神の力

「気体になって消え失せろ。

こんばんは鳩です……。

……妄想ケルベロスブレイド……。

スクリーン破り

 粒子と粒子の間の遍く虚無に神はおわすと聞いた。
神は観測できないものであり、観測できない全てのものは神である。
ある時代には災厄が神の仕業と呼ばれ、恵みは神の御業と伝えられた。
あるいは出会いが神の御心とされ、不幸は神の試練とされた。

 今は。

「あなたには憎しみがありますか?」

 目の前の、動くモザイク模様が最も身近な神の顕現である。
 パトリシア・バランの前に立つこの不定形は、背の高い東洋人男性に見えた。白いシャツの上に白いコート、白いスラックスに白い靴。その全身が荒いモザイクで隠されている。
 それが、口と思われる部位をチカチカとさせながら話しかけてくる。

「どうなんです?パラン。」
「……特には、ゴザイマセン。」

片言交じりの日本語で応じる。この男----恐らくは男----は、パトリシアの所属する忍者の里の外部顧問として忍術の師範を務めている。パトリシアの師匠のさらに師匠、里長を里長たるまでに鍛え上げた人物であり、この忍者団の技術系統では最上位にあたる。

「あなたは直情径行だから、そうなのかもしれませんね。」

モザイクが小首を傾げた----ように見えた。

「憎しみとは、理屈が作り出すものですから。」

ワタシは理屈が通じない女と言いたいの?という言葉を言いかけて飲み込む。事実その通りだからだ。理屈ではわかっても敢えて感情に従って生きてきた。

「晴らせない怒りや悲しみを感じた時、人の脳はどうにかしてこれを解消しようと手段を探ります。そして、原因を排除すればよいと思いつく。
元を断てばこの不快は消え去る。
そうした思考回路は、人に特有なものです。
人は、理解するという爽快感や解放感を強く本能に刻んでいる生き物だ。だから憎む。理不尽を理解し、分析しようと試み、そして、原因を排除したいと思う。思うことから逃れられない。」

パトリシアが眉を顰める。

「ホントに?動物だってカタキを憎むンジャナイの?」
「多少はね。だがそれは怒りの衝動の範疇です。人ほど長くは持続しない。悲しみを思い出し怒りを思い出し、その度に憎悪を凝り固めていくのは動物では不可能です。それに、動物はそのような衝動をその場で発散してしまえる。だが人には住まいがあり生活があり法律がある。手当たり次第に物をぶっ壊したり仇のもとに駆け込んでぶっ殺したりは出来ない。ため込むほかない。」
「フーン?」

パトリシアは興味なさげにミュールのつま先で地面をつついた。

「そのために宗教の教えがあったり、我々のようなものに仕事があったりするわけですなあ。
宗教は憎むな許せといい、我々は憎しみの代理人として報復を実行する。
どっちも心安らかにする以上の意味はありません。」
「それが一番大事なんじゃナイノ。」
「流石直情径行。あなたはやはり僕らの跡継ぎにはなれませんね。」

モザイクに包まれた顔が朗らかに笑ったような気がした。

「あなたには憎しみがない。僕らの系譜とは異なる軸に生きている。」
「誉め言葉と受け取ってオキマス。」
「憎まないという点では、あなたは神に近いのかもしれません。」
「ワタシが?」
「本来、神に憎しみはありませんから。」
「……ソウナノ?」
「神の怒りに持続性はありません。
しかし、人の怒りは持続する。人は先延ばしにする生き物なんです。とりあえず今を生きなければいけないし、先延ばしにし続けていればいずれ自分の寿命が尽きる。負債が膨らんでも逃げ切れる。
神はそうはいかない。永遠に生きる限り、いつか必ず負債を支払う時が来る。先延ばしにして利子を膨らませるのは全く不合理です。
永遠を生きる者にとって、今と未来に区別はないのです。
だから神々は、定命の者の刹那的な行いを、その合理性を理解した上で軽蔑する。
実はそれは嫉妬です。死が救済となるのが疎ましく、羨ましい。」
「ワタシにだって憎い気持ちぐらいアリマス。」
「でも憎しみがなくたって生きていけるのでしょう?」

僕らはそれなしには、二本の足で立つことさえできない♪
歌うように軽やかに、モザイクは言葉を口にした。

「……師匠ハ、何が憎いノ?」
「世の中全て♪」
「ウワーオ。」

パトリシアが大仰に肩を竦めて見せる。応じてモザイクはケラケラと笑った。

「馬鹿らしいでしょう?でもそれが事実です。僕だけじゃない。僕から始まった眷属どもは皆、世界の在り方を憎んでいる。あーー、皆じゃあないな。でも少なくともあなたが師匠と呼んでいる里の連中は、なにがしかこの世の有り様そのものを憎んでいる奴らばかりですよ。
世界の在り方というか、世界を作った奴というか。」
「政治家トカ?」
「そういうのではありませんね。もっとこう……神のような。」
「ワーオ。」
「ふふ、説明が難しいんですよねえ、増してやあなたには僕らと同じような憎悪はない。
わかってもらえるように話をする自信がありません。」
「ワタシも神は憎いケド。あなたのヨウナ。」

上目遣いで睨む翡翠色の瞳は、モザイク顔の眼球らしき部分を捉えている。

「確かに、『ここでは』僕もまた永遠を生きるものではありますね。残念ながら神としては失格もいいところですが。不合理にも憎しみという負債を背負い続けていますから。」
「イインジャナイノ不合理デモ。神サマは不合理なものデース。」
「はははは、これは一本取られました♪」

神とは、理不尽に付けられる名である。時代とともに理合いに落とし込まれ、殺され続ける。
それでもなお、不合理を感じる人の心のある限り、神は変幻し不滅である。

以上……。」

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愛で救いたもう

「お前の親が可哀そうだ。

こんばんは鳩です……。

……妄想……。

誰が人間に敵うものか

​新たな天体が宇宙に刻まれるのを呆然と見ていた。月より二回りほど大きい光の円は実際のところ円柱形で、少し横からのぞき込むと地上から彼方まで伸びているのが分かる。

「たまには虫干しをしなければいけませんから♪技術も力も。」

丘・敬次郎が手首を捻るしぐさをすると、光の柱は細まり消え去った。丘は笑っていたが、表情に照れが混じっているのをパトリシア・バランは見逃さなかった。

「お見事な手際でゴザイマシタ。」
「ありがとうございます、が世辞は要りません。」

哀れにも光粒子へと分解されてしまった標的にパトリシアは多少の同情をした。だがほんの少しだ。マスター・オカの逆鱗をなでる言葉をそいつは口にしてしまった。望んで踏んだ地雷でなかったという点においては十分に理解する。

「ヒールをお願いできますか?」
「できなくはアリマセンが、これはガッツリ消滅させた方がいいのでは?」

ヒールグラビティによる物体の修復は、幻想が混じりこむ故に完全に元通りには出来ず証拠の隠滅には向かない。ビルの上半分が一夜で幻想建築に置き換わったなら、何かがあったことはすぐに知れる。

「それもそうですね。丸ごと整地してしまいましょう。」

丘を中心に風が渦巻き始めたのを見て、パトリシアは跳び退った。そのまま羽を広げて飛び、近くの建物の屋上に降りる。
丘の巻き起こす竜巻はしかし何の音も立てないままビルを風化させていく。そして液体気体となった成分を次々と宇宙へと放逐していく。
丘は流体支配のエキスパートだ。気圧を利用して物体を砕き液化し気化しプラズマ化させるなど朝飯前。それに伴う音響も気体操作で隠滅できる。先ほど発生した光の柱も、単にそれを高速で行ったに過ぎない。
丘の立つビルディングは音もなく崩れ去って塵となる。さらに細かく分解され、強制的に原子の結合を解かれ気体になる。体積の爆発的増加は上方へと偏向され、そしてその爆発音も外へは漏れることがない。
程なくしてビルは消滅し、更地だけが残った。

「じゃあ行きましょうか!」

パトリシアを振り返り丘が言う。

「ハアイ。」

返事をして、屋上から飛び降り翼で滑空して、丘の足元へ。

「オツカレサマデシタ。」

心にもない労いを口にしつつ、パトリシアは思い起こす。
アレさえ言わなければ、もっと尊厳の残存する死に方もできたろうに。

『お前も不死者ならわかるだろう。人間に配慮する必要などない。力で支配すればいい。我々には出来る。』
『人間同士ですら力を巡って争っていた。彼らに我々を非難する資格など、そもそもありはしない。』

「人間が暴力を忌避するのは、それがよくないことだと学んでいるからです。数千年の文化文明の歩みを経て、暴力が非合理だと答えを得て、今も平和を望んで歩み続けている。
お前にそれをどうこう言う権利があるのか。その『人間如き』が持つグラビティチェインを啜って生きて、人間の作ったインフラを利用して溶け込んで生きている癖に、敬意も持たないとは何事だ。僕と同じ悪党風情が真面目に生きている者を馬鹿にするな。謙虚さもなく自虐もしない奴が僕は嫌いだ。大嫌いだ。僕でさえ出来ていることを出来ない奴は僕以下だ。僕以下の奴などクズでしかない!クズ未満だ!!消えろ!!!」

劃して、丘が天球に穴を空けるに至る。
不死者『デウスエクス』は過剰なダメージを受けるとコギトエルゴスムと呼ばれる破壊不能の宝玉に姿を変えるが、あれほどの光の奔流に飲まれては最早復活の目は無いであろう。死ぬことも出来ず生きているとも言えない姿で宇宙を当て所もなく彷徨うほかはない。
そも、物語(シルバーレイン)を超えてこちら(ケルベロスブレイド)にやってきた丘・敬次郎が放った怒りが時空を超えないわけがあろうか。かのデウスエクスは他の物語の時空に叩き込まれ、『デウスエクスなどいない』世界に送り込まれたに違いない。彼のデウスエクスはコギトエルゴスムになるどころか存在することすら許されず消滅してしまったやもしれぬ。

「そちらこそ♪」

笑顔で丘が振り返る。いつも通りの憎たらしい顔。

「おかげで、ワタシの出番がなくなりマシタ。」

嫌味たらしく言ったつもりだが、忍者の出番など無い方がよろしいと軽く流され、パトリシアは肩を竦めた。

以上……。」

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拳では足りない

「苦しんで死ね。

こんばんは鳩です……。

……妄想ケルベロスブレイド……。

初めはみんなまがい物

​確かな手ごたえに痺れるような喜び。龍と化した丘・敬次郎を殴り飛ばしたばかりの左拳を突き出し、パトリシア・バランはとびかかる。力強く、しかし慎重に。師の思いもよらぬ反撃を食らわぬように。


敵性不死存在『デウスエクス』が地球に残した侵略の爪痕には、単なる荒廃では済まないものもある。『地球の傷』と呼ばれているそれは、残霊という病原体が蔓延る膿疱となり、地を深く穿つダンジョンとなる。
そうして出来たダンジョンにはケルベロスが多数派遣され、残霊とデウスエクスの駆除による傷の治癒が行われている。


パトリシアと丘が戦っている場所もまたそうしたダンジョンのひとつであった。
地球自身の治癒力の賜物なのか、『地球の傷』は多少の物理的な破損では揺らがない。誰がいつ入り込んでも同じ構造をしており、同じ場所に同じ残霊が現れ、過去の誰かが戦った痕跡は残っていない。
これは『地球の傷』が単なる物理的な場所ではなく、地球の精神的外傷の表象とでもいうべき現象であることを表しているのかもしれない。
ともかく、ここではどのように振る舞おうとそれを他人に知られることはない。
ならば修練にはうってつけだと、丘はパトリシアを連れ出してそこへ向かったのだ。

パトリシアが構える。右の金籠手を前に出し、手は軽く開いて指先を前に向ける。左の銀籠手は左頬の横に置く。
丘は特製のメスを袖から抜き出し、右手に持つ。両手を下げて足は肩幅に開いてただ直立。
三度呼吸をした後、パトリシアが踏み出す。互いに力量は熟知している。様子見など必要ない。どちらが『挑む』のかとなれば、当然パトリシアだ。
金籠手が間合いに入ると同時、メスが閃いた。
手首を狙った斬閃はしかし蛇のようにしなる金の右手に絡め捕られる。

「おっ。」

金の大蛇が跳ね上げた手から、メスが高く宙に飛ぶ。丘の驚く顔目掛け、引き絞った銀の左拳を放つ。空気の弾ける音。

「強くなりましたねぇ♪」

左掌が拳を防いでいた。弾かれた右手を丘はそのまま手刀に変えて振り下ろす。左拳を引き切断を回避。間合いの空ける為右アッパーを放つが丘の踏み込みが早い。突き上げるような貫き手がパトリシアの喉に深々と刺さった。

「……ッ!!」

声にならない苦悶を叫んでたたらを踏みながら下がるパトリシアに丘はたやすく追いつく。
右の鉄槌打ちは左の銀籠手でガード、続く左の鉤突きも右の金籠手で抑える。互いに両手がふさがる。足元に気配を察知したパトリシアは蹴りを警戒するが、下げた視線は黒い何かに薙ぎ打たれた。

「イタァッ!」

それは髪の房であった。二つ結びにした丘の黒髪が、首の捻りによって目潰しとなって打たれたのだ。

「昔、僕がやられた手です♪」

両手をふさいだ上で脚の僅かな動きによるフェイント。意識を下に向けさせて放たれた奇襲はこの上ない威力を発揮した。
パトリシアがステップバックするも、盲目の後退と刮目の前進では比較にならない。股間への蹴り。丘のブーツの脛が恥部に深々と食い込む。尻に引っ掛けた蹴り足で痛みにうつむくパトリシアをひきつけ、つんのめった顔面を順突きで貫く。
首は限界まで後ろに倒れ、背が傾く。それでも足りず、吹き飛ぶ首に引きずられるようにパトリシアの体が跳んだ。背中を地に擦り、転がり。やがて俯せに倒れ、止まる。
丘は残心の姿勢を崩さず、その様を見つめていた。

「随分優しいジャナイ……。」

伏したままの顔から震える声が聞こえる。

「本当に強くなりましたね♪」

その称賛は恐らく本心だろう。ダウンした相手に油断なく残心を構えていたのがその証左だ。
しかし本心であればこそ、それは彼女を心から見くびっているとも言える。
褒めるということは、褒める余裕がある程度の相手でしかないという意味でもある。
残心こそすれダウンしたパトリシアに追い打ちをかけてはない。
そもそも股間蹴りからのコンビネーションが只の拳ということ自体、殺す気ではない、本気ではないということを示していた。
手合わせなのだからそれが当然ではあるのだが、朦朧としているパトリシアにそのようなことを勘案する理性は無い。
散々殺し合いを仕込んでおいて、強くなったと褒めておいて、必中の機会に放たれたのは只の拳。魔法でも斬撃でもない。打たれたのは顔面。首でも心臓でもない。いっそまだまだ弱いと罵ってくれたなら。何より褒められる程度の弱さでしかない自分が、それを納得できるほど力の差のある自分のことが、腹立たしくて堪らない!
銀の拳を地に振り下ろす。

「!」

丘が身体を流体化させ警戒する。打ち下ろされた拳を中心に地が割れた。亀裂は壁面を伝い天井を走り、ダンジョンを丸ごと引き裂く。裂け目から白い光が一斉に吹き出し、霧となって漂う丘の身を刺した。
崩れ落ちた瓦礫の上にパトリシアが立つ。徐に。先ほど大地を叩いた銀の籠手からは、黒い液体と白い光が染み出し溢れている。
プラズマと気体の混合物となった丘が、大気に放電音を鳴らしながら彼女の眼を見据えた。

「頼りますか。それに。」

丘の声には少なからぬ不満の色が混じっていた。

「イケない?」

返事をするパトリシアは酷薄な笑みを浮かべている。口からは白煙が吹き出し、彼女の体内を何かが熱しているのがわかった。

「御屋形様の銀籠手……まだあなたが使うには早い。」
「ハッ!!」

差し出した銀の掌から、光の槍と闇の触手が奔り出した。丘は風と雷の塊となり飛び回るが、それでも尚避けられない。その身を雷霆と化して心臓を貫かんとする丘を、しかし銀籠手は受け止めた。

「やっと必死にナッテくれたワネ♪」
「使い方を教えたつもりはありませんよ。」
「あなたを倒せるならそれが正解ヨ、マスターオカ。」

受け止めたプラズマ流体に右の金籠手でアッパーを突き込む。だが手ごたえはなく、あえなく右手は感電して焼けた。

「それを使わずに勝てないようでは未熟の誹りは免れません。」
「負け惜シミ?」

丘の気圧の刃が届くより早く、銀掌に握った丘の体へ直接光を打ち込んだ。丘は身を削られつつも頭部への雷撃を置き土産に掌握から逃れる。

「あなたの身が持たない。」

悲しげな丘の声が木霊する。
銀籠手から湧き出す白と黒はパトリシア自身の身も侵している。既に左腕は肩までが黒白のうねりに染まり、全身は魔力のオーバードーズで霞んでいる。
銀籠手に溶かし込まれた『御屋形様』の一部が、この世をこの世ならざるものへと置き換えていく。パトリシアそのものが、あるはずのない夢幻に変わっていく。神域へと消し去っていく。

「あなたが言ったノヨ、不可能を塗り替えろッテ。そういう魔法が必要だッテ。」

脈打つような声で、パトリシアが言う。
神や悪魔を目で見ることは出来ない。もしそんなものが見えたとしたらそれは幻だ。幻覚だ。
神魔は幻の中にしかいない。現実ではない場所にしか。
この世ならざる者に届くためには、幻に溶けていくのは必然。

「その籠手前提の戦い方はお勧めしません。決して。
 何故なら、あなたの強さに上限が設けられてしまう。その籠手があなたの最上の攻撃である限り、その籠手以上の強さには決してなれない。それでは僕を倒すことはできない。」
「それがドウシタ?」

パトリシアの瞳が爛々と輝き、そして底知れない暗黒へと変わってゆく。角が伸び、皮膚が変色し、服が溶け落ちる。『違う存在』になる代わりに、霞みゆく姿ははっきりとしたものになった。

「今のワタシにはコレを使うのが最上の攻撃デス。コレで足りなくなったなら捨てればイイ。
 マスターオカ、稽古をつけてくれるワヨネ?」

光と闇が編み込まれ、巨大な銀の腕の形を為す。振り下ろされる巨神の拳に、丘はプラズマの刃を振り抜いた。

「正解です♪」

不肖の弟子の成長を確認し、丘も流体の龍へと姿を変えた。
ようこそ神域へ。未熟者。
ダンジョンは最早形もない。『地球の傷』は残霊を根絶され、強制的に治癒された。
後は彼らの激突そのものが新たな傷とならないよう、祈るばかり。

以上……。」

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正しくあることの代えがたい安心感

「お前に由来する物質やエネルギーを保持し続けなければならない物理法則がかわいそうだ。

こんばんは鳩です……。

……妄想ケルベロスブレイド……。

楽しいお仕事

「いいんじゃないですか。正義の味方のふりで。」

丘・敬次郎は意外にも朗らかな笑みで弟子を肯定した。
パトリシア・バラン・瀬田は目を見開いて彼の顔を見返した。

「それがあなたの望みならば♪」

浮かび上がった湯気が、師匠の笑顔をまるで美しいものであるかのように演出したので、パトリシアは手にした湯呑みを急いで口に運んだ。
日本に来てから早数年、グリーンティーの風味にもおいしさを感じられるようになってきた。

「ソウ、ですか。」
「そうですとも。」

パトリシアは視線を落とし、丘は中庭に顔を向ける。

「僕の弟子が言っていました。悪党は生き様で、正義の味方は仕事だって。
生意気なことを言いやがってと初めは思いましたが、自分を思い返すと笑えるほどその通りなんです。」

パトリシアが顔を向けると、丘は自分の茶を一口啜っていた。

「どれだけ女の子をさらっても、バラしても、捨てても。
僕は『ゴーストを退治する能力者』でしかなかった。
あなたの知る悪党としての丘・敬次郎はどこにも認められなかった。」

もう一口、湯呑に口づける。湯気がたなびいて丘の顔を撫ぜた。遠くを眺める瞳は白い煙の中に揺らいで朧気に見える。

「僕は、正義の味方でありたいなんて望んでない。
でも、正義の味方でない能力者なんてありえなかったんです。
僕は大御神が許可しない限り死ねない。しかし、生きているともとても言えない。
……あなたは?」

細い目が、パトリシアを射すくめる。
眉間に寄せられた皺はしかし、不満や不服というよりも単に疲れと老いが刻んだようにパトリシアには見えた。

「ワタシもそうデス。
ワタシのジョブは、きっとGodには認められないデショウ。
でも、ワタシは生きている。人を殺している。ケルベロスであることに関わりなく、ワタシは悪党デス。
その弟子のヒト?の言う通り、ワタシの生き様は悪党デス。正義の味方は、結果的にそうであるというダケ。
でも、正義のために両親の呵責なく敵を叩き潰すのハ、とても楽しい。」

クスクスと丘が笑った。

「僕もあなたのように単純であれたならよかったのに♪」
「バカにしましたネ?そういうのワカルンですからネ、マスターオカ。」
「ええバカにしましたともバカだと思いましたよバーカバーカ♪」
「ぶっ飛ばすワヨお師匠サマ、何の意味もないケド。」
「ええ、どうぞおやりなさい、誰も認めてはくれませんけど。」

我戦うゆえに我あり。

戦うとは、勝利を求めることではない。
戦うとは、敗北を覚悟することではない。
戦うとは、抗うということだ。
戦うとは、ただではすまさないということだ。

たとえ誰も見ていなくとも。たとえ如何なる歴史に刻まれることがなくとも。
誰かが見ろよ。どこかに残れ。
そう、祈る。

「あなたはあなたの望む『普通』じゃない。だが、取り立てて目立つところもない凡人だ。」

声が聞こえる。
だが戦うのだ。無為と戦うのだ。
他愛もない喧嘩でも。それが戦いであるならば、祈りが宿る。
どうか誰かが見ていますように。永遠に爪痕が残りますように。

お前が。お前が。こっちを見ろ。
パトリシアが銀の籠手で放った左フックを、丘はたやすく受け止めた。

 

以上……。」

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Fireball

「お前がいるこの現実が夢であればよいのに。

こんばんは鳩です……。

……妄想ケルベロスブレイド……。

暴力の投与量

スポーツにおいて、もしもドーピングが許されたなら。
世界トップの領域では、薬物を使うことがスタート地点になるだろう。
短期的に人間の性能を向上させる薬物は、例外なく人体に深刻なダメージを与える。
一つの種目を極める為に不健康を受け入れなければならない、そんなものを最早スポーツと呼べるものか。
如何なる競技も出来うる限り怪我をしないようルールや服装の整備が続けられているというのに、選手当人が望んで破滅に向かうのでは全くお話にならない。
それを許したなら、すべてのスポーツは文字通り命を捧げられる狂人だけが闊歩する世界になるだろう。
薬物を使い、命を縮め。それを良しとする者だけの世界。それはおよそ人間社会に存在を許してはいけない地獄だ。
因って、スポーツにおいて薬物は禁止されなければならない。
​ ​
翻るに。
挑む物がスポーツでないのならどうだろうか?
怪我を避ける努力など全く望まれていないのなら?
……この世に存在することを許されてなどいないのなら?
如何なることも禁じられる故はあるまい。

パトリシア・バラン・瀬田は走っていた。
前に進んだ端から地面が崩れて落ちてゆく。振り向き確かめた訳ではないがそうに違いない。奈落に落ちないように必死に前へ。
走り続けなければならない。さもなくば足場は崩れそのままオシマイ。
疲労を感じたら、魔術で以て回復する。
腿を上げることも出来なくなったなら、念動力で無理やり釣り上げる。
やがて精神力も使い切りどうにもならなくなって、ばたりと倒れる。
そこでパトリシアのロードワークは終わる。

異能者である彼女が有り余る身体能力を使い尽くすにはこんな方法しかない。
パトリシアは飢えていた。培った力を放出する機会に。
思い切り殴りたい。蹴りたい。締め上げたい。魔力を叩きつけたい。
そんな無法が許される訳もなく、パトリシアはただ走っていた。
倒れるほど走っても、異能の肉体は程なく回復する。
立ち上がり息を整えると、足につけていたウェイトを腕のそれに足し、シャドーを開始する。
目の前にいるのは敵。
避け切れぬ攻撃を放つ強敵であり、全力の攻撃を当てても揺らがぬ難敵。
頭を振り、ステップを踏む。防御が甘いと思った箇所に的確に当ててくる。鋭さの足りない攻撃は容易に躱される。
逃げようとすれば背中を刺され殺される。確かめた訳ではないがそうに違いない。今この場で殺さなければいけない相手だ。
全力で振りぬく。殺すつもりの拳を。壊すつもりの蹴りを。締め技は……実力差のせいで決まらない、らしい。
やがて腕も上がらなくなり、脚も縺れ息が乱れると、敵の攻撃が顔を捉え腹を打ち、たまらずノックダウン。
そこでパトリシアのシャドーは終わる。

疲労の果ての気絶に近い浅い眠りの中、神は姿を現す。それは高層ビルほどもある巨体。上半分は格子状の立体、下半分は縮れ伸びるおびただしい量の触手で構成された異界の王。
青く赤く黒く白く、見ることのできない波長の光を放つ。入り組んだ頭部から聞くことのできない音を立てる。ありとあらゆる放射線を放ち、空間を捩じり書き換え玉座に腰掛ける。
わかるのだ、これは夢だから。どういう設定のものなのかわかる。見えなくても聞こえなくても『そうだ』とわかる。
それなのに、その神が何者なのかは一向にわからない。どこから来た何者なのか、何度夢に見てもわからない。わからないという設定なのか、そうではないのかもわからない。
夢に理由を求めるのは空しいが。
パトリシアはそれを見上げ、そして駆け出す。足元が崩れ落ちるから。戦う。命を狙う強敵だから。
そして、敗北し、さらなる奈落へと落ちる。
​​
パトリシアのような異能者には、相応の仕事がある。
彼女らは『ケルベロス』と呼ばれる。地球外敵性不死存在『デウスエクス』を絶命させることのできる唯一の存在。
デウスエクスとは基本的に和平はできない。殺害するしかない。
殺害してもいい。殺害しなければいけない。
数少ない、全力を振るってもいい機会。そうしなければ殺されてしまう難敵。

パトリシアは笑う。
言い訳がすべて用意されている。

火の玉のように駆け出す。地面は崩れなどしない。
烈火のごとく叩きつける。拳は空を切りなどしない。

人間社会が我々に求めることは唯一つ、不死を殺滅する暴力だけ。
地獄の番犬であること以外何も期待されていない。

挑むのは人類に仇為す怪物。
怪我を避けるなど望むべくもない戦闘。
この世のどこにも歓迎されない『殺し合い』という地獄。
如何なることも、如何なることも。禁じられる故は無い。

以上……。」

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この世に知性のある限り

「液体になって死ね。

こんばんは鳩です……。

……妄想ケルベロスブレイド……。

投獄宝物庫2

アーティファクトの紹介は続く。

「次もまた危険なものです。」

そう言って棚に置いてある透明な球体を手に取った。

「その割ニハ、ラフな保管デスネ。」

パトリシア・バランが疑問を呈すると、鳩目・ラプラース・あばたは振り向かず応えた。

「起動が難しいのです。」

鳩目は球を見つめていた。やがて瞳が様々な色に光り、明滅する。口からは極めて高い音声が途切れ途切れに発せられる。時折球体をくるくると回し、また眼を光らせ音波を発する。
そうする内に球体も少しずつ白く光りだし、鳩目の所作の度にその光を増していく。
倉庫全体が白い光に満たされたところで、鳩目は振り向き、パトリシアにそれを差し出した。

「どうぞ。」

眩しすぎて直視できない。

「どうぞと言われテモ……。」
「手を出してください。」

恐る恐る片手を差し出すと、瞼越しの光が強くなる。手のひらの内側にその球体が移動したのが分かった。

「知りたいことを念じてください。」

少し考えた後、パトリシアは一念を発する。

『鳩目・ラプラース・あばた。本名、未定義。種族、ダモクレス。年齢、未定義。
性別、女性。年齢、不明。但し生誕より27年時点で固定。異界より召喚された神の一柱。』

脳裏に差し込まれたイメージに、パトリシアは思わず目を見開いた。球体はそれを感知したのか光の量を大きく減らし、直視可能なレベルにまで落ち着いた。
鳩目が瞼を開けるのが見え、パトリシアは彼女が自分を見据えているのがわかった。

「『整理された混沌』と言います。
知りたいことを出来る限り誤解のない映像や感覚、言語で教えてくれる、辞書のようなものです。
誰にもわからないことはわからないままですが、誰かが知っていること、あるいは歴史上の事実においては正確な情報を教えてくれます。」
「ナルホド。」

それを以てしても「未定義」「不明」という感覚が流れ込んだ。目の前にいる鳩目・ラプラース・あばたは、さながら童話の中の登場人物のように、細部が存在しないアウトラインだけの存在なのだ。
納得しつつもさらなる困惑が沸き立った。目の前に確かにいるこの人物には、明確な過去が存在しない。ひとまずそれは意識の横に置き、聞くべきことを訊く。

「危険、というノハ?」
「他人の意識を余すところなく知り尽くせてしまいます。
『こいつは何を考えているのか?』と問えば、その感覚が雪崩れ込む。
何故そう考えるのか、そんな考えに行き着くような感じ方、その感じ方を形成した生まれつき、育ち、経験、記憶。あなたが納得するまでそれを教えてくれる。
経験を共有するとですね。
自分が誰だかわからなくなってしまう。」

鳩目のアイスブルーの目がちかちかと光った。

「自分の体験したものなのか、その球から伝わったものなのか。
思い出し方を間違えると、他人の記憶を自分の経験だと思い込み、自分の経験を他人の記憶だと思い込んでしまう。記憶が差し変わるということは、今の自分を形成する根本が変わるということです。少なくとも、わたしには許容できない危険性だ。」
「……ワカリマシタ。」

パトリシアが棚に手を向けると球体は自然に棚の定位置に戻り、光るのをやめた。

「起動が難しいってのハ、さっきチカチカしてた奴?」
「音波と電磁波の組み合わせなんです。
呪文に近い。」

鳩目はやはり振り向きもせず部屋の奥へと歩いていく。

「しかし呪文というのは飽くまで言葉です。音声。
つまり空気があり、かつヒトが発声可能、という極めて限定的な状況でしか機能しない。
外宇宙や異界由来のアーティファクトではヒトの可聴領域外の音がトリガーになることもあるし、そもそも音波に全く反応しないものもあります。
呪文程度で機能する魔法や魔具は、大したことがない。そんなものは求めていない。」
「いあいあはすたー。」
「外宇宙の神々は、群体として理解するのが適切でしょうね。
地球上に存在するものもいるし、宇宙をふらふら漂っているものもいる。
地球に顕現したものは地球人の有り様を知り、音声にも応える。
だからと言って、群体すべてと意思疎通ができるともコントロールできるとも思わないほうがいい。
彼らは宇宙全体のすべての虚無に存在し、繋がっている。
地球周辺の彼らをどうにかできたからと言って、他の全体に影響があるわけでない。」
「詳しいのネ。」
「宇宙の神にとって地球一つのことなど重要なはずがないと考えれば、当然の帰結です。」


部屋の奥には扉があった。鳩目が鍵を差し込み開くと、その先には星空が広がっていた。

「宇宙?」
「ラストフロアです。」

鳩目は闇の中へのしっかりと踏み出し歩いて行った。
足元の闇はきらきらと輝く粒が紛れており、その先には水晶の群れが生えている。
パトリシアも歩き出すと、足裏にじゃりじゃりとしたものを感じた。
これは踏み固められた水晶だ。星空に浮いた水晶の塊が、踏まれ割られ砂になり、結果、足場の部分だけが暗い色になっている。

「アーティファクトの紹介ハ?」
「そこの扉がそうです。」

倉庫と宇宙空間をつなぐ扉を指さして、悪びれもせずに言う。パトリシアはおめおめとついてきてしまったことを後悔し、溜息をついた。

「で、ここは何なんデスカ?」
「ラストフロアです。」
「帰りますネ。」
「すべての時の交わる場所。あらゆる宇宙の時間軸と直交かつ平行に重なる点です。
星のように見える光は、他の世界につながる穴。
……物語を読んだことはありますか?」
「そんな憐れむような目で見ないでクダサイ。童話も小説も読んでマスヨ。最近はコミックも。」
「そういう人々が『もしあの場面に自分がいたなら』と空想した結果がこれです。
『もしあの時あの場所に、超人的な力を持ち作品外部の知識を持った自分がいたならこうしたのに』。
そういう妄想が凝り固まり、この次元を必要としました。」
「イタい……。」
「同意します。しかし。」

鳩目が振り向いた。

「あらゆる物語のどんな時点にも繋がる場所。それは、『あの時ああであったなら』を叶えるために必要なものだ。
人はその人生の半分は妄想の中に過ごす。
インプットを反芻し、自分の思いを組み上げ汲み上げ捏ね上げている。
さもなくば眠って夢を見ている。
『ああであったなら』は単なる後悔ではない。『ああであったなら』と過去を思っているのは『今』だから。
だからここからはあらゆる時間に繋がるのです。『今すぐ』『去った過ち』をやり直すために。『今すぐ』『未だ来ない』エンディングを書き換えるために。」

では、今日はこの辺にしておきましょう。
鳩目が足場の斜め下へと手を差し伸べると、水晶の足場から斜め下の星まで続く階段が形成された。
どうぞと言われおずおずとパトリシアが階段の前に立つと鳩目がその尻を蹴飛ばし、パトリシアは階段を転がり落ち、芥子粒ほどの大きさになって星の光の中に落ちていった。

以上……。」

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お肉食べたい君

「千切れろ。

こんばんは、鳩です……。

イラストが完成しました!
下記より完成原稿をご確認ください。
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完成原稿
●アトリエページ
http://tw5.jp/gallery/?id=166107

●直接リンク
http://tw5.jp/gallery/combine/166107

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●商品確認
作家:和狸56
商品:全身イラスト

●発注オプション
・大きな画像(横768×縦1024)

●発注文章
全身に汗などかいているととてもよいです。

服装:参照画像の服装の上からミニスカートとショート丈のタンクトップを着ています。

ポーズ:スカートとタンクトップをめくって、それぞれ股間と胸を見せています。

装備品:右手に金の薄手のガントレット、左手に斧のような刃が付属した厚手の銀のガントレットをそれぞれ装備しています、が、外していても構いません。
腰から下げたり背負ったりで携帯、地面に置いている、そもそもなくても構いません。

表情:誘うような顔つき。「これが見たかったのでしょう?」と言いたげな顔をしています。

テーマ:もともと露出度が高い恰好をしているので、敢えて着衣した上でめくって見せることでよりfappableになるのではないかと彼女は思ったようです。

その他:御受け頂けた場合は、バストアップ+サイズアップオプションでリメイクをリクエストするつもりでおります。
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これは『ケルベロスブレイド』のイラストです。使用権は鳩、著作権は和狸56、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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和狸56様、ありがとうございました……。

とあるイラストを見て(和狸56様の作品ではありません)、スカートがめくれて中が見えるエロさをパトリシアにも備えたいと思いつきました。
いっそいつもの恰好の上からわざわざ服を被せてめくってみたらどうだろうということでこの度の発注内容となります。
ぱてぃはちちでかいな!
めくって見せすぎ感はありますが、股間のおまんこらしき窪みで全て相殺です。
こんな感想文公開していいのかな?PBWのイラスト納品に対しておまんこというワードが出てくるようなコメントはありなのか。

許そう。

許された。

スカートがもう、隠す気がまったくない超ミニなのヒドイですね。いい意味で酷い。誘っているのですから衣装にはコスプレ以外の意味などありません。だから隠す気がなくても構いませんしシンプルな無地で問題はありません。

ちちでかいのは勿論ですが、脚も長くございますね。
前傾姿勢で上半身が小さく見える分、伸ばした足が引き立ちます。

衣装はほぼ完全に参照画像通りでございます。そのように発注したから当然と言えば当然なのですが、ありがとうございますと申し上げるほかありません。
よく見るとポーズも少し似ている。
もしかして対比が出来るようにそうしてくださったのでしょうか?ゼロは俺に何も言ってはくれない。

汗もありがとうございますと申し上げるほかありません。
言葉もない。

ポーズはもうちょっとはっきり指定した方がよかったかも知れません。おへそが……。
というかイメージは正面に立って舌なめずりでもしながら股を肩幅より広く開いてスカートとシャツめくってるって感じだったのですがそれをリクエスト文章に書きましょう。わかりました。

ポーズ指定をすっぽかして後悔する羽目になってしまうのは何度目でしょうか……。

細かく指定したからと言って必ずしも100%満足するイラストが頂けるとは限りませんが、出来る努力を忘れていたというのはやはり悔やまれるところ。また、指定しなかったおかげで予想を上回る120%を叩き込んで来られる方もいらっしゃるのでアンビバレンツです。

文句が多くなってしまいました。いや、イラストに文句は全くありません。
fappableなどというワードが入ったリクエストをよくぞ受けてくれた、よくぞエロティックに仕上げてくれた!という気持ちでいっぱいです。投げ銭……今回は出来ないのか。

和狸56様、ありがとうございました。

以上……。

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煮固められた悪意

「粉末になって死ね。

こんばんは鳩です……。

……妄想ケルベロスブレイド……。

投獄宝物庫

ダクトテープを全身に巻かれミイラのような風体となったパトリシア・バランをバンの荷室に投げ込むと、鳩目・ラプラース・あばたは運転席に乗り込みエンジンをかけた。

「それ千切ったら放り出しますからね。」

くぐもったうめきを鳩目は肯定と解釈しアクセルを踏んだ。
高速道路を飛ばし、山道を越え、目的地にたどり着くまでの間に荷室はダクトテープのミイラがバタバタと転がった。
初めのうちは壁にぶつかる度に抗議のうめき声が沸いたが、壁にぶつかった回数が20を超えるころになると声が聞こえることはなくなった。
鳩目は必要とあらばスタントドライバー並みの荒々しい運転も辞さないので、パトリシアはこれが急ぎの運転でない事に感謝するべきであろう。

「もういいですよ。」

車から引きずり降ろされたパトリシアはその声に応えテープの拘束を引き裂いた。
出発時にやや南西に見えていた太陽はもうすっかり消え、夜の闇が辺りを包んでいた。

「ねえ、本当にコンナの必要ダッタ?ワタシ別に他人に言ったりシナイヨ?」
「あなたを信頼するかどうかはわたしが決めます。」

振り向きもせず、鳩目は歩き出した。足音からしてどうやら砂利交じりの土の地面であるらしい。方々から虫の声も聞こえ、森林の中の開けたスペースであろうことが知れた。
鳩目がガラス玉のような機械の目で地面を見つめながら歩く。そして突如座り込むと、ポケットから鍵を取り出し大地に差し込んだ。
がこん、と音がして、地面が扉の形に開く。
パトリシアがひゅうと口笛を吹いた。

「それもアーティファクトデスカ。」
「そうです。ついてきてください。」

鳩目が飛び込むと次いでパトリシアが降りる。
鳩目が何かのスイッチを操作すると室内の照明が点灯し、出入り口が閉じた。

「ワオ……。」

照らされた室内には棚とガラスケースが並んでいた。
陳列されている物は多種多様。
鉢、壺、銃、刀剣、手帳、奇妙な生命体の標本、大小の書物、etcetc….
それぞれにラベルシールが付随しており、名前と日付と数字の羅列が書かれている。

「これが全部アーティファクト……。」
「丘敬次郎に感謝してください。」
「あら呼ビ捨テ。」
「アレが師匠面して武器庫を見せてあげてくださいなどと言わなければ、あなたを連れてくることはありませんでした。」

鳩目が嘆息する。

「見てもいいのヨネ?」
「ある程度は。」

と言っても、見るだけではどういうものなのか全くわからない。
ここにある物は全て鳩目・ラプラース・あばたが『神』なるものを滅ぼす為に集め続けている神秘の器物である。
時間、空間、精神、肉体、そう言ったものを超越するためのものであるから、いずれも粒選りの危険物に違いない。試しに使ってみることなどとても恐ろしくてできはしない。そもそんなそぶりを見せた途端に鳩目に撃ち殺されてしまうだろうが。

「……紹介シテもらってモ?」
「承りました。」

パトリシアの躊躇の理由を十分に察していた鳩目はすんなりと要請に応じ、手近な小瓶を手に取った。

「これはエヴェレットと言います。
この液体はアルコールに溶ける性質があり、酒に混ぜて飲むと並行世界の自分自身を引き出すことが出来ます。」
「ピンとコナイ。」
「有り得た可能性を具現化するのです。
例えば、あの時もっと筋トレしていた自分、或いは何らかの勉強をしていた自分。そう言った、別の時間軸を辿った自分自身を憑依させることのできる秘薬です。」
「あの時ああだったナラ……ってコト?」
「あくまで可能性があるものに限られます。例えばわたしが飲んだとして、『理系でない鳩目あばた』を引き出すことは出来ないと考えられる。
わたしには数理と格闘する才能があり、勉強しか逃げ場のないいじめられっ子であった。
その結果として理数系に進学したが、そうではない自分というのは想像ができない。
いじめられない環境というのは考えられるが、理数に興味がない自分というのはおそらくあり得ない。」
「ちょっとちょっとちょっと待ってマスターハトメ。
……学校行ってたノ?」
「人を何だと思っているのですか。」
「いや、ダモクレスなんデショ?」
「そのあたりはまだ翻訳が上手くいっていないのです。」

鳩目・ラプラース・あばたはグラビティが使える異能者であり、間違いなくデウスエクスかケルベロスかのどちらかである。
そして、機械の体を持つ彼女は機械種族ダモクレスのデウスエクスか、その定命化体であるレプリカントのケルベロス二択になるわけだが、鳩目はコアブラスター・スパイラルアーム・マルチプルミサイルと言ったレプリカントケルベロスなら例外なく使用可能なグラビティが使えない。消去法でデウスエクス・ダモクレスということになる。
異星からの侵略者であるダモクレスに学生時代などあるはずがなく、それはつまり鳩目が嘘を吐いているか、彼女がダモクレスでもレプリカントでもない正体不明の何かであるかのどちらかということになる。

「まあコードネーム・ブランクということでいいでしょう。」
「そんな適当ナ……。」
「翻訳不能なのですから意訳するほかありません。それともあなたがわたしを定義してくれるのですか?」
「……次イキマショ次。」

原典からの翻訳行為には大なり小なり情報の欠落と歪曲が発生する。バロックナイトイクリプスを原点とする鳩目を十全に翻訳するには、まだこちらの世界の語彙は足りていない。

「これはあなた好みなのではないでしょうか。」
「露骨ネ……。」

次に鳩目が手に取ったのはディルドーである。
陰嚢まで再現された真っ黒な巨根だ。

「これは『ファリックタイラント』と言います。耳に当ててみてください。」
「ドレドレ。」

パトリシアは特に抵抗もなく鈴口を耳に差し込んだ。

――――レイプされたことをいちいち喚くな
――――出したい出したい出したい
――――陵辱が大好きなのに邪魔をしやがって
――――殺人以上に悪い罪だと言われるぜ
――――ポルノすらくだらねえ規制がかけられやがる
――――センズリのオカズに文句を言われても困るぜ
――――傷つく?苦痛?俺たちに迷惑をかけんな女々しいメスがよ

無数のざわめきが聞こえ、パトリシアは瞑目しながらそれを耳から遠ざけた。

「これを性器または肛門に挿入すると、全男性の正直な性欲を脳に流し込むことが出来ます。」
「精神の凌辱ダワ……。」
「丘曰く、『純粋で美しく野卑な欲望の結晶』だと。」
「ハァー……。」
「男性だから女性だからというのはポリティカルコレクトネスに反するのでわたしも大声では言いたくないのですが、これの声を聴いていると性差は生命としての絶対的差であると叫びたい気持ちになります。」
「こんなもんナンカ役に立つんデスカ?」
「集合無意識を集めるアンテナになるのです。これは空間を飛び越え精神にアクセスする力があると考えられる。その原理を知ることは有益です。」
「原理ワカリマシタ?」
「まだです。」
「がんばってクダサイ。」

パトリシアはディルドー型アーティファクトを元の場所に戻すと、ガラスケースに入れられた剣に目を向けた。

「気になりますか?」
「展示物っぽさガ凄いカラ。」

比較的手に取りやすい他のアーティファクトと異なり、触れることを拒絶するような置かれ方をしているそれは目を引いた。
その剣は30cmほどの刀身を持つ鍔の無い短剣で、構造的な継ぎ目が見られないにも関わらず持ち手と刀身の色が大きく異なっていた。
刃は黒く、持ち手は鈍色。古代の青銅剣にも似た形をしている。

「それは『弔い無しの剣』。或いは『悲哀殺し』と呼ばれています。
異界由来のアーティファクトで、別次元の文明を滅ぼしかけた大変危険なものです。」
「キケン。」
「この剣は見た目より殺傷能力が高く、刺されたものは安らかに絶命するそうです。
問題はその後でして。この剣で殺された者の死を悲しんだら、その人も死ぬのです。」

パトリシアが何とはなしにガラスケースに触れると、微かながら魔力による反発を感じた。ケース自体に負荷をはじき返す結界が内蔵されている。殴りつければ恐らく同じ力で跳ね返してくるだろう。鳩目がこの剣をどれほど危険視しているかが知れた。

「そして、悲しんだことによって呪い殺された者の死を悲しんだ者もまた死ぬ。
それを悲しんだ者もまた死ぬ。それが誰も悲しまなくなるまで続く。」
「それで人が大量に死んだト。」

異界の生命体を人と呼んでいいのかは別として。

「恐らくこの剣は別に大量殺戮を目的に作られた訳ではないのです。
本来は、殺害の罪悪感を極限まで軽減するための道具なんです。
『殺害しても悲しむ人がいないのならば気分は楽』。
それだけの剣なんですよ。」
「身勝手ダワー。」
「わたしたちはそれを身勝手と呼ぶ権利はありませんがね。」

鳩目が目を細めてパトリシアを見つめた。

「我々は人を殺して飯を食っているわけですから。」
「そりゃソーですケド。」
「寧ろ、この剣にはまだ人らしい心を感じます。殺しはしたいが恨まれたくはない、関係ない人まで悲しませたくない、という気持ちが。
望んで法を破り知らんぷりを決め込む我々よりナイーヴとも言えます。」
「ナイーヴ、ね。」

パトリシアが天井を仰ぐ。そんな気持ちを捨ててから、さてもう何年経つのか。

「我々の稼業は、法で禁止されている『から』、誰もやりたがらない『から』、お金になるんです。社会の安定とははっきり真逆にある。
そんなわたしたちが『出来るだけ殺害による心理的負担を軽くしたい』という気持ちを否定するのは筋違いです。」
「イヤなもんはイヤダワ。恨まれたくないダノ悲しませたくないダノ、ワタシに言わせれば未熟者もいいところナンダモノ。そんなこと考えるぐらいなら人殺しなんかスンナヨ。」
「嫌うのは自由です。心のありようはあなたも好きにすればいい。わたしだってこのアーティファクトを作った者や使った者についてはいい感情を抱いていません。
しかし、そういう『好き勝手に他人の心や命を踏みにじりたい』という気持ちがあってこそ我々の稼業が成り立つわけですし、我々はそれを望んでやっている。
我々はこの剣の作り手や使い手のような甘さというか、甘えを請け負うことでお金をもらっている。」
「責める立場にはナイ、と。」
「別に責めてもいいんですよ。それは自由です。
筋が通らない、というだけで。わたしは居心地が悪いので到底無理ですが。」

他人の甘えを嫌悪しながら、その甘えによって発生する金は嬉々として受け取る。
十分にあり得ることだ。それぞれの感情を違うペルソナが担当しているなら。
クライアントを嫌う自分と入金を喜ぶ自分が別々のペルソナならば、筋が通る必要はない。

「先ほどのファリックタイラントも、自由の産物です。
我ら女性がどれほど嫌おうとも男性は女性を制圧したがっている。全ての男性がそうとは言わないが、女性を蔑視する男性は相当数おり、それは事実だ。
『何故蔑視するのか』という問いが無意味なことも、アレの声を聴いたあなたならわかるでしょう。」

眉を顰め、パトリシアは鳩目の目を睨み返した。
聴くまでもなく知っていた。男がどれほど劣情に支配されやすいか。それを利用して感情エネルギーを食らい今日まで生きているのが、サキュバスたるパトリシアの有様なのだから。

見下す奴は見下す。
トートロジーでしかない命題だが、それが事実だ。
汚物を見て嫌な感情が喚起するように、女性が人間らしいことを主張すると腹が立つ人種がいる。相当数。理由を問うことに意味はない。彼らはそういう回路が脳にあり、自分でもどうすることもできないのだから。
女性に対して腹が立っても口にしない。それが彼らに出来る最大限の礼儀であって、そもそも腹を立てるな、見下すな、というのは無理な相談なのだ。

「洗脳するか、殺すかでもしない限り。」

女を見下すという価値観をこの世から消し去りでもしない限り。
価値観を消し去るには、結局のところ脳を弄るか生命ごと葬り去るかの二択しかない。

「続きを始めましょう。それとも。」

鳩目が、瞳の無い目でパトリシアを睥睨する。

「その剣で憎い男を突いてみますか?」

それもまた自由だ、それをわたしが阻止するのもまた。

脳裏に鳩目のテレパスが響いた。

 

以上……。」

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Carrion

「首を吊れ。

こんばんは、鳩です……。

イラストが完成しました!
下記より完成原稿をご確認ください。
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完成原稿
●アトリエページ
http://tw5.jp/gallery/?id=165096

●直接リンク
http://tw5.jp/i/tw5/origin/0379/728541_e03793_pinup_f.jpg

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●商品確認
作家:煤 すずみ
商品:今年の思い出2017 ピンナップ

●発注オプション
・大きな画像(横800×縦800)

●発注文章
【秋(9~12月)の旅団の思い出】
状況:旅団のキッチンにて、シュラスコを食べるパーティを開いています。
パトリシアが分厚い肉がいくつも刺さった串を手にして、訪問者をお招きしています。

服装:参照画像をベースに、
・右手は籠手無し。左手と同じ装飾。
・トップスは参照画像の代わりにヘソ出しタンクトップシャツ。
シャツには「 |-|073|_ 53>< 」と描かれています。
所謂leetspeakで旅団名「ホテル53X」を表しています。
・ボトムスは参照画像の代わりに超ミニスカート。見えそうではなく既に見えている、隠す気が感じられないというレベル。
・本人は見せるつもりで着ているので別に問題はありません。

胸について:遠慮なく、大きく描いてください。シャツがはちきれんほどに。

●メッセージ
『Night of Churrasco』
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これは『ケルベロスブレイド』のイラストです。使用権は鳩、著作権は煤 すずみ、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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煤 すずみ様、ありがとうございました……。

うちでやってることで他人を招けるとなるとこれしかないから、という感じです。
シャツはleetspeakで HOTELSEX を表していますが今のところ誰からも弄られていません。
表情はもうちょっと蠱惑的にしてもよかったかもねです。
部屋を暗くしたりとか色々、エロくする要素があったが頭から抜けておりましたな。
しかしからっと明るいパトリシアらしさは存分に出ております。
煤 すずみ様、ありがとうございました……。

2018年1月8日追記:
そうそう、大事なことを忘れておりました。
このイラストのリクエストは、2017年11月19日午前3:10頃に行いました。
受注は同日午前4:31でした。
ワーカホリックかよぉ!まあ土曜深夜=日曜早朝だったので普通に夜更かしされていたのだと思います。

以上……。

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誰もが価値のない物語の主人公

「人間ではないお前の人権は当然認められない。

こんばんは鳩です……。

……妄想ケルベロスブレイド……。

次の夜へ走れ

蔵の扉が開くと、血肉の匂いが溢れ出た。

「お待たせしました。」

血まみれの男が、少女の首を持ってぶら下げている。
少女の首から下は股間までまっすぐに切り開かれており、観音開きにされた胴体からは臓物がはみ出していた。
手足は付け根から指先まで余さず開かれており、皮の中の肉、肉の中の血管と神経が丹念に露出させられている。
顔面は剥がれた皮が垂れ下がり、こちらも筋肉が露出している。
そうして暴かれた真っ赤な中身の上に、べったりと濃く白い精液が付着していた。

「なかなかよかったですよ♪」

そう言って少女の亡骸を押し渡す丘・敬次郎の顔を、パトリシア・バランは見なかった。

「師匠は、まともなセックスできなさそうネ。」
「オナニーとセックスは別でしょう?」

丘は興味なさげに振り返り、中を掃除すべく蔵へと戻っていった。
パトリシアも背を向け、死骸の処分へと向かう。
蔵から蛇口をひねる音が聞こえ、入り口から血交じりの水が流れて出した。

処理の手順はいつも通り。
ドラム缶風呂で煮溶けるまで茹で、肉を剥がし、骨は焼いて灰にする。
パトリシアを「姐さん」と慕う里の下忍たちが作業を手伝ってくれる。
お礼に後で抱かれてやろうと思ったし、下忍たちもそれを楽しみにしていた。

何羽目の『ウサギ』なのかは覚えていない。
少なくとも人体の処分を単独で滞りなく行える程度の経験を積んだのは確かだ。
翌日、寝起きの枕元に丘が胡坐をかいていた。

「……ナァニ師匠?朝から稽古デスカ?」
「昨晩はお疲れ様でした。」
「オカゲ様で。」

嫌味たらしく欠伸をして見せる。
昨夜の作業は深夜にまで及んだ。パトリシアが床に就いたのは日が変わってさらに丑三つ時を過ぎてからだ。

「実は、今日もお願いしたくて。」
「正気デスカァ……?」
「お願いしますよ、昨日のはなかなか良かったが、思ったより早く死んでしまったんです。」
「続けてやると足が付くって言ったのは師匠じゃないノ……。」
「狩場を変えます。」

丘の顔は真剣だ。パトリシアの稽古をつけている時のようなニヤニヤ笑いは鳴りを潜めている。

「……お盛んネ、とでも言えばいいのカシラ。」
「どうせすぐに出て行っちゃうんでしょう?今のうちに頼んでおきませんと。」
「処分ぐらいワタシじゃなくたってイイでしょう?」
「ええ、嫌がらせです。」
「マジカヨうすうすわかってたケド。」

パトリシアは嘆息して上半身を起こす。
どうせ師匠は言っても聞かない。暴力での脅しあいでは猶更敵いっこない。

「普段人間大好きトカ言ってる癖にやってること滅茶苦茶なのダワ。」
「人間は好きですよ。大好きです。
インフラ作ってくれたのは人間です。僕がここにこうしていられるのも、人間のおかげ。
でも一人一人はどうでもいい。」
「勝手な言い分ダワ。」
「本音ですもの、そりゃ勝手ですよ。
僕は好きにしたいんだ。好きなものを好きなように愛したい。」
「愛した結果があの様?」
「愛した結果があの様です。……おやおや文句がおありの用だ。」

丘が眉を上げておどけるとパトリシアは寝癖頭を掻きむしった。

「ええアリマスワヨそりゃネ。
女の子一人バラさなきゃオナニーもデキネーなんてド変態もいいとこデス。
後始末をこっちに押し付けるし。ガキの死骸なんてホント見たくナイのに、今はもう慣れ切っちゃったし慣れたっていうこと自体もいやダ。
どうしてナノ、ワタシに関わらせナイデヨ、もっと別のオナニーの方法探してヨ。」
「何をしようと僕の自由です。」
「自由には責任が伴うノヨ!」
「伴いません。」

パトリシアの目が見開かれた。彼女の脳は聞き取った言葉を理解できず思考を停止した。

「あなたは、僕に、僕の自由の責任をとらせることが出来ません。
僕も責任なんか取りたくありません。
ですから自由に責任は伴いません。」
「ソンナノ、ただの自分勝手ジャナイ!」
「自分勝手以外に自由のありようはあるのですか?
あなたが僕の自由に責任を取らせたいならそうすればいい。自由だ。
僕がそれに抵抗するのも自由です。」
「アナタは、」
「僕は僕の趣味だけで女の子を愛している時、とても自由を感じます。」

返す言葉が見当たらなかった。人倫に反するとか犯罪だからとか、そんな言葉が口から出そうになるのを押しとどめた。
目の前の男は、とっくに人間であることをやめたのだ。
ヒト科ヒト属ヒト出身ではあるが、人と人の間に生きる『人間』ではない。
丘は、ただのヒトと『人間』を厳密に峻別していたし、自分が『人間』ではないということについては折に触れ何度も主張していた。

「あなただってそうでしょう、パティ。」
「ワタシは別に犯罪なんかしなくても満足できマス。それから、パティと呼ばナイデ。」
「その満足って、それが犯罪であるかどうか、いちいち気にしてます?」
「気にするまでもなく、合法なコトしかしてマセン!」
「忍者の手先の癖にどの口が言うのだか。あなたは今まで殺した人数を覚えていますか?」
「それは仕事だモノ、あなたの趣味とは違いマス。」
「仕事なら違法行為も辞さないが趣味では法を守るのですか!随分と窮屈な生き方してますね!」
「大きなお世話デース。ワタシが何を趣味にしていようと自由デショ、ソレコソ。」
「それはその通り。で、そのご趣味とは何ですか?」
「ドライブとか、いい男とデートとか、ご飯食べたり、トレーニング……は趣味じゃないカナ。」
「……あなたをこの里に引き入れたのは御屋形様の判断ミスなのかなあ?
そんな健全なのが仕事出来る場所じゃないはずですが。」
「仕事とプライベートは別のペルソナデス。師匠だって仕事中に女の子解剖したりしないデショ。」
「別のペルソナでも根っこは同じだ。あなたが忍者をやれているのは、ブラジルでのバックボーンがあるからです。あなたは喜んで違法行為を行える下地がある。望んで人倫を踏みにじる心根がある。『いけないことだから』が妨げにならない行動力と衝動をお持ちだ。間違いなく。」
「勝手に想像しててクダサイ。」

そう言うパトリシアはサンパウロ市のファヴェーラを思い浮かべていた。夜、真っ暗な中緑色の瞳を光らせ、標的を探していた時のことを。
パパに『よくやったね』と言ってもらうために、ナイフを片手に歩いて。
迫って。
遂行して。
晒した。

何の呵責もなかった。愉悦もなかった。
ワタシはそれが出来る。出来てしまう。
それが当たり前ではないと知識として知ったのは10代の頃で、心から思い知ったのは20歳を過ぎてからだ。

「今日は一緒に行きましょう。夕方、また声をかけます。」

丘は立ち上がり、出て行った。
パトリシアは返事もせずうつむいていたが、上体を倒し、また寝入った。

—-

​「行きましょう。」

運転席の窓から身を乗り出す。
パトリシアは頷いて助手席に乗り込むと、バンは走り出した。
夕焼け。逆光。
バンの背は黄昏の中に揺れて溶けていった。

 

以上……。」

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