のない目で視線を巡らせ、神秘の力線を配置する。

「なぁっ!?」

程なくして褐色の猪はまんまと罠にはまり、魔力の網に縛り上げられた。
わたしはつんのめった彼女の懐に走り込み、拳を打ち込む。
何と柔らかい肉だろう。謎の金属で出来た我が右手は彼女の鳩尾に手首までめり込んだ。
それを引き抜くと彼女は派手に吐血してうつむいたので、下がった頭を回し蹴りで存分に叩いた。
美女が無様に転がって汚れる。痛みと吐き気に歪んだ顔は見ていてとても気持ちがいい。
パトリシアはしかし転がる勢いのまま立ち上がって見せた。血を吐きながら拳を構える。
忌々しいが、やる気は認めてやる。回復など許すつもりはなかったし、判断は正しい。
接近すると、パンチを打ってきた。防御は簡単だが重い。流石に格闘戦に自信を持つだけはある。
軽くバックステップする。追ってきたところにまた力線で捕まえて、鉤突きで肝臓を打つ。痛みに悶えたのを確認してから続けて恥骨、下腹部、胃、心臓を拳で叩き、喉を平拳で突く。
パトリシアが血反吐を吐きながらわたしの腕を掴んだ。
そういえば彼女はプロレスラーでもあった。タフネスと掴み技には優れていると認めざるを得ない。強い力で引き込まれたので、わたしはそれに逆らわず手を伸ばし、頭を掴んで頭突きを返した。鼻骨を中心に顔面が陥没する十分な手ごたえがあった。しかしそれでもパトリシアの手は緩まない。彼女はわたしを力づくで空へ投げ飛ばした。
空中で面食らうわたしに翼を開いてパトリシアが飛んでくる。血と胃液を吐く無様な顔。潰れた鼻、折れた前歯。それでも尚闘志折れず。
腹立たしいが認めてやろう。お前はただのチャラチャラした女ではない。信念をもって闘う戦士だ。
なればこそ、余計に腹が立つ。
わたし捕らえようと伸ばされた腕が、そのまま硬直して止まった。
三度不可視の拘束。
怒りに満ちたサキュバスの顔に、振り上げた踵を思うさま食い込ませた。

パトリシア、続いてわたしが地面に落ちる。立ち上がったのはほぼ同時。
少なからず傷つく。それなりの力で蹴ったはずなのだが。

「……ナンですか?」
「何がですか。」
「……あの、糸みたいなモノは……。」
「文字通りただの糸ですよ、魔力で出来た。ごく初歩の術です。」

彼女を捕らえるのに使った技は大したものではない。相手を捕縛するだけの何てことのない技だ。十分な力があれば振りほどくのも簡単。私はただ単に、

「それをモーション無しで使っただけです。」

どんなに他愛のない技でも、使っていることがわからなければ避けられない。そしてこれは、避けられさえしなければ確実に一手止める技。
『つまづいてくれれば』それで十分。追撃をセットで入れるには。
後はそれを死ぬまで繰り返せばよい。

「……ナルホド……。」
「まだやりますか?」
「……アナタ、銃より素手のが強かったノネ。」
「いいえ。
銃を使った方が強いに決まっています。
ただ、銃を使うようになったのは行きがかり上であって、それまではずっとこういう訓練をしてきた。
銃を使うようになっても、拳法の訓練は休まずに続けた。
それだけです。」

わたしは自他ともに認める銃使いだが、最初は不本意だったのだ。
最初のことなど今はもうどうでもいいし、銃の良さも今は理解している。
だがわたしは最初から今まで、ずっと「こう」ありたいと思っていた。
最初は不本意だった、ということをずっと忘れずにいた。


「で、まだやりますか?」
「……トウゼン!」

俄かにパトリシアの雰囲気が変わった。いや、肉体が変わった。皮膚の内側から何かが盛り上がり、外に出ようとしている。空気の匂いが変わった。空が虹色に光っている。地面が揺れ触手が生える。パトリシアの姿に目をやると、蜃気楼のように揺れながら、青く赤く色を変え、角が伸び、翼は細い触手を束ねたものに変わっている。眼球が消え眼窩には代わりに暗黒が嵌った。可聴域をはるかに超えた唸り声が響く。放射線、温度、電磁波、わたしの体のあらゆるセンサーが異常な値を示す。
噂には聞いていたが、本当だったか。異次元の異能。この世界にまともに顕現することすらできない何か。

「……それならば、わたしもそのように対応いたします。」

デバイスを操作し、銃を召喚する。
異能を倒すための銃を。異能を滅ぼし続けた銃を。

「……手加減は出来ませんよ。」

それはこちらの方だと言わんばかりに、真横に現れた触手の群れがわたしを引き裂いて
わたしは笑いながら銃の引き金を引いて
千切れたわたしの体が世界の祝福に修復されると同時に銃から放たれた異能が次元ごとパトリシアの触手を
ここから先はどれほどの意味も
どれほどの意味も
どれほどの

この嘘にどれほどの意味が
どれほどの


意味などに何の意味も
我々は

以上……。」

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Primeval Soul

「輪廻などあるはずがない。お前のような汚物に前世も来世も考えられない。

こんばんは鳩です……。

……妄想ケルベロスブレイド……。

萌芽の繰り返し

Peace一本が命一人分。
吐き出した煙が消えゆくのを見れば、パトリシア・バラン・瀬田はセンチメンタルな気持ちになれた。シガーホルダーを指先で優雅に持ち上げ、誘うような艶やかさで口づければ女優になれた気がする。
一本燃え尽きれば夢は終わり。処分した奴のことは存分に悲しみ、己の行いには十分に傷ついた。それでおしまい。
それがパトリシアの精神安定方法である。
​​​
煙草を吸いだしたのはここ数年のこと。
来日して出会った『師匠』の一人がPeaceという銘柄を甚く気に入っていて、それが何故だか酷くおかしく思ったので、好奇心半分からかい半分で一箱買った。
​​​
「ワタシも買ってみマシタ。」
「あーらら、そいつは残念。」
​​​
その師匠は眉根を顰めつつ笑った。
​​​
「何故デス?」
「もしあなたがそれに夢中になってしまったら、人類が終わった後は永遠にその夢を失うことになる。」
​​​
煙草を作る技術が失われた後の遥かな時間を、あなたはそれ無しで過ごすことになる。
パトリシアも眉根を顰めて言葉を返した。
​​​
「師匠だってそうデショウ?」
「いいえ?僕にとっては思い出でしかありません。
思い出は僕が覚えていればいいんですから、なくなっても困りません。」
「ならなんで吸うノ?」
「大人の真似事がしたいだけです。」
​​​
その「師匠」は、自分は一人前の人間ではないと言い切った。
この先も、恐らくは人類が地球からいなくなった後も、太陽が赤色巨星となり地球を飲み込んで地球という惑星がなくなった後も、地球外へ進出した人類が宇宙の伸張に耐えきれずついに引き裂かれた後も、大人にはならないつもりだ。
​​​
パトリシアは燃え尽きた煙草を捨てる。
ケルベロスとしての異能を全身にみなぎらせ毒素を無効化し、シガーホルダーをケースにしまう。
肺と胃の腑に魔力を通して煙草の成分を検知、空気と共に口から引きずり出す。
後はシャワーと洗濯で消臭は終了する。
厨房の出口へと歩く。カツカツと響く足音は誇り高いヒールの証。胸を張って歩む。排気の音に負けないように。
扉を開け階段を昇れば喧騒が聞こえる。この旅団『ホテル53X』のケルベロス用集会ロビーの。
​​​
「ハァイ!グッモーニン♪」
​​​
バラン団長のお出ましに、気さくな団員が手を上げグラスを掲げ応えてくれる。
笑顔で手を振ると、パトリシアの胸中に小さな芽が生えた。
​​​
—-
​​​
駐車場に止まった白塗りのバンから目隠し猿轡の男が引きずり出された。
​​​
「じゃ、よろしく姐さん。」
「ハイ。終わったら連絡シマス。」
​​​
そう言ってパトリシアは虜囚の首根っこを掴む。
​​​
「ジャ、短い付き合いだケド、ヨロシク♪」
​​​
嗜虐的に囁くと、パトリシアの胸中にまた小さな芽が生えた。
​​​
—-
​​​
「弱い弱い弱すぎる!その程度では神の一人も殺せはしませんよ!!」
​​​
『Peace好きの師匠』が残心する。
打ち据えられたパトリシアは20mほども先へと吹き飛び倒されていた。
​​​
「……チョーシにノってんじゃナイワヨ……!」
​​​
眩暈に揺らされながら、地に両手を立てて起き上がる。
残心のままの『師匠』を確認し、両足で強く地を踏みしめた。
​​​
「Filho da puta(クソガキ)!!!」
​​​
魂の奥底に魔力を流し込み、本質を引きずり出す。
人前では使えない技、見せられない姿。肉体が別の物質へと置き換わり、吐き気がするような快感と笑いだしたくなるような苦痛が体を駆け巡る。
​​​
異界からの浸食を受け入れたとき、パトリシアの胸中にまた小さな芽が生えた。
​​​
—-
​​​
今日もまた森に芽が生える。
始まりを何度も繰り返し、森は密度を増す。
風にざわつき雨に濡れ訪問者に踏みこまれ。
今日もまた森に芽が生える。
​​​
同じ土に。
原初の土に。
今日もまた芽が生える。

関連
以上……。」

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BLOW JOB

「舐め殺してやろう。

こんばんは、鳩です……。


イラストが完成しました!
下記より完成原稿をご確認ください。
===================
完成原稿
●アトリエページ
http://tw5.jp/gallery/?id=129440
http://tw5.jp/gallery/?id=129441
http://tw5.jp/gallery/?id=129442

●直接リンク
http://tw5.jp/i/tw5/origin/0379/641085_e03793_bu_f.png
http://tw5.jp/i/tw5/origin/0379/641085_e03793_ic.png
http://tw5.jp/gallery/combine/129442

===================
●商品確認
作家:jenny
商品:3点セット

●発注オプション
・【バストアップ】大きな画像(横768×縦1024)
・【ケルベロスカード】大きな画像(横768×縦1024)

●発注文章
【顔アイコン:普通】
※アイコン、バストアップは全身図からの切り抜きor差分で問題ありません。

以前いただいたイメージが強く印象に残り、彼女のベーシックな姿として刻み込まれました。
以後のロールプレイでも頂いたイラストが常に脳裏に浮かんでいます。
パトリシア・バランというキャラクターはjenny様が作って下さったといっても過言ではありません。
そこで、彼女の外見をさらに充実させるべく、同じ画風、同じ姿で別の表情やポーズ、側面などを描いていただきたく思い、お願いする次第です。

基本的にはほぼお任せ、というつもりでおります。発注内容を踏み倒していただいても構いません。

【服装】参照画像の通り。全くそのままでもアレンジやプラスマイナスがあっても構いません。ブラジルっぽい緑と際どい衣装はとても気に入っています。
【表情】笑顔。元気いっぱいです。
【髪】腰あたりまでの長髪になっています。
ポーズ:両足を広げて堂々と立っています。身を曲げることでボリュームと細さのコントラストが出ていた参照画像とは対照的に、手足を伸ばしたより大胆なポーズ。具体的に言うと股間が見たいと思っています。
【装備】右手に金のバトルガントレット、左手に重厚で刃物付きの銀のバトルガントレット。
ですが、装備していなくても構いません。セクシーさの邪魔になるようなら素手で問題ありません。
指が好きなので最低でも片手は素手推奨。両手素手でも問題ありません。

参照画像のパトリシア・バランが別のポーズをとっている、というイメージでリクエストをお願いしています。より元気で、参照画像の服装のまま別のポーズをとるとどう見えるのかが知りたくおもいます。
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これは『ケルベロスブレイド』のイラストです。使用権は鳩、著作権はjenny、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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jenny様、ありがとうございました……。
発注文にもある通り最初に頂いたイメージが強烈で、パトリシアを思い浮かべるときは大体最初にもらったこれ

を思い浮かべてるなと気づいたので、ならばいっそこの姿この絵柄でバリエーションを出してもらえればいいじゃんと思い至ったので注文しました。
あとこの衣装で股間の際どい所を見たかった。
ロングヘアーにポーズ違いというだけで印象はかなり変わりますね。
以前いただいたものはウインクにやさしげな笑顔ということで年上の余裕感がありましたが、今回の者はより奔放な側面が出ています。
特に全身図は強気な眉毛に怪獣めいた左手が相まって食べちゃうワヨと言いたげな仕上がりです。右わき腹の腹筋で浮き出たスジ、下腹部左側の骨盤が成すくぼみ、右鼠蹊部の淡い陰影が股間の際どさを演出していてエロくてよろしいことです。
しっぽが脚の間を通してひょいっと出ているのもおちんぽお誘い感あります。
セックスだなこれ、と一旦気づいてしまうとエロさを果てしなく感じることが出来ますね。
脚は短くなった印象がありますが、これは寧ろ前の全身図が長く見えるポーズだったのだな、と思います。
前に頂いた全身図は両膝を曲げて重ねた上に膝から下を画面奥側に引いているので膝から下が細く見え、その細さとつま先を伸ばしたポーズも相まって、足が長く見えるのだなと気づきました。1年半越しの発見です。……いや、やっぱ脚短くなってる?

バストアップ、アイコンは差分で作っていただいていますが、それぞれアレンジが入ることで別のイメージを醸し出しています。
バストアップは舌を出しており、眉も柔らかい表情になっています。右のおてても相まってしゃぶってくれそうな感じあります。
それを踏まえると、以前作っていただいた全身図も左手が手でコいてあげましょうかっぽい手つきに見えてきましたねよいことです。
アイコンは自分の舌を指さすようなポーズ。おフェラ。

大きな画像を頼んだのはとても正しい選択でした。
鳩は画像そのものの大きさを迫力というかエロぢからの一部として感じる部分がありますので、大きな画像、特にバストアップの大きい画像は全身図の大きい画像よりさらにアップになって(バストアップ→大きな画像の方が倍率が大きいので)セクシーパワーがグレートにアップしていますね。
おっぱいはややつぶれた横パイ。なるほど、胸のパーツは乳を持ち上げていたんですね。新たな発見です。

全体としてとてもえっちになりました。jenny様えっちですね!えっちですね!!いいですよ!!!!!!!!114545
やはり最初のイメージを踏まえた上で更に向上させるというのはいいですね。これが最大の発見でした。色々開拓するのもいいのですが、ファーストインプレッションを超える新たなイメージを作り出すというのは難しいことです。もちろんそれもいいものなのですが、なかなか。

jenny様、ありがとうございました……。

どうでもいいですけどアイコンってpngなんですね。勝手にgifのイメージを持っていました。

以上……。

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終わりという概念

「生まれなかったことになればいいのに。

こんばんは鳩です……。

イラストが完成しました!
下記より完成原稿をご確認ください。
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完成原稿
●アトリエページ
http://tw5.jp/gallery/?id=129027
​​
●直接リンク
http://tw5.jp/gallery/combine/129027
​​
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●商品確認
作家:内藤ゆう
商品:全身イラスト
​​
●発注オプション
・大きな画像(横768×縦1024)
・暴走
​​
●発注文章
イメージは「コズミックホラー」。
触手の悍ましさ、金属の光沢、狂った表情。
とあるゲームの「悪夢の声、ブリセラ」というカードイラストが発送の根源でした。
​​
異次元の素材が無理やりパトリシア・バランの形をしている、あるいは彼女を一皮むいたらこれが出てくる、というイメージです。
​​
ポーズ:画面に向かって立ち口を開けて怒りの表情をしています。
身体的特徴:体形は参照画像を踏襲しています。
但し肉体の構成要素が全く異なっています。
目と口は真っ暗な暗黒。
皮膚は脈動し、油膜のように歪んだ虹色に輝いています。翼は細い触手が編み込まれた大きな翼に置き換わっています。角はねじ曲がって大きく育ち悪魔のよう。
それでもどうやら乳房と尻は大きく、シルエットだけはダイナマイトボディ。
​​
右手に金の籠手、左手に銀の籠手を装備しています。
その二つだけは唯一「この世のもの」っぽくお願いします。
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これは『ケルベロスブレイド』のイラストです。使用権は鳩、著作権は内藤ゆう、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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内藤ゆう様、ありがとうございました……。
はい、もう「悪夢の声、ブリセラ」って書いちゃいました。そうでもしないと伝わらないな、と思いまして。
下腹部に紋様が集中している辺りがエロくてよいです。怒りの表現は静かな感じになりましたが、それもまたよしです。
これが目の前に現れたらどう見ても敵。そんな姿でありながら、元の姿の面影は残すよい悪落ちです。悪落ちと言いますか覚醒と言いますか。

内藤ゆう様、ありがとうございました……。

……妄想ケルベロスブレイド……?

 

ここではないどこかのすべて 今ではないいつかのすべて

永遠は終わる。人間の時間間隔では決して辿り着けないというだけで。
宇宙はすべての粒子とエネルギーをゼロに薄めるためだけに膨張を続けている。存在という過ちを、無限の時をかけて消し去るために。
永遠が終わった後。宇宙の切望が叶った地点。
人類程度では数学上でしか知見しえない、あらゆる存在が引き伸ばされて無に消えた無限の三次元空間。

​​​​​​
そこに彼らはいる。
​​​​​​
男神は暗黒の刃を持つ剣を片手で。
女神は光そのもので出来た杖を両手で。
彼らはたった一挙動で容易に宇宙を破壊しうる。
故に、此処しかなかったのだ。己の力を発揮し、試し、鍛え上げるには。
無が無限大に広がるこの空間しかありえなかった。
​​​​​​
男神が万象を吸い込む黒い奈落の剣を振ると、
女神は無限の有を無尽蔵に放つ光の杖でそれを受けた。
波濤が広がる。虚無と有が混じって飛沫き、次元を曲げてペイズリー模様に引きちぎる。
零れ落ちた雫は一粒一粒が新たな宇宙の種となる。一粒一粒が創世の輝きを孕んで膨張し、その中に生まれた時間がそれぞれ永遠の果てへと走り出す。
そんなことは彼らの知ったことではない。

​​​
男神は再び剣を振り、女神がそれを打ち払う。光を遥かに超えて、無限大より大きなスピードで。己らの力を更に高める為に。
​​​​​
—-
​​​​​
4月も中旬の陽気の中、座敷は痛いほどに凍てついていた。

「何で気にくわない奴の為に神経を使う必要があるのか、というのは反語としてみれば精神安定の種にはなりますが、疑問としては答えが出ています。」

吹雪の中心から声が聞こえる。
そこには、風雪で霞んだ男の姿があった。白スーツに白いズボン、黒髪をしているらしいその人影からは、悪霊の妖気とそれが成す冷気が霜を伴って吹き付けてくる。

「治安が悪くなるから、です。
気に入らない奴だろうと人間である以上、粗末に扱えば見ている人の心証は悪くなる。自分がその方に振るう暴力が、そのまま共同体の平穏さのレベルを避ける。
他人を粗末に扱う輩がいる。その事実だけで人は不安になり、保険を求め、しまいには自警団が歩き回ったり銃の携帯が当たり前になったりする。
他人のことなど気にするな、というのは公共の福祉を踏みにじる危険性があるワケですなあ。」

「ア、アノ、Excuse me.」

震える女の声が男の言葉を遮った。

「何です?」
「れ、冷房を少し緩くしてもらえると嬉しいんデスケド。」

パトリシア・バラン・瀬田の抗議にふむ、と男が首を傾げると、吹雪が止む。

「アーッモウ!耳が千切れて落ちソウ!」

立ち上がったパトリシアが凍った畳をぐしゃぐしゃと踏みつけて障子戸を大きく開く。日の光が凍結寸前だった褐色の肌を柔らかく熱してくれる。

「弱っちぃですねえ。」
「チョットだけ涼しくしてって言ったのヨ、ワタシは!」
「師匠を冷房器具扱いしておきながら、酷いものです。」
「あなたなんてこのぐらいの役にしか立たないデショ!」

湿気を含んだ畳に戻る気にもなれず、パトリシアはそのまま縁側に腰かける。男も立ち上がり、その横に座った。

「役に立たない、ですか。手厳しいなぁ。」
「お茶ガッチガチに凍っちゃってるじゃないノ!」

パトリシアが座敷を振り返って視線を向けた先には湯呑みがあった。
中には緑色の氷面が光って見える。
冷気を噴き出すことをやめても、男の姿は朧気なままだった。
全身がモザイクに隠され荒いドット絵のようだ。
彼は、そういう形でしか世界に認識されない。不完全さがそのまま見た目に現れる。
ドリームイーターと言われる魔性の特徴であった。


「悪ふざけをしたのはわざとですけど。」
「ヤッパリ!」
「師弟の恩も忘れて家電扱いされれば僕だって少し拗ねます。」
「スコシ、ネ。ヘエ、スコシ。……ウウッ!」

体の芯に残る冷えがぶり返して、パトリシアの背筋がはねた。

「今日は暑いから少し冷やしてくれる?なんてよくもまあ僕に言えたもんだと思いますよ。怖くはなかったので?」
「あなたはほかの師匠連中よりは話が通じると思ったカラ。」
「それは光栄です♪」
「通じなかったケド。」
「あっはっはっは!」
「強スギる能力なんてないのと一緒ダワ。」
「そうですかねえ?強すぎることなんてないと思いますけど。」
「じゃあアナタあの冷凍庫みたいなのを何に使うってイウノ!」
「文字通り冷凍庫とか?」
​​
男が肩を竦めて笑った――――かのようにモザイクが動いた――――。
​​
「新鮮なマグロを素早く凍らせて直送!」
「運送屋でもやればイイノダワ。」
「あとは、適当な宇宙からエネルギーを頂いたり?」
「ハア?」
「あれはね、実は気温を下げているのではないんですよ。エネルギーを奪っているのです。範囲を全宇宙に広げればあっという間に静かで終わりのない、終わり切った無の空間の誕生です。」
「さらっと言うワー。」
「必要なんですもの、しょうがない。神なるものに手を届かせるには、無茶の一つや二つできなければお話になりません。」
「神なるモノ、デスカ。」
「そうそう♪」

男が笑うと、笑い声に合わせてモザイク模様の首のあたりが細かく揺れた。

「僕はあいつが大嫌いでね。仕事抜きで殺そうと思ったのはあいつだけですよ。」
「ウソバッカリ。」
「ホントホント。」

「知ってるンだから。パパから聞いたわよ、掃除屋は狂った殺人鬼だって。」
「酷いなあ、コベルニル様は。紳士の具現たる僕を捕まえて殺人鬼とは。」
「神サマ、嫌い?」
「いやあ、うーん……。一般的に言われるところの一神教の神には別に恨みはないんですけど、ね?」

モザイク男が懐――――のような場所――――からガム――――に見えるモノ――――を取り出し、口――――と思しき部位――――に放り込む。
むっちゃむっちゃという咀嚼の音が、どうやらその推察が正しいらしいと示してくれる。

「そうじゃないのがいるの?」
「いるんですよこれが。説明がとても難しいんですが、平たく言うと地球侵略精神体みたいな奴でして。」
「アララ。世界は滅亡の危機ダワ。」
「手下をあらかた片付けたので一先ず脅威は去りましたが、僕も僕の仲間も、そいつ自身には全く触ることができていない。せめて一矢報いなければ死ぬに死ねないのです。」
「死ぬに死ねないから不老不死にナッタと。アーアー、Force of Willはなんて偉大なのカシラ。」
「本当にねえ。おかげさまで僕はもう、自分でもどうやったら死ねるのかわからなくなってしまいました。」
「『神の思し召し』なのダワ。」
「ああ、なんて腹立たしいことでしょう♪まあそれでも。」

筧が手を振り出して大雑把に死霊の群れを前方に解き放つと、

「エエ、ソレデモ。」

パトリシアは火を噴いてそれを焼き尽くす。

「思い通りに死ねぬ身を賜るのは、確かに僕の業には適切です♪」
「そしてきっと、アホみたいな理由で死んじゃうのヨ。死んじゃいナよ。それとも、とっくに死んでるノ?」

筧が楽しげに微笑んだ顔が見えた気がしてパトリシアは目を向けたが、やはりそこにはモザイクに隠された顔があるばかりだった。 

以上……。」

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COLORLESS CRIMINAL

「排泄物未満!

こんばんは、鳩です……。

イラストが完成しました!
下記より完成原稿をご確認ください。
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完成原稿
●アトリエページ
http://tw5.jp/gallery/?id=128264

●直接リンク
http://tw5.jp/gallery/combine/128264

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●商品確認
作家:大島天水
商品:宿敵イラスト

●発注オプション
・大きな画像(横768×縦1024)

●発注文章
【宿敵名】
カラーレスクリミナル
【宿敵種族】
ドリームイーター
【宿敵性別】

【宿敵設定】
全身が荒いモザイクで覆われている。
自身の外見を生かし殺人、盗難、拉致などあらゆる犯罪に手を染めている。
モザイクがほとんど晴れていないながらケルベロスの宿敵たりうる強さを持つ。
【発注文】
黒髪長身のモンゴロイド。男性。20~30代に見える。
引き絞られつつも力強いアスリートのような筋骨。菩薩のような笑顔。
白い革靴、白いスラックスに白いシャツ、その上に白いマオカラーコートと白づくめ。
その衣装に真っ赤な返り血の花が咲いている……。

のはずなのですが、顔を含め全身が荒いモザイクで覆われているため、黒い短髪長身の白づくめである、ということぐらいしか判断ができません。

手にしたナイフからハンカチで血をぬぐっています。
ナイフとハンカチだけはモザイクに隠されておらずはっきりと見えます。
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それでは、今後ともTW5「ケルベロスブレイド」をよろしくお願い致します。
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これは『ケルベロスブレイド』のイラストです。使用権は鳩、著作権は大島天水、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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大島天水様、ありがとうございました……。
全身がモザイクで覆われていてよくわからない、というイラストレイターのプライドと存在意義に疑問を投げかけるチャレンジャブルな発注だったのですが、請け負っていただいて感謝しています。
モザイクは細かく、割と風貌がわかってしまいますね。

細っこい男性が得意なのかな、とか考えます。
骨太と発注してもよかったかもしれませんが、デヴ(DEVU)と解釈されていた可能性もあるのでそこは難しいところです。

以上……。

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お前のラストダンス

「狂い悶えろ!

こんばんは、鳩です……。

611392_e03793_totalbody 611392_e03793_totalbody_full

イラストが完成しました!
下記より完成原稿をご確認ください。
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完成原稿
●アトリエページ
http://tw5.jp/gallery/?id=122622

●直接リンク
http://tw5.jp/gallery/combine/122622

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●商品確認
作家:美火
商品:全身イラスト

●発注オプション
・大きな画像(横768×縦1024)

●発注文章
イメージ:格闘ゲームに出てくる女性キャラクター。セクシーで豊満で力強さがある姿
装備:右手に金色の籠手、左手に銀色の籠手。
右の金籠手は薄く肌を覆うような形状、左の銀籠手は対照的に大きく重く、また側面に斧のような大きな刃がついています。
服装:詳細はお任せいたします。参照画像からのアレンジでも新規でも。
イメージしているのは、前述のように格闘ゲームの女性キャラクター。
サキュバスということも加味して、極めて露出度の高い衣装を望みます。
極端な話、股間から肩までの胴体においては覆うものが少なければ少ないほどよいです。
おへそ。
ポーズ:中国拳法のように構えています。牽制・防御用の右手を前に出しつつ必殺の左を矢弓のように引き絞っています。足は大きく開き力強く地を踏んでいます。

その他:アピールポイントは腰、へそ、乳房、股間。
シリコンを入れているので乳房、臀部はいくら大きくしてもいいものとします。
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これは『ケルベロスブレイド』のイラストです。使用権は鳩、著作権は美火、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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美火様、ありがとうございました……。
踊り子めいておりますね。みちっとした臀部から太もも、そして足首へと収束するラインが美しい。
腰の括れ、そしてダイナマイトtits。肩が若干がっしりめでとても良いです。
スケスケの助の前布に長い後ろ布、透けて見える下着はギリギリ。
頭身が高くオリエンタルな色っぽさが出ています。
表情は指定すべきでしたね、完全に失念していました。痛恨。折角ならもっとわがままを言ってよかった。
服のデザインも鳩自身では到底思いつかない仕上がり。毛皮付きヒールも豪奢感あります。
左手の斧の刃がついた左籠手は初のビジュアル化でしたが、だいだいこんなイメージです。はい。

発注文に対しては満点の回答を頂けたと思います。本当にありがとうございました。

さて、反省すべきはですね。エロくない。下品さが足りない。綺麗の枠に収まってしまっている。
見てすぐに「うわっこれドスケベ!」となるイラストを目指しているのですが、なかなかその意を伝える発注文ができませぬ。いや、単に鳩のいやらしハードルが爆上げになってるだけかもしれませんが。
下品な発注文ってどう書けばいいんでしょうかね。今回のも相当下世話なはずなのですが、綺麗な作品がレスポンスされまして、鳩の心の汚さが際立ってしまいました。

下品さにもいろいろあるのですが、その中でも今どう発注すべきか悩んでいる描写がありまして。
股間部を覆う布から大陰唇、土手、恥骨?がはみ出ている描写が欲しいのです。ちょっとずらすとおまんこだぞ!っていう。そしてできれば、おまんこの形にくぼんでいてほしい。おまんこえくぼ発生しててほしい。なんだよおまんこえくぼって。
それを如何にこう、当たり障りなく文章で表現するかで悩んでおるのです。
今(2017年3月初頭)ならば、“けものフレンズ コウテイペンギン” でファンアートをググって出てくるような食い込み股間です。
それもキャミィやモリガン・アーンスランドのようなVフロントで!(参考:http://calamel.jp/go/item/1011090229
今この記事を書いていて初めてVフロントという言葉を知ったんですけど。

次回は金銭的な都合で3月中旬以降でないと発注ができないのですが、もう一発スケベを頼むか、既に案を固めている宿敵に振るか、悩みどころ。特にスケベはVフロントというアイディアが正に今出たところなので旬なんです。鳩にとって。
あとパトリシアってあんまり露出するキャラじゃないというか。今更ですけど。
サキュバスらしい格好はしますが、人間のエロキャラの服を着せていいのか、というか彼女の仕事や戦闘においてVフロントなんて着る機会があるのか、とか考えてしまうのです。
そういう設定との整合性などを一切ぶん投げてスケベな発注をするのだ!と自分に言い聞かせてはいるのですが。ががが。そのためにスケベボディのサキュバスにしたのですから。

スケベ以外の点では、もうちょっと左の籠手のディテールを凝りたい感じです。
ベースになるイメージをこのイラストで作っていただいたので、それに肉付けしていく形ですね。肘から先だけナインハルト・ズィーガーみたいなでっけえ銀の塊がいいですね。
いっそ「縛霊手に似ています」とか言ってしまってもいいかもしれません。紹介ページの担当もサキュバスですし。鳩からの授け物ですから、霊が縛られているという名前のニュアンスにも合致します。

イラストの感想から離れてしまったのでこの辺りにしておきます。
美火様。ステキなイラストをありがとうございました。

以上……。

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答えは認めたくないけれど

「純粋に人類社会文明の為に一刻も早く消えよと申し上げている。

こんばんは鳩です……。

……妄想ケルベロスブレイド……。

本日もこちらの方を借り上げまする……。もう少し、何とかしてみたく。

終わらない歪み

地獄は落ちる場所じゃなく、迷い込む場所だ。
迷い込むような道筋にどれほどの罪があるかは分からぬが。

東京郊外のラブホテル「ホテル53X」の煙突からかすかな煙が上る日は。鼻の奥を刺激臭が微かに突く日は。その地下室で、人が殺された日だ。
遺留品を引き渡した後、ホテルのオーナーであるパトリシア・バランは去る車を見送った後真っ直ぐに地下室に戻った。
体液を流し去った後の水滴がまだ残っている。もともとシャワー室として作られた部屋だから、気兼ねなく汚せる。
残っているのは薬品の匂い。血の匂い。それらも轟音を立てる換気扇がいずれ吸い消してくれるだろう。
パトリシアはポケットから煙草の箱を取り出すと、一本引き出してシガレットホルダーに刺し、魔力の炎で火をつけた。

「た、煙草、喫うんです、ね。」
「エエ。」

戸口に立っていたウィルマ・ゴールドクレストに、振り向きもせず応えた。

「ただの真似事だけどネ。」

そう言ってホルダーから煙草を抜き去ると、魔性の炎で焼き尽くして投げ捨てた。

「あ、わ、わたしは気にしません、けど。」
「これもただの真似事ヨ。」

別に意味なんかないワ。
パトリシアは立ち上がり、ウィルマの横を抜けて部屋を出て行く。

「あの。」

ウィルマの声に、振り向かない。
焼き捨てた煙草の煙は、長く尾を引いて排気口へと吸い込まれていった。

――――

「見て、ません、から。」

ホテルのバックヤードでパトリシアと二人きり、ウィルマは椅子に座っていた。

「フライドポテトでも食べる?」
「はい。」

立ち上がったパトリシアの背に声を返す。

「決定的な瞬間、は、見てません、から。わ、わたしは、証人になりえません。あの部屋でパティが何をしたか、は。大体察しはつくというか、実は、その、見るとめんどくさいな、と、思って、わ、わかってて寝たふりをしてたというか。いや、わかってはいないんです、よ?」
「イイワヨ。」

フライヤーに火を入れ、冷凍庫から業務用フライドポテトの袋を取り出す。

「あなたには前に教えたシ。ワタシの本当の仕事はヤクザだって。」

油を温めている間に大皿に紙を敷き、ケチャップと塩とうま味調味料を用意する。ケチャップは小鉢にあけ、塩とうま味調味料をフライヤーのそばにスタンバイさせる。

「は。はい。」
「通報とかシナイってとっくに信頼してるカラ。」
「ありがとう、ございます。はい。」
「……。」
「……。」

フライヤーの画面が適温をしめしたので、四角いテボに冷凍ポテトフライをザクザクと流し込んで油に沈めると音と湯気が湧いて出た。ポテトの香りを空気に吹き込み、そして換気扇へと消えていく。

「よ、よく作るんですか、料理。」
「ゼーンゼン。」
「お肉とかサラダ、とか、よく出してくれています、けど。」
「焼くだけ切るだけだしネエ。見栄えも考えない味付けもドレッシングやらクレイジーソルトやらにお任せのアレを料理と呼ぶのは抵抗あるワ。」
「そ、そんな料理未満だと自覚しているもの、を、わたしたちに出していた、と。いうことですか。」
「我ながらいい面の皮してると思うワ。これだって冷凍品だしネ。」

そう言ってテボを引き上げ油を切ると、ポテトを大皿にあけ、塩とうま味調味料を振りサービングスプーンを使ってまんべんなく和える。

「お待ちドオ。」

テーブルの真ん中にポテトの乗った大皿とケチャップの入った小皿、そしてガーリックの小瓶を置いて、食物を挟むようにウィルマの正面にパトリシアが座った。

「いただき、ます。」

パトリシアはいつの間にやらビールの小瓶を手にしていて、栓を親指で軽々と弾くと、豪快にラッパ飲みした。

「シラフでする話でもないしネ。」
「あ、あの。特に問題化するつもりは。」
「わかってるっテバ。暇そうだったからおもてなししただけ。イケナイ?」
「いえ。大丈夫です。はい。今日は、暇です。今日は。」
「何か言いたいことがありそうだったし。」
「……仕事、は。楽しいんですか?」

ウィルマの問いに、パトリシアが視線を返した。

「快楽もなく、憎しみも、怒りも、なく。殺すって。ちょっとその。想像できなくて。」
「前にもそういう話、したワヨネ。」
「ホテルの常連で腹割って話そうって、ありました、ね。」
「失敗したケド。」
「その時、は。答えを聞きそびれ、ました。」
「……。」

パトリシアは椅子に掛けてあった上着のポケットをまさぐった。
取り出したのは紙箱とシガーホルダーと携帯灰皿。

「吸っても?」
「ど、どうぞ。できればあちらを向いて、ください。」
「ドウモ。」

紙箱から煙草を一本取り出しホルダーに番え、指先から出した炎で火をつける。
ホルダーの吸い口をほんの軽く銜え、口の隙間の空気ごとゆっくりと吸いあげ、そして長く薄い煙を横を向いて吐き出した。

「快楽が伴うのは拷問のトキですネ。」

思い返してみれば、デスケド。
ポテトを一本口に入れ、飲み込んでから言葉を続ける。

「作業デスネ、ハッキリ言って。
拷問だって手順は決まってるシ。殺すのはモット単純デス。
多分、多分ネ、これはワタシが下請けだからだと思イマス。」
「下請け、です、か。」
「憎い相手ってワケデモナイし、好みの顔してるワケデモナイ。そりゃあ、拷問するトキはそれなりに宥めすかしたりシマスケド、それだってほとんどroutineデス。手順通りに言って聞かせて痛めつければ大抵のことはゲロってクレマスし、吐かなければ吐くまで放置なり見せしめにバラすなり。」
「な、るほど。」
「仕事は愛してるかもしれないケド、ターゲットは愛してナイってコトカナ♪」
「愛してるんです、か。仕事。」
「……。」

返事の代わりに、パトリシアは深く煙草を吸い込んだ。

「辛くなければ、煙草、吸ったりしないと思います。けど。パティは、普段は皆の前で煙草吸ったり、しません、し。」
「どんな仕事だって楽じゃナイモノ。」
「殺す、仕事。辛そうに、見えます。」
「誰もやりたがらないから仕事になるんデショ。」
「殺すの、向いてないんじゃないですか。パティ。」

エメラルドグリーンの瞳が、前髪に隠されたウィルマの瞳を睨んだ。

「このホテルのオーナーに、なれるほど、お金があって。それなのに、やりたくもない、下請け。どうしてやってるんですか。」
「逆ヨ、逆。順序が逆ナノ。
汚れ仕事を請け負う代わりニ、金とコネと権利を持たされてるノ。」
「持ち逃げ、すればいいじゃないんです、か。
パティなら。人間のヤクザぐらい、楽勝、でしょう?」
「人間だけならネ。」
「ケルベロスのヤクザ、なんて。それこそ表立って動けるわけが、ないと。思います。バックれて、自由になれるんじゃ、ありません、か。そう、思うんです、けど。」
「ワタシは今ダッテ自由にやってるワ。」
「どこが、ですか?」

ウィルマの荒れた茶色い髪の奥に、漆黒の瞳がちらつく。パトリシアはそれをのぞき込む。深淵のようなその闇を。

「わたしたち、を。もてなすほどのお金が、あって。料理……と、パティは認めませんでしたけど、わたしたち、に出せるぐらいには凝る余裕が、あって。
それなのに、や、やりたくもない仕事を、しなければいけない、のは。しっくりこない、というか。」
「だからそれは因果が逆なんだッテ。」
「少なくとも、自由ではありません、よね。」

煙草の先端から煙が直上へと延びる。
パトリシアの指先は動かない。

「したくないことを、させられてる。」
「あなたはそうじゃないってイウノ。」
「今はパティの、話です。」
「一般論の話デショウ?やりたくないコトをしなきゃいけないトキは誰にだってあるってイウ。」
「パティはそれが。不自然過ぎる。」
「……アァン?」
「だ、だって。脅されてるんだか何だか知りません、けど。人を拷問、して、殺して。それが単に『やりたくないこと』なんて。そんなのおかしい、じゃ、ないですか。」

ポテトを一本ずつつまんでは食べる、を4回ほど繰り返した後、ウィルマは言葉を続けた。

「凄くやりたくないこと、か。好きでやってるか。そういうこと、じゃないんですか?そういうものじゃないんですか?人殺しって。
パティだって、凄くやりたくない、からこそ、そうやっていつも吸わない煙草を吸って。」
「『煙草如きで済んじまう程度のこと』なのヨ、ウィルマ。」

パトリシアはホルダーから煙草を外すと、携帯灰皿に押しつけ消してしまいこんだ。

「ワタシが殺しに向いてるかドウカ。ワタシにも正直わからないワ。でもワタシはそれをずっとやってキタ。その延長でデウスエクスも躊躇いなく殺せる。
いや……敵(デウスエクス)を躊躇いなく殺せるようにする為に、里はワタシに人殺しをさせ続けたのカモ。それで今こうしてまだ仕事ができてるってことは。結果論だけど、ワタシは殺しに向いているのダワ、きっと。」

ケチャップを滴るほどつけて、ポテトを口に運ぶ。

「あなただってデウスエクスは躊躇いなくぶっ殺せちゃうデショ?
……アー、イヤ、言い方が悪カッタデース。
『人殺しとデウスエクス殺しを切り分けられる』んデショ?アナタは。
ワタシは切り分けられないノ。
人もデウスエクスも、等しく『ただの他人』。だから殺せる。デウスエクスを殺すときはワタシが望んで依頼に入ったときダケド、人を殺すのは誰かから依頼されたとき。
煙草吸いたくなるほど人殺しが憂鬱ナノハ、押し付けられた仕事だからヨ。」
「じゃ、じゃあ、自由ではない、んです、ね。やっぱり。」
「シガラミがあるのダワ、ワタシにも。
で、そこから逃れたいとは思わないくらいニハ、そのシガラミがワタシには……。
……アー、長くなるケド。聞く?」
「ぜ、是非。」
「結果論で言えバ、いいことも悪いことも全部天秤にかけた上で、ワタシは『人殺しを選べる奴なんだ』ってコト。」

そう、そうなのだ。
そうでなければ。
そう生まれそう育ったのでなければ。
今の自分はあり得ない。
様々な選択肢からここに至る道を選んだ。それ以外を選ぶ自分がそこには居なかった。たらればを何度重ねても、今ここにいる自分は変わらない。

地獄は迷い込む場所ではなく、望んで行く場所だ。

「そうなるに至るにはイロイロあったのヨー。酔っ払いの繰り言、聞いてもらうワヨ。」

『望まされたのだ』、としても。

 

以上……。」

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Contortion

「ぐえ。

こんばんは、鳩です……。

598806_e03793_totalbody 598806_e03793_totalbody_full

イラストが完成しました!
下記より完成原稿をご確認ください。
===================
完成原稿
●アトリエページ
http://tw5.jp/gallery/?id=115581

●直接リンク
http://tw5.jp/gallery/combine/115581

===================
●商品確認
作家:猫背
商品:全身イラスト

●発注オプション
・大きな画像(横768×縦1024)
・暴走

●発注文章
暴走状態です。
イメージは「異次元の存在が無理やり出てきた」。
数多の触手、無機物、金属の結晶、水や風やプラズマなどの流体、暗闇とその中に光る無数の目、格子状の構造などが絡み合って、なんとかパトリシア・バランだったような形を織り上げているような状態です。
大きく開けた口と眼窩は虚ろで底なしのようです。

右腕には金色の籠手、左腕には銀色の籠手を装備していますが、指先や関節部から触手やエネルギーがはみ出ています。

エルドラージを強く意識しております。
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これは『ケルベロスブレイド』のイラストです。使用権は鳩、著作権は猫背、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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猫背様、ありがとうございました……。
エルドラージにしたかったんですよ。はい。
こりゃいつもの発注ミスでありましたね。エルドラージでありさえすればいいと思ったのですが、見返すとやはり大雑把すぎる発注でした。申し訳ありません。
間違いなく発注通りのものを頂いております。うーん。そうか。そうですね……。
ありがとうございました……。

以上……。

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カテゴリー: ケルベロスブレイド | 1件のコメント