お前のラストダンス

「狂い悶えろ!

こんばんは、鳩です……。

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イラストが完成しました!
下記より完成原稿をご確認ください。
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完成原稿
●アトリエページ
http://tw5.jp/gallery/?id=122622

●直接リンク
http://tw5.jp/gallery/combine/122622

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●商品確認
作家:美火
商品:全身イラスト

●発注オプション
・大きな画像(横768×縦1024)

●発注文章
イメージ:格闘ゲームに出てくる女性キャラクター。セクシーで豊満で力強さがある姿
装備:右手に金色の籠手、左手に銀色の籠手。
右の金籠手は薄く肌を覆うような形状、左の銀籠手は対照的に大きく重く、また側面に斧のような大きな刃がついています。
服装:詳細はお任せいたします。参照画像からのアレンジでも新規でも。
イメージしているのは、前述のように格闘ゲームの女性キャラクター。
サキュバスということも加味して、極めて露出度の高い衣装を望みます。
極端な話、股間から肩までの胴体においては覆うものが少なければ少ないほどよいです。
おへそ。
ポーズ:中国拳法のように構えています。牽制・防御用の右手を前に出しつつ必殺の左を矢弓のように引き絞っています。足は大きく開き力強く地を踏んでいます。

その他:アピールポイントは腰、へそ、乳房、股間。
シリコンを入れているので乳房、臀部はいくら大きくしてもいいものとします。
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これは『ケルベロスブレイド』のイラストです。使用権は鳩、著作権は美火、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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美火様、ありがとうございました……。
踊り子めいておりますね。みちっとした臀部から太もも、そして足首へと収束するラインが美しい。
腰の括れ、そしてダイナマイトtits。肩が若干がっしりめでとても良いです。
スケスケの助の前布に長い後ろ布、透けて見える下着はギリギリ。
頭身が高くオリエンタルな色っぽさが出ています。
表情は指定すべきでしたね、完全に失念していました。痛恨。折角ならもっとわがままを言ってよかった。
服のデザインも鳩自身では到底思いつかない仕上がり。毛皮付きヒールも豪奢感あります。
左手の斧の刃がついた左籠手は初のビジュアル化でしたが、だいだいこんなイメージです。はい。

発注文に対しては満点の回答を頂けたと思います。本当にありがとうございました。

さて、反省すべきはですね。エロくない。下品さが足りない。綺麗の枠に収まってしまっている。
見てすぐに「うわっこれドスケベ!」となるイラストを目指しているのですが、なかなかその意を伝える発注文ができませぬ。いや、単に鳩のいやらしハードルが爆上げになってるだけかもしれませんが。
下品な発注文ってどう書けばいいんでしょうかね。今回のも相当下世話なはずなのですが、綺麗な作品がレスポンスされまして、鳩の心の汚さが際立ってしまいました。

下品さにもいろいろあるのですが、その中でも今どう発注すべきか悩んでいる描写がありまして。
股間部を覆う布から大陰唇、土手、恥骨?がはみ出ている描写が欲しいのです。ちょっとずらすとおまんこだぞ!っていう。そしてできれば、おまんこの形にくぼんでいてほしい。おまんこえくぼ発生しててほしい。なんだよおまんこえくぼって。
それを如何にこう、当たり障りなく文章で表現するかで悩んでおるのです。
今(2017年3月初頭)ならば、“けものフレンズ コウテイペンギン” でファンアートをググって出てくるような食い込み股間です。
それもキャミィやモリガン・アーンスランドのようなVフロントで!(参考:http://calamel.jp/go/item/1011090229
今この記事を書いていて初めてVフロントという言葉を知ったんですけど。

次回は金銭的な都合で3月中旬以降でないと発注ができないのですが、もう一発スケベを頼むか、既に案を固めている宿敵に振るか、悩みどころ。特にスケベはVフロントというアイディアが正に今出たところなので旬なんです。鳩にとって。
あとパトリシアってあんまり露出するキャラじゃないというか。今更ですけど。
サキュバスらしい格好はしますが、人間のエロキャラの服を着せていいのか、というか彼女の仕事や戦闘においてVフロントなんて着る機会があるのか、とか考えてしまうのです。
そういう設定との整合性などを一切ぶん投げてスケベな発注をするのだ!と自分に言い聞かせてはいるのですが。ががが。そのためにスケベボディのサキュバスにしたのですから。

スケベ以外の点では、もうちょっと左の籠手のディテールを凝りたい感じです。
ベースになるイメージをこのイラストで作っていただいたので、それに肉付けしていく形ですね。肘から先だけナインハルト・ズィーガーみたいなでっけえ銀の塊がいいですね。
いっそ「縛霊手に似ています」とか言ってしまってもいいかもしれません。紹介ページの担当もサキュバスですし。鳩からの授け物ですから、霊が縛られているという名前のニュアンスにも合致します。

イラストの感想から離れてしまったのでこの辺りにしておきます。
美火様。ステキなイラストをありがとうございました。

以上……。

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答えは認めたくないけれど

「純粋に人類社会文明の為に一刻も早く消えよと申し上げている。

こんばんは鳩です……。

……妄想ケルベロスブレイド……。

本日もこちらの方を借り上げまする……。もう少し、何とかしてみたく。

終わらない歪み

地獄は落ちる場所じゃなく、迷い込む場所だ。
迷い込むような道筋にどれほどの罪があるかは分からぬが。

東京郊外のラブホテル「ホテル53X」の煙突からかすかな煙が上る日は。鼻の奥を刺激臭が微かに突く日は。その地下室で、人が殺された日だ。
遺留品を引き渡した後、ホテルのオーナーであるパトリシア・バランは去る車を見送った後真っ直ぐに地下室に戻った。
体液を流し去った後の水滴がまだ残っている。もともとシャワー室として作られた部屋だから、気兼ねなく汚せる。
残っているのは薬品の匂い。血の匂い。それらも轟音を立てる換気扇がいずれ吸い消してくれるだろう。
パトリシアはポケットから煙草の箱を取り出すと、一本引き出してシガレットホルダーに刺し、魔力の炎で火をつけた。

「た、煙草、喫うんです、ね。」
「エエ。」

戸口に立っていたウィルマ・ゴールドクレストに、振り向きもせず応えた。

「ただの真似事だけどネ。」

そう言ってホルダーから煙草を抜き去ると、魔性の炎で焼き尽くして投げ捨てた。

「あ、わ、わたしは気にしません、けど。」
「これもただの真似事ヨ。」

別に意味なんかないワ。
パトリシアは立ち上がり、ウィルマの横を抜けて部屋を出て行く。

「あの。」

ウィルマの声に、振り向かない。
焼き捨てた煙草の煙は、長く尾を引いて排気口へと吸い込まれていった。

――――

「見て、ません、から。」

ホテルのバックヤードでパトリシアと二人きり、ウィルマは椅子に座っていた。

「フライドポテトでも食べる?」
「はい。」

立ち上がったパトリシアの背に声を返す。

「決定的な瞬間、は、見てません、から。わ、わたしは、証人になりえません。あの部屋でパティが何をしたか、は。大体察しはつくというか、実は、その、見るとめんどくさいな、と、思って、わ、わかってて寝たふりをしてたというか。いや、わかってはいないんです、よ?」
「イイワヨ。」

フライヤーに火を入れ、冷凍庫から業務用フライドポテトの袋を取り出す。

「あなたには前に教えたシ。ワタシの本当の仕事はヤクザだって。」

油を温めている間に大皿に紙を敷き、ケチャップと塩とうま味調味料を用意する。ケチャップは小鉢にあけ、塩とうま味調味料をフライヤーのそばにスタンバイさせる。

「は。はい。」
「通報とかシナイってとっくに信頼してるカラ。」
「ありがとう、ございます。はい。」
「……。」
「……。」

フライヤーの画面が適温をしめしたので、四角いテボに冷凍ポテトフライをザクザクと流し込んで油に沈めると音と湯気が湧いて出た。ポテトの香りを空気に吹き込み、そして換気扇へと消えていく。

「よ、よく作るんですか、料理。」
「ゼーンゼン。」
「お肉とかサラダ、とか、よく出してくれています、けど。」
「焼くだけ切るだけだしネエ。見栄えも考えない味付けもドレッシングやらクレイジーソルトやらにお任せのアレを料理と呼ぶのは抵抗あるワ。」
「そ、そんな料理未満だと自覚しているもの、を、わたしたちに出していた、と。いうことですか。」
「我ながらいい面の皮してると思うワ。これだって冷凍品だしネ。」

そう言ってテボを引き上げ油を切ると、ポテトを大皿にあけ、塩とうま味調味料を振りサービングスプーンを使ってまんべんなく和える。

「お待ちドオ。」

テーブルの真ん中にポテトの乗った大皿とケチャップの入った小皿、そしてガーリックの小瓶を置いて、食物を挟むようにウィルマの正面にパトリシアが座った。

「いただき、ます。」

パトリシアはいつの間にやらビールの小瓶を手にしていて、栓を親指で軽々と弾くと、豪快にラッパ飲みした。

「シラフでする話でもないしネ。」
「あ、あの。特に問題化するつもりは。」
「わかってるっテバ。暇そうだったからおもてなししただけ。イケナイ?」
「いえ。大丈夫です。はい。今日は、暇です。今日は。」
「何か言いたいことがありそうだったし。」
「……仕事、は。楽しいんですか?」

ウィルマの問いに、パトリシアが視線を返した。

「快楽もなく、憎しみも、怒りも、なく。殺すって。ちょっとその。想像できなくて。」
「前にもそういう話、したワヨネ。」
「ホテルの常連で腹割って話そうって、ありました、ね。」
「失敗したケド。」
「その時、は。答えを聞きそびれ、ました。」
「……。」

パトリシアは椅子に掛けてあった上着のポケットをまさぐった。
取り出したのは紙箱とシガーホルダーと携帯灰皿。

「吸っても?」
「ど、どうぞ。できればあちらを向いて、ください。」
「ドウモ。」

紙箱から煙草を一本取り出しホルダーに番え、指先から出した炎で火をつける。
ホルダーの吸い口をほんの軽く銜え、口の隙間の空気ごとゆっくりと吸いあげ、そして長く薄い煙を横を向いて吐き出した。

「快楽が伴うのは拷問のトキですネ。」

思い返してみれば、デスケド。
ポテトを一本口に入れ、飲み込んでから言葉を続ける。

「作業デスネ、ハッキリ言って。
拷問だって手順は決まってるシ。殺すのはモット単純デス。
多分、多分ネ、これはワタシが下請けだからだと思イマス。」
「下請け、です、か。」
「憎い相手ってワケデモナイし、好みの顔してるワケデモナイ。そりゃあ、拷問するトキはそれなりに宥めすかしたりシマスケド、それだってほとんどroutineデス。手順通りに言って聞かせて痛めつければ大抵のことはゲロってクレマスし、吐かなければ吐くまで放置なり見せしめにバラすなり。」
「な、るほど。」
「仕事は愛してるかもしれないケド、ターゲットは愛してナイってコトカナ♪」
「愛してるんです、か。仕事。」
「……。」

返事の代わりに、パトリシアは深く煙草を吸い込んだ。

「辛くなければ、煙草、吸ったりしないと思います。けど。パティは、普段は皆の前で煙草吸ったり、しません、し。」
「どんな仕事だって楽じゃナイモノ。」
「殺す、仕事。辛そうに、見えます。」
「誰もやりたがらないから仕事になるんデショ。」
「殺すの、向いてないんじゃないですか。パティ。」

エメラルドグリーンの瞳が、前髪に隠されたウィルマの瞳を睨んだ。

「このホテルのオーナーに、なれるほど、お金があって。それなのに、やりたくもない、下請け。どうしてやってるんですか。」
「逆ヨ、逆。順序が逆ナノ。
汚れ仕事を請け負う代わりニ、金とコネと権利を持たされてるノ。」
「持ち逃げ、すればいいじゃないんです、か。
パティなら。人間のヤクザぐらい、楽勝、でしょう?」
「人間だけならネ。」
「ケルベロスのヤクザ、なんて。それこそ表立って動けるわけが、ないと。思います。バックれて、自由になれるんじゃ、ありません、か。そう、思うんです、けど。」
「ワタシは今ダッテ自由にやってるワ。」
「どこが、ですか?」

ウィルマの荒れた茶色い髪の奥に、漆黒の瞳がちらつく。パトリシアはそれをのぞき込む。深淵のようなその闇を。

「わたしたち、を。もてなすほどのお金が、あって。料理……と、パティは認めませんでしたけど、わたしたち、に出せるぐらいには凝る余裕が、あって。
それなのに、や、やりたくもない仕事を、しなければいけない、のは。しっくりこない、というか。」
「だからそれは因果が逆なんだッテ。」
「少なくとも、自由ではありません、よね。」

煙草の先端から煙が直上へと延びる。
パトリシアの指先は動かない。

「したくないことを、させられてる。」
「あなたはそうじゃないってイウノ。」
「今はパティの、話です。」
「一般論の話デショウ?やりたくないコトをしなきゃいけないトキは誰にだってあるってイウ。」
「パティはそれが。不自然過ぎる。」
「……アァン?」
「だ、だって。脅されてるんだか何だか知りません、けど。人を拷問、して、殺して。それが単に『やりたくないこと』なんて。そんなのおかしい、じゃ、ないですか。」

ポテトを一本ずつつまんでは食べる、を4回ほど繰り返した後、ウィルマは言葉を続けた。

「凄くやりたくないこと、か。好きでやってるか。そういうこと、じゃないんですか?そういうものじゃないんですか?人殺しって。
パティだって、凄くやりたくない、からこそ、そうやっていつも吸わない煙草を吸って。」
「『煙草如きで済んじまう程度のこと』なのヨ、ウィルマ。」

パトリシアはホルダーから煙草を外すと、携帯灰皿に押しつけ消してしまいこんだ。

「ワタシが殺しに向いてるかドウカ。ワタシにも正直わからないワ。でもワタシはそれをずっとやってキタ。その延長でデウスエクスも躊躇いなく殺せる。
いや……敵(デウスエクス)を躊躇いなく殺せるようにする為に、里はワタシに人殺しをさせ続けたのカモ。それで今こうしてまだ仕事ができてるってことは。結果論だけど、ワタシは殺しに向いているのダワ、きっと。」

ケチャップを滴るほどつけて、ポテトを口に運ぶ。

「あなただってデウスエクスは躊躇いなくぶっ殺せちゃうデショ?
……アー、イヤ、言い方が悪カッタデース。
『人殺しとデウスエクス殺しを切り分けられる』んデショ?アナタは。
ワタシは切り分けられないノ。
人もデウスエクスも、等しく『ただの他人』。だから殺せる。デウスエクスを殺すときはワタシが望んで依頼に入ったときダケド、人を殺すのは誰かから依頼されたとき。
煙草吸いたくなるほど人殺しが憂鬱ナノハ、押し付けられた仕事だからヨ。」
「じゃ、じゃあ、自由ではない、んです、ね。やっぱり。」
「シガラミがあるのダワ、ワタシにも。
で、そこから逃れたいとは思わないくらいニハ、そのシガラミがワタシには……。
……アー、長くなるケド。聞く?」
「ぜ、是非。」
「結果論で言えバ、いいことも悪いことも全部天秤にかけた上で、ワタシは『人殺しを選べる奴なんだ』ってコト。」

そう、そうなのだ。
そうでなければ。
そう生まれそう育ったのでなければ。
今の自分はあり得ない。
様々な選択肢からここに至る道を選んだ。それ以外を選ぶ自分がそこには居なかった。たらればを何度重ねても、今ここにいる自分は変わらない。

地獄は迷い込む場所ではなく、望んで行く場所だ。

「そうなるに至るにはイロイロあったのヨー。酔っ払いの繰り言、聞いてもらうワヨ。」

『望まされたのだ』、としても。

 

以上……。」

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Contortion

「ぐえ。

こんばんは、鳩です……。

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イラストが完成しました!
下記より完成原稿をご確認ください。
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完成原稿
●アトリエページ
http://tw5.jp/gallery/?id=115581

●直接リンク
http://tw5.jp/gallery/combine/115581

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●商品確認
作家:猫背
商品:全身イラスト

●発注オプション
・大きな画像(横768×縦1024)
・暴走

●発注文章
暴走状態です。
イメージは「異次元の存在が無理やり出てきた」。
数多の触手、無機物、金属の結晶、水や風やプラズマなどの流体、暗闇とその中に光る無数の目、格子状の構造などが絡み合って、なんとかパトリシア・バランだったような形を織り上げているような状態です。
大きく開けた口と眼窩は虚ろで底なしのようです。

右腕には金色の籠手、左腕には銀色の籠手を装備していますが、指先や関節部から触手やエネルギーがはみ出ています。

エルドラージを強く意識しております。
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これは『ケルベロスブレイド』のイラストです。使用権は鳩、著作権は猫背、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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猫背様、ありがとうございました……。
エルドラージにしたかったんですよ。はい。
こりゃいつもの発注ミスでありましたね。エルドラージでありさえすればいいと思ったのですが、見返すとやはり大雑把すぎる発注でした。申し訳ありません。
間違いなく発注通りのものを頂いております。うーん。そうか。そうですね……。
ありがとうございました……。

以上……。

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ハンズLOFTニトリ

「知れば知るほどに夢は見られなくなる。物理に慈悲はない。

こんばんは鳩です……

……妄想ケルベロスブレイド……。

本日はこちらの方を借り上げまする……。

酩酊の夢幻
んぁ。
自分の出した声があまりに間抜けすぎて一気に目が覚めた。

「あの。い、鼾が煩かった。ので。」

ベッドの傍らに立つ茶髪が、パトリシア・バランを見下ろしながらおどおどと言った。

「……ショック!」

叫んでパトリシアは勢いよくと起き上がる。同時に胃痛と頭痛が襲ってきて背を丸めた。脳裏に昨夜の暴飲がよぎる。
ここホテル53Xの10人部屋に、今寝ているのはパトリシア・バランと茶髪の女、ウィルマ・ゴールドクレストの二人だけだった。一先ず、起きてからも他人に騒音を与える
ホテルと言ってもラブホテル、本来ならあるはずもない多人数部屋は、オーナーであるパトリシアが無理やりに作らせた、ケルベロス専用の雑魚寝兼多目的部屋である。

「イビキー、かいてましたカ。」
「歯ぎしりも。して、いました。」
「ショック!!」

パトリシアの背をさすりつつウィルマは追撃を加える。

「ゴ迷惑をおかけしまシタ。」
「マウスピース、が効くみたい、ですよ。い、鼾にも、歯ぎしりにも。」
「あー顎痛イ。飲み過ぎて寝ると大体こうなるんデスヨネェ。酔い覚ましに買いにいきマス。」

首をゴキゴキと回すパトリシアに、ウィルマが首を傾げる。

「悪酔い、ですか?ケルベロスなのに。」
「ア。」

パトリシアはウィルマの言葉に呆けた顔をすると、目を閉じて眉間にしわを寄せ手を中空にかざし、何やら集中するそぶりを見せた。そうしたまま5秒ほど停止した後、ふぅぅと長い息を吐き出す。

「アリガトウゴザイマス。」

パトリシアの顔からは、すっかり憂いが消えていた。
ケルベロス。それは無敵の生命体。
同種、あるいはデウスエクスと呼ばれる神性以外によっては決して傷つかず侵されない。
悪酔い如き、それを「取るに足らぬ毒」と意識して自身の超不死性をぶつければ瞬時に消え去るものなのだ。
それすらも忘れさせるのが酒の恐ろしいところではあるのだが。

「にしても鼾デスカー。」
「歯ぎしりも。」
「ショック。」
「行きましょう、か?一緒に。」
「エ?」
「マウスピース、買うの。に。」
「一緒ニ?」
「は、はい。」

しばし見つめあう。
ウィルマの頭髪は前髪も長く、その双眸を完全に覆い隠している。が、その先にある目線は確かにパトリシアの翡翠色の瞳と対峙している。わかる。ケルベロス特有の敏感な感覚故に。
或いは、ケルベロスとして戦った戦士の勘故に。

「……是非。」
「は、はい……!」

身支度してきますね、とそそくさと部屋を出ていくウィルマの背中をパトリシアは微笑みながら見送った。

「ああ、そうだワタシモ!」

手で髪を掻いて寝癖を確認しながら飛び起き、シャワールームへと飛び込んだ。

—-

「……思ったんダケド。」
「は、はい。」

百貨店内雑貨コーナー。
パトリシアとウィルマの眼前には、『いびき、歯ぎしり防止に!』と自信満々に書かれた箱が陳列されている。

「ケルベロスの咬筋力に耐えるマウピーが市販されてるワケがナイって気づくべきだったわヨネ。」
「す、すみません。」

彼女らケルベロスは常人とは一線を画す身体能力を持つ。
一般人向けマウスピースを使ったところで、一晩で粉々になるのは容易に想像できる。
容易に想像できるはずなのだが。
実際に店に来て商品を見るまで気づけないぐらいには、二人ともおでかけに浮かれていた。

「ショーガナイ、マウピーは医者に任せるとして、何か買うカー。」
「医者、ですか。」
「ケルベロス専門の整形外科がいてサ。そいつに訊いてミル。」
「な、なるほど。」

パトリシアは自分が豊胸・豊尻手術を受けていることを公言している。そのことに思い至り、ウィルマも合いの手を打った。
ケルベロスの肉体は神性も魔性も伴わない攻撃では傷をつけることができない。
よって、外科手術には神性を持つ医師、つまりはケルベロス自身でなければ実行できない。
彼女の美容整形もケルベロスの医師が受け持ったのだと思い至り、ウィルマは二つの意味で頷いたのだった。

「ケルベロス用の、マウスピース、ですか。テ、テンプレート、も、お願いできるかも、ですね。」
「あー。Good Ideaデスネー。」

ムシロそっちのがイイカモ。身体能力が30%もアップするなら下手なバフより効果あるワ。
応えたパトリシアの両手には、避妊具がにぎられていた。

「つ、使うんですか。」
「ワタシ?ノーノー。ホテルの備品ヨ。」
「なんだ。び、びっくりしました。」
「ナーニ?ヤいてるノ?」
「そういうわけでは、あ、ありませんが。」

どもり具合から見るにどうやら本心だとパトリシアは判断した。一年以上の付き合いともなれば、彼女のどもりが心理的なものか性癖的なものかは判断がつく。
つまらなそうな顔をして避妊具を棚に戻した後、パトリシアは懐から出した手帳に商品名をメモした。

「アリガトね、ウィルマ。」
「何のこと、ですか?」
「鼾と歯ぎしり。言われなきゃ気づかなかったワ。」
「お、お酒は。ほどほどにした方がいい、と。思います。」
「コトゴトクオオセノトオリデ。」

何しろ自分の神性すら忘れてしまうほどなのだ。飲ませ続ければデウスエクスでさえ殺しうるだろう。
酩酊は神ですらも逃れえぬ魔性の仕業だ。

「ウィルマはお酒呑めないんダッケ?」
「み、未成年、です。」
「法律はどうでもよくてサ。」
「吞んだことは、ありません。」

パトリシアが目を細めて、前髪に隠れたウィルマの瞳を探した。

「お酒はイイワヨ?」
「そ、そんなふうには、とても。思えませんが。」
「酔わなければ見えない景色がありマス。」
「見たくない、です。」
「イイエ。」

いずれ、見る日が来るワ。あなたがケルベロスであるならば。神性・魔性の体現者であるならば。
現実から切り離された真実を見る日が来る。

「き、来ません。」
「それは残念。」

ならばよし。ワタシの見る夢がワタシだけのものならば。
望んでいたぞと。
大盃に映る二人を、笑みと共に飲み干すは。

以上……。」

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2足す2は

「虫けらでもまだ可愛げがある。

こんばんは鳩です……

……妄想ケルベロスブレイド……。

鮮やかな迷妄

「ま、免許中伝と言ったところですかね。」

大分甘い判定ですけど、将来性に期待して♪
丘・敬次郎は声をかけたが、パトリシア・バラン・瀬田は土の上に四つん這いで息を整えるのに夢中になっていた。

「龍食み、正式名『無尽打・龍食み』は、死ぬまで打てば死ぬだろう、という理念が根本にあります。今あなたが僕にやったような、『できるだけ長くたたき続ける』というのは、実際には理念からは少し外れる。」

そういって丘はしゃがみこみ、パトリシアの額に自分の額を近づけた。
丘の長いツーテールが地に擦れ、些細な音を立てる。

「しかしながら、僕やあなたのような魔性神性の領域においては、『死ぬまで殴り続ければいつか死ぬ』というのは多くの場合徒労に終わります。少なくとも格上を殺す武器にはなりえない。」

耳元に吐息の温度を伝えるように、丘は囁く。

「何故なら、神魔の戦いにおいて格の違いは極めて絶大だからです。
ヒト同士の殴り合いなら、子供でも格闘技の世界チャンプを殺す目がある。
だが、我々の戦いにおいて、力の差というのはそんな甘っちょろいものではない。
羆対人間ならまだマシな方で、アメーバ一匹対ゾウの群れなんていう差すら茶飯事です。
何しろ種族そのものが違って当然の世界ですから。
アメーバが一生をかけてゾウを殴り続けたところで……
ねえ?」

丘の発する艶めかしい吐息は、パトリシアの官能を少なからず疼かせた。
こんなことに房中術など使わなくてもいいだろうに、と思うも、パトリシアにはまだ言葉を発するだけの余裕がない。

「だから、龍食みの『死ぬまで攻撃を続ければ殺せる』という理念は初めっから破綻している。
破綻した理念など教えてもしょうがないので、あなたには『反撃の暇を与えない連打』こそが深奥である、と嘘を吐いた訳ですが。しかしあながち嘘でもない、と。」

パトリシアが立ち上がる。褐色の肌が日に照らされて光った。丘はにんまりと笑い、その目を見据えながら自分も立ち上がった。

「辿り着けない真実など無意味ですから。より役に立つのなら嘘でもいい、嘘がいい。」
「……そうデスカ。」

荒い吐息のついでに吐き出すように。パトリシアは答えた。

「一先ず中伝、有難く頂きマス。」
「はい♪」

丘は土に汚れた膝をはたき、ついでにパトリシアの膝もはたき、どさくさ紛れに腿をぐっと掴んだ。その手首をパトリシアは握り返し、強くにらむ。
丘は視線を笑顔で返してパトリシアの手を軽々と振りほどいた。

「理念ごと破綻している奥義を何故教えたのか。
それは、概念の実現こそが我々の力の源だからです。
ああ……忍者の職務において、できないことに挑戦するのは下の下です。実現できるように計画を立て準備を整え、実行するときには九分九厘成功している。それが忍者の仕事というもの。
手品師や探偵とかもそうですね。
人の心の裏をかく職業においては本番など一連の仕事のほんの一場面に過ぎない。

しかしながら。」

丘が背を向けざまに手を振ると、青空はこの世ならぬ眩暈の如き虹色に変わった。明滅し流動し湧いて消えるマーブル模様は眼球を通して脳をかき混ぜんとしているようだ。

「アメーバの分際で、ゾウと戦わねばならない時は来るのです。
何しろアメーバですから、自分の都合通りにはゾウを動かせないこともある。というか大体そうです。
それでも死にたくはありませんし、なんとなれば今この場でぶち殺さなければいけない時もある。
そういう時に必要なのが、概念の実現という奴なのです。」

丘が振り返ると同時に、空は通常の青へと戻った。
パトリシアは拳を構えていたが、一度は飲み込んだ吐瀉物を異変が収まったことで力なく吐き直した。

「力の及ばぬ相手には『死ぬまで殺し続ける』など出来ない。
しかし、出来ないというただ一点を除けば、『死ぬまで殺し続ければ死ぬ』んです。
『殺せるまで殺し続ければ殺せる』。
自分がアメーバなら、アメーバでなくなればいい。自分もゾウになればいい。ゾウほど巨大なアメーバになればいい。
『殺せるまで殺し続ければ殺せる』という概念を実現可能な何かになればいい。
本当とか真実とか、そんなものは味方になってくれません。
嘘でもはったりでも、不可能を不可能のままにしている前提条件を塗り替えるモノだけが味方になってくれる。味方に引き入れなければいけない。
これは単なる精神論じゃないんですよ。そういう魔法が必要になる時が来る。そういう魔法でなければ太刀打ちできない相手が、実在する。」

真剣な丘の目を、真剣なパトリシアの目が見つめる。
パトリシアにはもうわかっている。
彼の言っていることは出鱈目ではないと。
先ほど丘が引き起こした異変も、これまで彼が数多の理不尽を実現してきたからこそできる芸当なのだと。
そして、そのような『嘘』がパトリシア自身の身を隙間なく埋め尽くしていることも。

「僕の師匠達は、そういう『嘘』の達人です。
それでありながら、どこまでも嘘を許せない人だった。」
「人(ヒト)……?」
「そう、人(ヒト)♪」

パトリシアの疑問に丘は我が意を得たりと満面の笑みを返した。

「あの人たちはねえ、どこまで人(ヒト)なんですよ。
どうしようもない人でなしですけど、人(ヒト)でしかありえないんです。
人間ってのは、大なり小なり誤魔化しの中で生きています。
嫌だけど我慢するとか、うっかり口をついて出た言葉に引っ張られるとか、相手を気遣うが故に自分の感覚を無視するとか。
世代を超えれば、殺された痛みさえも忘れられる。
酷い戦争をした相手とも、時間さえかければ笑顔で握手ができる。建前と分かっていても。
それどころか本心ならぬ建前こそが妥協の本質であり、妥協こそが組織を、ひいては国同士を繋ぐ絆となる。
それが人間の強さです。真実よりも現実を見て、実利の為に原理主義を排する。
都合の悪いことは忘れ、状況に合わせてペルソナを無自覚に切り替えそれでも同一性を維持できる。そんな欺瞞を欺瞞とすら認知しない。
それが人間の理性であり、本能であり、柔軟性であり、強さです。
……師匠達は、それが欠けている。」

欠けている、とは。

「人間と折り合いが付けられないんです。
『正しいことは正しい』。
……ああ、いや。『悪いことは悪い』。そんな理念に嘘を吐くことが出来ない。
だからこそ、彼らは人でなしなんです。
人には違いないが、人の間に生きる人間ではありえない。
狂人と呼ばれる種類の存在です。」

パトリシアは思い出す。
幼いころ、傘立ての傘を盗った。
そこに傘があったから。今にして思えば、無料で持って行ける展示物のように見えたからだろう、と理屈はつけられる。
今は悪いことをしたとは思うが、償うほどの気概はない。
或いは、同級生の悪口を流して傷つけたことがある。
本当に奴が学校から消えてしまえばいいのにと願い、それが正しいと信じた。
今はそれが愚かな拘りだとわかるが、謝りに行かねばならぬと急き立てられるほどの罪悪感はない。

「どうしようもない凡人……。」

パトリシアの口から漏れた言葉に、丘はまたにんまりと笑った。

「僕やあなたは、その点で決定的に師匠達と違うんですよ。
まあ傍から見たら狂気の度合いの違いでしかなくて、フツーの人から見たらどっちも狂った殺人鬼にしか見えないでしょうが。
僕らはフツーじゃないんで。僕らの立ち位置から見るしかない。
そうしたらやっぱりあの人たちは、段違いに狂っている。」
「……ソレデ?」

パトリシアは自分の声の意外なほどの冷たさに驚いた。
そもそも自分がフツーじゃないなんてことをワタシは『知ってはいるけど認めてない』し、上の連中がどの程度狂っているかなんて興味ないし関係ない。

奴らは『世界を作ったと嘯く神が許せない』と言っていた。すべての行動はそいつらをぶち殺すため、と。
その不可能を嘘にするために、様々なことを嘘で塗り替える方法を練り上げたのだ。

存在しないはずの場所に存在する。
耐えられないはずのダメージに耐える。
避けられないはずの老いを避ける。
そうして奴らは時間を超え空間を超え、肉体の頚木さえ乗り越えて不滅と無限を手に入れ続けた。
『殺せないはずのものを殺す』というただ一つの嘘に辿り着くために。

そんなことどうでもいい。

「ソレデ、ワタシは強くなれるノ?」

パトリシアの左手には、頑強な銀のガントレットが装備されている。
奴らの片割れから受け継いだ銀の腕。苛立ちと共に握りしめた拳は、粘膜に似た酷く生々しい感触だった。

「あの戦争のあのガス室デ。あの街デ。あの爆弾デ。何人死んだのカ。
皆嘘だって知っていながら信じテル。
フツーの人ダッテ。フツーの人だからコソ。人の死さえモ建前で置き換えルことがデキル。それがフツーの人間のフツーの感覚ヨ。
狂気と正気の違いは、『堂々と実行しちまえるかどうか』。それだけヨ。」
「そして、師匠達は『堂々と実行しちまえる』。」
「それをワタシたちとあいつらとの違いだって言うワケ?
あなたが言った通りフツーの人から見たら、ワタシもアナタもアナタの師匠連中もただの狂った殺人鬼ヨ。『実行しちまった』ンダカラ。
ワタシが強くなれるかどうかは狂気の度合いなんか関係ナイ。
その狂気に何を捧げたかヨ。
それで。何を捧げればいいワケ?どうすれば、何をどう思いこめバその奥義って奴は実現できるノ?
Not “WHAT” but “HOW”.
それだけ教えてヨ。」

丘はにんまりと笑った。
今やパトリシアの緑色の瞳は強い光を放ち、口腔は底の知れない暗黒の奈落になり、握った拳からは現実を書き換える虹色の光に揺れていた。
望みさえすれば、誰でもそこに至れる。

「それを教えたかった……♪」

どの真実を塗りつぶすべきかなど、誰もが知っている。
大事なのはそれを実現する魔法と狂気。
丘の唇が開き、蠱惑的な響きで禁じられた呪文を囁き始めた。

以上……。」

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BLACK BLACK GUM

すごく大きくて真っ黒なちんぽちんぽ

こんばんは、鳩です……。

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イラストが完成しました!
下記より完成原稿をご確認ください。
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完成原稿
●アトリエページ
http://tw5.jp/gallery/?id=111558

●直接リンク
http://tw5.jp/gallery/combine/111558

===================
●商品確認
作家:竹口 輪吉
商品:全身イラスト

●発注オプション
・大きな画像(横768×縦1024)

●発注文章
イメージ:街を歩く格好。目立つほどではないが、見る人が見れば「コールガールだな」と分かるようなエロさがあります。化粧濃いかも。
いろんな意味で肉体派です。

服装:黒い革のジャケットの下に黒いシャツ。黒のタイトスカート。
全体的に暗色の印象だが、体のラインが強調される衣装。
シャツもスカートも小さめで胸や腿の肉が露出されるように工夫されています。
丸いレンズのサングラス。革のハンドバッグ。

ポーズ:待ち合わせの人物を見つけたような場面。
片手でサングラスを持ち上げて、もう片方の手でハンドバッグを肘にかけつつ挨拶をするように上げています。
目を大きく開いたニコニコ笑顔。

参照画像との違い:髪の毛が長く腰ぐらいまであります。また肌は可能であればもう少し黒めでも構いません。

お任せ:服装に指定していない装飾、装備品はお任せします。
服装やポーズもおさまりが悪いようならどんどんアドリブしてもらって構いません。
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これは『ケルベロスブレイド』のイラストです。使用権は鳩、著作権は竹口輪吉、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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竹口輪吉様、ありがとうございました……。
トミーウォーカーでイラストをお見かけしたときに、「腕上げてるな!」と思い、ケルベロスカードの納品物でもえっちなねーちゃんを描いていらしたのでお願いしました。
モデルはなんかbrazil callgirlとかで検索してたら出てきたジャケット着た女性。今検索してみたけど出せねえ。
お尻を大きくお描きにならないのがちょっとだけ残念ですが、おっぱいは大盛なのでよしとしましょう。

さて、これ驚くべきは納期。
リクエストは12月16日1時17分。
リクエスト受理が18日17時46分。
納品完了が21日16時33分。
リクエスト受理から3日足らず。リクエストからでも僅か5日と15時間。
トミーウォーカー全体でみると、異例と言ってもいい筆の速さです。
勿論単に速いというだけならこれ以上を頂いたこともありますし、期間限定ながら短期間で恐るべき納品量、というバケモノもいますが、リクエストしてほどなく受理、さくっと納品というのは小気味よさを感じました。

イラストについてですが、なるほど確かにそのポーズだとおでこちゃんになりますね。よしよし。チョーカーや太もも飾りもさりげなくエロくていい感じ。前髪の処理はかなりざっくりしてますが、しっくりくるのでよし。惜しむらくは、角の色がカードの背景にちょっと溶けてしまっていることですが、落ち度というほどのことでもありますまい。
あとおっぱいを横じゃなくて縦に膨らませる方だったというのは貴重な知見です。単に横から圧迫されている様を描いたら自然とそうなっただけなのかもしれませんが。
パツパツおっぱいの表現としては、横に広げる、ロケットおっぱいにする、今回頂いたもののように斜め下にぶら下がるように縦に膨らませる、というパターンが見受けられます。
いや、特にそれがどうしたということではなく、おっぱいは縦横のふくらみパターンがあると語りたかっただけです。
よく見ますと、服や髪の質感の過不足のない描写に感心します。
描き過ぎず略し過ぎず。こうして無機物をさらりと描けるのはやはり技量ですよね。
無機物が苦手でいらっしゃる方は結構多くて、「人物は上手いんだけどなあ……」という作品を見たことも何度もあります。それを考えると、これは結構な技量と慣れが反映された衣服ということになりましょう。
ジャケット、シャツ、スカート。それぞれ質感が伝わりつつもクドくないいい塩梅になっています。
前歯、オデコ、笑顔、おっぱい、いろんなものが合わさって、なんだか目を離したくないイラスト。
いいものを頂きました。竹口輪吉様、ありがとうございました……。

以上……。

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Uncertainty Ultimatum

「人がいう所謂神はいない。いたら貴様のような汚物など存在を許さない。

こんばんは鳩です……

……妄想ケルベロスブレイド……。

不可到達性根本原理

パトリシア・バラン・瀬田は生まれた時から自分のことをサキュバスだと信じていたし、事実そうであったし、そのように振舞って来たし受け入れられてきた。だからその全てが嘘だったなんて信じたくないと思った。
けれど唐突に理解してしまったのだ。何故自分たちは戦いを通してしか己を表現できないのかを。わかってしまったなら、それ以前に戻ることなどできない。

竜牙兵に切り裂かれた肩が焼けるように痛む。
ただ一人で突入したダンジョン。
怪物どもの巣窟に単身飛び込んだのは、死にたかったからかもしれぬ。最近夢で見る得体のしれない自分を殺したかったからかもしれぬ。
身を翻して床を蹴る。剣を構える竜牙兵に拳を伸ばす。文字通りに腕が伸び、竜牙兵の肉の無い頭が破砕され砕けて落ちた。
最早ワタシは、人のような形をしている意味すらも無い。

師からの教えを頭の中で反芻していた。

――――ヒトの技術を学び、ヒトの技術を修練しなさい。
――――日本の。ブラジルの。アメリカの。中国の。インドの。アフリカの。欧州の。
――――あらゆる戦闘術を学び、身につけなさい。
――――その上でそれを忘れなさい。
――――我々は。お前たちは。ヒトではないのだから。

もう一体の竜牙兵にも拳を見舞う。空手の突きともボクシングのストレートにも似た、そのどちらでもない力を。

――――ヒトよりも頑丈でヒトよりも力強い。
――――そんな我々には、ヒトがヒトを倒す技術では足りないのです。
――――地に倒された程度では。体重をかけられた程度では。
――――関節をひねられた程度では。銃やナイフを使われた程度では。
――――我々には傷すらも入らない。

プロレスが好きだった。
忍者の技を仕込まれた。
中国とも日本ともつかぬ拳法を教えられた。
今パトリシアが使っている力は、そのどの道の先にも決して存在しないものだ。

――――そういったものを、我々は神性、あるいは魔性と呼びます。
――――ヒトの身では決して辿り着けない場所。
――――それこそが本質。

包囲を組む兵隊どもをまとめて蹴り薙ぐイメージ。
パトリシアがハイキックを振ると、1トンの重量を持ったものが10メートルの横幅を通り過ぎた。

――――スクリーン。
――――スクリーンをイメージしてごらんなさい。
――――厚さゼロのスクリーンに映し出された人形劇。
――――厚さがゼロですから、三次元においては質量を持ちません。
――――手を突き込めば容易く貫通する。
――――二次元の人形たちにとっては、突如何かが現れたように見える。
――――様々な方法で彼らはあなたの手を排除しようとするでしょう。
――――しかしあなたは何も感じない。何しろ質量がゼロですから。
――――厚さゼロのものどもがどれほど頑張っても、あなたの指先に傷すら入らない。
――――あなたはその抵抗を感じることすらもできない。
――――しかしながら、あなたが彼らに干渉することはできる。
――――突き込んだ手を、横に動かすだけで。

竜牙兵どもがまとめてひしゃげて滅んだ。重層の鎧ごと紙細工のようにあっけなく。

「……コレか。」

何かがわかった。
この世界がただのハリボテに見えた。

階下からドラゴンどもが押し寄せてくる。悠長に構え見下すはずのドラゴンたちが、今日は一言もなくブレスを吐き出す。仲間の炎に焼かれることも厭わず燃えるパトリシアを踏みつける。爪で切り裂き牙で砕く。駆り立てられるように急いで、焦って、めちゃくちゃにする。

「コレだ!」

前触れもなく空中に現れた巨大な触手がドラゴンどもをバラバラに引き裂いた。

――――この宇宙に生まれ、この宇宙に生きる者には決して辿り着けません。
――――我々は神の如き力を持っているが、
――――それは、結果だけならば神の出来ることは大抵出来る、というだけです。
――――あなたは少し違う。

そう、ワタシは少し違う。
巨大な力を持っているわけじゃない。
ワタシの中に眠る本当のワタシは、ここにいない。どこでもない、高次元にいる。
ワタシの体は、その端末に過ぎない。

――――我々は時に、個人として持ってはならないほど莫大なエネルギーを持つ。
――――あるいは、ある世界を書物のように読み進め戻し鑑賞する。
――――あなたは、そういうのとは少し違う。

それは時間そのもの。押しとどめることのできない時間の如き強大な力。
それは現そのもの。難解な現実のように秘され編まれた暴かれざる虚無。
それは運命そのもの。理不尽な運命のように苦悩に満ちた不可解な謎。

この世界にあらず。
それが答え。ほかの誰にも辿り着けず、ほかの誰にも証明されない。

「コンナ、モノが。」

知らないことは幸福だ。知らずにいる限り知ろうとすることができる。
理解してしまったら。何のために生まれ、何をして生きるか。わかってしまったら。
出来ることは二つだけだ。

使命に生涯を捧げるか、使命を否定することに生涯を捧げるか。

ともかく、本日。ダンジョンが一つ虚空と消えた。

 

以上……。」

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果てしない未知

「バカ!

こんばんは鳩です……

……妄想ケルベロスブレイド……。

定めを定める者ども
ブラジル生まれだからと言ってアマゾンに慣れているとは思わないで欲しい。湿度が纏わりついて汗が流れるし、ヒルどもは歯が立つ筈もないのに皮膚を這うのをやめない。猿が唸り、虫が鳴く。ウンザリだ。お前たちがワタシを傷つけることなどできないのに。ケルベロスという神性を持った肉体にお前たちは何もすることができないのに。
パトリシア・バラン・瀬田は深いため息をついて土の上に座り込んだ。湿った赤土がむき出しの尻を包む。

「まだデスカァー!?」

苛立ちの声は木々をかき分け遠くまで響き、そして消えた。
返事はない。行かなければならない。倒すべきボスの待つ深奥へと。

ケルベロスの体は病原菌程度では傷まない。だから飢えや渇きは全く心配必要ない。
それでも産毛に覆われた手のひらほどの蜘蛛を噛み砕くのは躊躇したし、飲み下そうと掬った川の水から鉄の匂いがした時には死すら覚悟した。
あり得ぬことを想定してしまうほどの不快感。つまるところケルベロスの唯一の弱点は精神であるということだ。
ケルベロスという「寿命のある神」は、地球上に出現してまだ50年ほどしか経っていない。十分な進化を経ておらず、また、そもそも並大抵のことで死ねぬため淘汰も進まない。
地球上の環境にまるで最適化ができてない、新しく不器用な神々。それがケルベロスという存在。過渡期はありとあらゆるものにあり、永遠の時を持たないのならば過渡に全人生を使い果すこともある。
最も、過渡期でない時、などというものが存在するのであれば、だが。
8日、パトリシアは歩いた。汗をかき、疲労し、休まらぬ。銃弾や火炎放射、核兵器さえものともせぬ無敵の神は、しかし消耗を避けることだけは出来ない。

「まだデスカァー。」

夜の森に空しい声が響く。
パトリシアは気温が高い日中を避けて日没から行動するようになっていた。
動くほどに消耗する昼はむしろ休息に充て、過ごしやすい夜に進軍する。
夜行性の獣に襲われようと傷つくことはないのだから。
視界は聊か不自由になるが、それでもケルベロスの超人的な五感があれば問題になるほどではない。
川に突き当たる。夜空は星で満ちていた。MilkyWayの名の通りに淡く光る星の連なり、その周りに散らばり光る星々。日本は愚か、このブラジルでも都市部では拝むことの叶わぬ景色。
人の光さえ届かぬ未開が。邪悪も法理もない未知がもたらす純粋な闇が。淡くにぎやかな空の銀幕を作り出す。
夜明けにはまだ遠い。星のシアターはあと何時間も続く。つまりは、身の回りを包む闇も同じだけ長く。
夜行性の獣は彼女を害すること敵わない。だが。
パトリシアには一つだけ。ただ一つだけ警戒しなければいけない相手がいた。
闇に潜み、闇を扱い、闇を見て、闇を演算し、闇を狩るもの。
彼女の師匠たちの一人、鳥越・九(いちじく)。
彼女に潜伏と諜報術を叩き込んだ、ある意味最も直接的に忍者としての技術を育んでくれた師だ。
稽古をつけてもらえと言われ挑んだアマゾン熱帯雨林であるが、未だにその足跡すらわからない。

「……いい加減にしないと帰っちゃいますヨ。」

半ば本気でボヤくも、特に反応はない。
逢えませんでした、で帰るわけにはいかないことを向こうも承知しているのだ。
ため息を一つ挟んで、今夜も川を背に座り込み目を閉じて精神を集中する。
葉の擦れる音で風向と風速を知る。虫の鳴き声が喧しいほどにわかる。肉食獣の歩く音が聞こえる。鳥の羽ばたき。河川の流れる音。魚の泳ぐ音。自分の血流。心臓の鼓動。肌を覆う湿気。土の匂い。水の匂い。何もかも昨日と同じ。怪しいものは感じ取れない。
師は微動だにせずこちらの様子をうかがっているのだろう。警戒している相手にわざわざ打ち込んでくるほどあの人はお人よしではない。なればこれは相手を察知するというよりは襲撃を諦めさせるための防御体制である。こうしている限りは襲われぬ。
問題は、それを何時まで続ければよいのか、なのだが……。

夜明けの光を感じるとともに、パトリシアはその場に倒れ突っ伏した。
超人と言えど一晩中気を張り続ける疲労は並大抵ではない。一先ずまた夜は終わり、山場は越えた。次の夜の為に心と体を回復させなければならない。寝床を整える気力もなく、パトリシアはそのまま土の上で眠りに
ごきり。
……
……
……

……

「やはり死なぬのですね。」

師の声を聴き、パトリシアは目を覚ました。
そこは土ではなく草を敷き詰めた即席の寝床。横には師・鳥越・九が座っていた。
ロウティーン未満のような背丈と顔。似つかわしくない隆々とした筋肉。短く刈りそろえられた白い髪にカラーコンタクトで青く染まった瞳。
和装に身を包み、その外側には弾帯のように苦無を装填した帯を巻き付けている。

「……オハヨウゴザイマス。」
「おはようございます。」

返す言葉の見つからないパトリシアは、痛みの残る首に手を当てつつ一先ず挨拶を交わした。

「やつがれが夜にしか動けぬと考えるのは甘すぎると言わざるを得ません。」
「ソノヨウで。」

起き上がろうとするパトリシアを鳥越が手で制した。

「休息が必要です。」
「ソノヨウデ。」

鳥越はたっぷり一分ほどパトリシアの顔を見つめてから、口を開いた。

「辛抱が足りません。」

ハァ。と息を吐き出すことでしか答えられない。

「10日もしないうちに消耗や疲労が表に出るようでは到底全く使い物になりません。」
「メンボクアリマセン。」

デモ、ケッコウ頑張ったノヨ?虫も食べたシ生水も飲んだシ。
ダイタイ、稽古をつけてクレルって話だったのにいきなりぶち殺すなんてどういう了見なのヨ。

「せめてこの密林がなくなるくらいまでは粘ってくれませんと。」
「ハイ?」
「この熱帯雨林が消えていくペースは年に0.7から0.4%ほどです。単純計算ならば、少なく見積もっても250年あればこの森は消えるわけで、やつがれも戦術を変えざるを得なかったでしょう。
そうでなくとも1万年も待てば人類の歴史は大きく変わりこの場所の有様もまた影響を受ける。10万年も待てば次の氷河期も来るでしょう。100万年待てば気候変動の繰り返しでこの森は形を保てなくなる。50億年も待てば、太陽の赤色矮星化により地表に森はなくなる。」
「ジョーダン、」
「時間があれば、より正確な予測ができます。やつがれの居場所も統計的に収束していったはずだ。あなたは待てなかった。」
「正気?」

デウスエクスもケルベロスも不死ではあるが、万年という単位で生き続けられるものではない。彼女が語っている時のスケールは明らかにパトリシアの知る世界の神性存在を逸脱している。

「ワタシにそんな時間はナイワ。はっきり言って8日もここにいるのさえオーバーステイなンダシ。
今まさにデウスエクスどもと戦う力が欲しくてここに来たのに、地球の滅亡まで待ってられるワケないデショ!」
「問題はありません。ここで流れる時間と、あなたが住まう世界の時間は異なります。望むならここで数億年でも数兆年でも鍛錬をした後に、あなたの世界へ帰ればいい。」
「……ええ?」
「やつがれは……翻訳に失敗したので。あなたからこのタネローンへと来ていただいたのです。」

丘・敬次郎を始めとして、パトリシアの師匠連中は皆、「別の宇宙の別の地球」を出身とする。そこにはデウスエクスもケルベロスも存在しない、全く別の歴史を刻む地球がある。
そんな世界から生まれた彼ら彼女らがパトリシアの知る地球に出現するには、その宇宙の法則に則る必要がある。例えば、忍者の技は螺旋忍軍の技に、機械の肉体を持つ生き物はレプリカント種族に落とし込まれる。そうでなければその世界に住む者に理解されないからだ。その世界において自身を表現することができないからだ。

鳥越・九のスペックは、既存のデウスエクスやケルベロスの能力で表現することが不可能だった。
だから、彼女はここにいる。パトリシアの出身「でない」、この地球に。

「イツから……。」
「あなたがこの密林をある程度進んだあたりです。『こちら』と似たような景色を重ね合わせて、踏み入ってくるように仕込みました。どこがその境界線だったかは、またレクチャーいたしましょう。」

感情の読めない顔で鳥越が言う。

「帰してくれるんでしょうネ?」
「勿論。」

応えるその顔には愛想笑いすらない。だが鳥越はそういう女だ。忍びとしてポーカーフェイスを崩さぬよう、今この瞬間さえ、顔の筋肉を使わぬよう細心の注意を払っているのだろう。

「……ケイコをつけてくれると聞いてきたンデスケド。」
「それなら既に終わりました。」
「どういうことデス?」
「あなたは8日で音を上げた。やつがれを打倒するにはそれを遥かに上回る年月が必要だとあなたは思い知った。
今はそれで結構です。今のあなたは、まだやつがれの求める無限にたどり着いてはいけない。」

パトリシアは不満と怒りをその顔に表して見せた。

「いずれ物語は終わる。そこから先の永劫こそが我々の時間なのです。
物語が書かれ続けている間は、やつがれと言えど思うようにはできません。
しかし物語が終わってさえしまえば、そこから先のエピローグでどれほどの怪異が発生しようとどれほどの悪逆を働こうとどれほどの理不尽を顕現しようと自由です。
今のあなたはまだ、神のペンに書かれ続けている。
しかしあなたはやがて書かれなくなる。そうなったとき、あなたはやつがれが先ほど申し上げた、文明の生き死にや星の生き死にを眺め超え遥かに行く時の流れを手に入れなければなりません。」
「それがケイコ?」
「それが教えです。今のあなたは弱くてもよい。強くなりたいと願うだけで構わない。
その思いさえ保たれるなら、我らはいくらでも憎まれる。」
「……ナニモカモが終わった後で強くなったって仕方ないワ。」
「何もかもがまだ終わる前は、やつがれどもはどうすることもできません。やつがれどもは、物語から引き裂かれた永劫なのだから。世界、認識、神々から切り離されたからこそ、永劫の時を生きることができる。
今のあなたは、ただ生きることをすればいい。何なら強くならなくたっていいのです。」
「ウソつき。忘れてナイワヨ、頭がおかしくなりそうなほど稽古させられた日々のコト。」
「あれは必要最低限です。」

恨みがましい視線にも鳥越は涼しい顔を貫く。

「あなたがケルベロスとしてあの場に立ち、神の作った舞台で立ちまわるための最低限の準備、設定です。何事にも理由付けは必要ですから。
特に我らの神はそれを殊更に気にする。殺戮の経験もないようなモノを戦場に送り出すことは神自身が許さなかった。」
「誰ヨ、その神ってのは。」

鳥越はその質問には答える代わりに、パトリシアの胸元にそっと指をあてた。

「この先にあなたの心臓がある。」
「……ソレで?」
「あなたも感じているのではありませんか?あなたの中には、あなたではない者が潜んでいる。
寧ろあなた自身はそれの端末に過ぎない。」

度々見る、あまりにも現実感があり、かつ現実味に欠けた夢を思い出す。ワタシの中から何かがあふれ出す夢。触手と金属の結晶とその他の名状しがたい何かで出来た虹色に光る生物の夢。この身の正体がそれであり、この身を引き裂き宇宙まで届く力を示す夢。

「知らナイ。」
「いずれ折り合いをつけなさい。何ならこの場で。」
「エンリョします。」
「そうですか。」
「ワタシはワタシヨ。師匠達の思惑も知らない。神様なんて関係ない。ワタシはワタシの思うようにするワ。ワタシは強くなりたいの。ワタシを強くしてくれない師匠なんてこっちから願い下げよ!」
「あなたはあなたではありません。
あなた自身の意思などというものはこの世のどこにも存在しません。あなたは我々と我々の神の端末であり、単なる器です。
……あなたは我々に都合よく動く。それがあなたの運命です。」
「Fuck! そんなものが運命なら、断固として受け入れない!」
「我々に抗うと。」
「勿論!」
「勝てるつもりで?」
「勝って見せるワ!ノックアウトして3カウントフォールキメて、そしたら骨と肉をバラバラにしてじっくり煮込んで山に捨ててやる!
あなたたちが教えてくれたようにネ!」
「本気ですか?」
「マジヨ!」
「ならばよかった。」

鳥越は微笑んだ。
え、と思う間にその顔は歪み、その体も歪み、その景色ごと渦巻いて視界の全ては風呂敷のように織り込まれ消えていった。あとに残ったのは、密林の風景だけ。但し、自分が今まで見ていたそれとは異なっていた。
とっさに携帯電話を取り出すと、電波は辛うじて通じた。戻ってきたらしい。

――――ならばよかった。

何がよかったのか。初めて見た鳥越の微笑み。
心から反逆を歓迎する、そんな理由があるのだろうか。
考えようとして、やめた。どうあれ、師匠達の思惑を跳ね除けるのは変わらない。それは決めたことだから。

――――……我々に都合よく動く。それがあなたの運命です。

決められた運命などない。ワタシの抵抗で、運命の存在を反証してみせる。ワタシのうちに怪物が潜むなら飼いならして見せる。
ああ、全宇宙的恐怖が親しげにワタシを小突いた気がした。

 

以上……。」
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白煙に消ゆ

「お前如きを生んだ親が不憫でならない。

こんばんは鳩です……

……妄想ケルベロスブレイド……。

安らぎ

彼女の師匠は体質に合わないくせにきつい煙草を好んだ。最初の一吸いですぐに捨ててしまう。それ以降はヤニの匂いが辛いからと。ボクが味わっているのは煙草じゃなくて思い出だから、と。殺し屋風情がセンチなことだと何時もなら笑ったけれど、その時のパトリシア・バラン・瀬田は泥の上に打ち倒されていたから、怒りの種にしかならなかった。

「大丈夫ですかぁ?」

パトリシア・バラン・瀬田の頭に座り込んで丘・敬次郎が、のんびりとした声をかける。丘は長く細い煙を吐き出した後、先端だけが燃えた煙草を左手で弾くと、右手に持ったメスで微塵に砕いた。
頭上からの声にパトリシアは歯噛みしようとしたが、顎の腱はとうに切られていて、軋む痛みを発生させることしかできなかった。肘も膝も肩も股関節も深く切り抉られ、力を入れることができない。

「まあ全然弱っちかったですよね♪」

楽しそうな師の声にパトリシアの怒りは更に燃え上がる。
動くことは出来なくとも魔力を編むことは出来る。全身を巡る精気に意識を集中させる。筋力は使えずとも、サイコキネシスのように魔力で以て自分の体を動かして……

「おっと。」

丘の掌がパトリシアの背に触れる。一拍おいて、パトリシアの全身から大量の蒸気が噴き出た。水分を抜き取られたパトリシアは悲鳴と共に白い霧を口から掃き出し、意識を手放した。

「不死者と言えど、渇きには勝てませんか。」

丘は懐から紺色の紙箱を取り出すと、二本目の煙草を取り出し火をつけた。

—-

水流の手裏剣を自在に飛ばす丘は接近戦を得意とするパトリシアにとって相性の悪い難敵と言えた。だが、相性の悪い相手を戦う術は身に着けている。
左手の銀籠手を盾にしつつ、隙間を狙う手裏剣を右の金籠手のジャブで打ち払いながら速いステップで距離を詰める。
飛び道具の乱射では止まらないと判断したのか、丘もメスを抜いて構える。メスと言っても戦闘用であり、刃渡りは十数センチに及ぶ。切れ味も当然人界の刃物とは比較にならず、ケルベロスやデウスエクスの手足であろうと容易く斬りおとす力を秘めている。
丘がパトリシアの喉めがけまっすぐに突き出したナイフを、パトリシアは金の右手で手首ごと押さえる。そのまま腕を引き込み銀の左拳を顔面に。しかしこれは丘の左掌が阻んだ。間髪を入れず取った手首を手掛かりに飛びつき腕十字で追撃する。が、丘は倒れない。片腕だけでパトリシアの体重を支え切り、逆に巻き付かれた右腕ごと地にたたきつける。窮地を察したパトリシアは腕を離し、顔面への足裏蹴りを置き土産に飛び退いた。

「体重に頼るのはよくないことです♪我々は、そのぐらいの重量は羽ほどにも感じない♪あなたもそうでしょう?」
「ソウネ。なら……。」

唾を吐き捨て、両手を開いて再びパトリシアが迫る。襟首狙いの両手を丘はしゃがんで避け、腹を一文字に切り裂こうとメスを構えた。が、その顎を膝で蹴り上げられた。

「ピュアなパワーで勝負っ!」

金銀の両手を組み、スレッジハンマーを振り下ろす。
地が揺れ、丘の頭部が泥の地面に深く食い込んだ。
泥……?「!」倒れた丘に、片足ではなく両足で飛び乗るようにスタンピングを行う。
パトリシアが立っていた箇所の地面から水の槍がまっすぐ上に突き立った。
上に載ったパトリシアを吹き飛ばしながら丘が飛び起き、足から着地する。

「残念、もう少しで串刺しにできたのに♪」
「イツの間ニ……。」

見れば乾いていたはずの地面はもうすっかりぬかるみ、今も尚ぞぶぞぶと音を立てて更に深く柔らかくなり続けている。

「さあ♪」

泥から盛り上がる針山に、パトリシアが辛うじて飛び退く。泥の滑る感触に冷たい汗がにじむ。今は何とかなったが、この上を駆け続ければいずれは足を滑らせてしまうだろう。そうすればワタシは串刺しの標本になるかメスで刻まれ開きになるか。

「チィッ!」

魔力の球を放ち牽制しつつ跳び退る。まだぬかるんでいない場所へ。砂利か草地か、足の滑らない方へ。
丘はゆったりと歩きながら近づく。最早手裏剣と呼ぶにはあまりにも大きな水の刃を大雑把に飛ばし斬りながら。間合いを詰める必要はない。遠距離でも十分に切り裂ける。地の利はとった。あとは勝つまで嬲るだけ。

「……ほう♪」

まだぬかるみの及んでいない草地に、パトリシアがうずくまった。目線は強く丘を捕らえており、呼吸も乱れていない。ダメージによるものではない。
――――体重に頼るのはよくないことです
――――我々は、そのぐらいの重量は羽ほどにも感じない
自身の言葉を反芻する。あれは。

「来ませい♪」

溜めに溜めた脚力がパトリシアの肉体をロケットのように噴射した。牽制に放たれた水の刃も右の金籠手が弾き破って、引き絞った左拳を笑みを浮かべる顔面に!

「ふふ♪」

光のような速さで、メスを握った丘の右手がうねった。

――――

「大丈夫ですかぁ?」

パトリシアが目覚めると、布団の中にいた。見渡すと八畳ほどの和室。
全身に包帯が巻かれており、どうやら手当をしてもらったようだと思い至る。
上半身を起こし、丘に向き直る。痛みは残るが、動きにはもう支障はない。半不死者であるケルベロスたるもの、『この程度』の外傷を何日も引きずるようでは話にならない。

「今何時デスか?」
「夜の8時半ぐらいです。6時間ほどたっぷりおねんねしてましたヨ。」
「そうデスカ。」
「ま、その様子なら心配いりませんね♪」

丘は部屋の机から灰皿を取って布団の横に胡坐をかくと、懐から煙草を取り出した。

「好きなんですネ。」
「ええ。」

丘がライターを取り出すとその手を制して、パトリシアが人差し指を立てた。その先には魔力で虹色に光る小さな炎が灯っている。

「ドウゾ。」
「こんなことも出来るんですか。」
「イロイロ研究中デス。」

お言葉に甘えて、と丘がパトリシアの指先から火を取り、ゆっくりと一吸い。
長く煙を吐き、咳き込みながら灰皿に押し付けて捨てた。

「モッタイナイ。」
「吸えないんですもの、しょうがない。」
「何で吸えないものを吸いたがるんデス?」
「僕が、実家から持ってきていいと許されている唯一のものだからです。
と言っても、実家からギってきた奴はとっくに吸い尽くして、これは自腹で買った奴ですけど。」
「この里の忍者って喫煙禁止じゃアリマセンでしたカ?」
「一吸い程度なら大目に見る、ですって。首領が。そもそも禁止じゃなくて、ヤニの匂いは目立つから気を付けろって程度の話なんで。」
「ナルホド。一本もらえマス?」
「どうぞ♪」

受け取ろうとする腕がまだ痛む。煙草は丁度よい鎮痛剤になりそうだった。
手にした左手でもらった煙草をくるくると回し見る。

「フィルターないノ?」
「父母そろってそればっかり吸ってたんで、フィルターのある煙草の方が珍しく感じたんですよね、懐かしいなあ♪」

今度は丘がパトリシアの煙草に火をつける。
パトリシアは葉を吸い込まぬよう慎重にゆっくりと吸い込み、そして吐き出した。

「キツいっていうか、生の味って感じ。」
「お気に召しませんでしたか?」
「滅相もナイ。」

パトリシアは二口目を更にゆっくりと吸い、鼻から吸った息と混ぜて薄い薄い煙を吐いた。舌についてしまった葉を指で取り、灰皿にこそいだ。

「本当は、ケルベロスじゃないんデショ?」
「はい♪」
「地球なんか簡単に壊セル。」
「はい♪」
「宇宙だって壊したい放題作りたい放題ダッケ?」
「はい♪」
「それなのに、煙草は吸えナイノ。」

丘の笑顔が、ニヤニヤしたものから柔和なものに変わる。

「人でなしではありますが、やはりどうあがいても人間だ、ってことなんでしょう。僕らは。」
「自覚あるんダ、ひとでなし。」
「思えばボクの師匠も思い出やら恋心やら大事にされていらっしゃる。
というより、そういうものがないと自分が自分でなくなっちゃうんでしょうね。」
「人でなしのクセニ。」
「人間らしさを捨てて捨てて、そうやって行ったら、多分もう、ほとんど残らなくなっちゃったんですよ。
それこそ、デウス・エクス・マキナでいいんだってなっちゃう。
でもそうじゃないんです。師匠が望むから、師匠はああなった。
僕らも、こうなった。僕はこうなった。
地球だの宇宙だの壊せるのにまだ人間らしさがある、っていうのは、うーん。多分因果が逆なんですよね。
師匠たちの、『あいつらの』人間らしさが、その強さを求めたんです。そうしなきゃいられない『人間らしさ』だったんですよ。」
「しかもマダ満足してナイ。」
「そう。追い立てられるように神を殺す力をと進むうちに、ああなっちゃった。こうなっちゃった。それ以外のやり方なんておもいつかない。今でも。」
「いい迷惑ダワ巻き込まれる方も。」
「本当です♪本当ですよ。ボクぁもっとのんびりしていたいのに。」
「本当ニ?女の子とイチャイチャしたかったりしないノ?」
「ホントホント。あの方たちだって本当は、普通になりたいはずなんだ。人間大好きですからね。
人間の振りをして人間の世界で、のんびりしたいんじゃないかな。」

丘が箱から灰皿から、自分が消した煙草を拾った。

「吸うの?二吸い目。苦手なんじゃなかったノ?」
「のんびりゆっくり、吸います。それならきっと大丈夫。」

パトリシアは自分の銜えたばこを突き出し、丘の銜えた煙草に火をつけた。

紺色の箱に鳩の意匠がついたその煙草の名は、
Peace。

以上……。」

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カテゴリー: その他, どうしよう, アクスディア EXceed, ケルベロスブレイド, シルバーレイン | 1件のコメント

最低限しか健康でも文化的でもない生活

「お前より下などいない!

こんばんは鳩です……

……妄想ケルベロスブレイド……。

祈り方さえわからない
それが仕様としてプログラムされたものだったのか、それとも意図しない挙動であったのか。機械不死者ダモクレスはその思考の答えを出せぬまま稼働限界に至り、心臓部に幾多の鎖が現出した。彼/彼女は鎖に締め上げられ凝縮し、瑠璃色に光る宝石となり、宇宙空間を漂う星屑になった。

「偵察?」
「否。」

パトリシア・バラン・瀬田が見つけたとき、そのダモクレスはボンヤリと夜空を見上げていた。

「演算を行っていた。」
「お邪魔でしたカ。」
「そうでもない。」

鉄色をしていること以外は人間とほぼ変わりないそのダモクレスは、パトリシアに顔を向けると掌から刃を突き出し歩き出した。

「待ってヨ。こんなところで始めたらヒトが来ちゃう。」
「構わん。グラビティチェインの足しにする。」
「ケルベロスも来るワ。」

ダモクレスの足が止まった。

「呼んだのか。」
「イイエ?騒いだらヒトが来るかもしれナイ、その中にケルベロスも混じってるかもって。単なる確率の話ヨ。」
「……。」
「歩きましょうカ。」

ダモクレスは瞳を明滅させながら上下左右に不規則に振った。そして、「いいだろう。」
と応えを返した。

「ヒトケのナイところへ。罠とかじゃナイワって、まあ信じてもらえないでしょうケド。」
「心拍、発汗から判断するに、嘘を言っている蓋然性は極めて低く無視できる程度と判断する。」
「確率の問題?」
「そうだ。」

並んでアスファルトを歩き出す。
パトリシアのベアフットサンダルが鳴らすチャリ、チャリ、という細かな装飾が揺れる音と、ダモクレスが地を踏むガシャン、ガシャン、という足音が、リズムよく不協和音を響かせている。

「ワタシを殺すつもりダッタ?」
「殺すつもりだ。今でも。」
「敵だから?」
「ケルベロスだからだ。お前は?」
「どっちでも?殺し合いデモそのままお別れデモ。」
「……お前らにとって、我らは不倶戴天の敵、というわけではないのか?」
「全体で見たらソウね。でもここでワタシがあなたを見逃しても、大局に影響はないワ。」
「なら何故逃げない。あるいはあの場で戦闘行動を起こさなかった。
騒ぎになった方がお前たちには有利なはずだ。」
「仕事帰りで疲れててさあ。
正式な討伐ってことになったら報告もしなきゃいけないし書面も書かなきゃいけないし、損壊した器物の修復(ヒール)もやらなきゃイケナイ。メンドクサイったら。」
「面倒さの為に、勝率を捨てるのか。理解しがたい思考だ。ケルベロスは必ず滅ぼさなければならない。一体残さず。だがお前たちにとって我々はそうではないのか。」
「倒すワ、いつかは。でも別に今日である必要はない。ワタシにはやりたいことがたくさんあるんだモノ。
人生は短いし、体は老いるし!アンタらの相手ばっかりしてられナイ。」
「お前たち定命の者には理解できないのか。」

ダモクレスは、一歩だけ歩調を止めた。パトリシアの後ろに一列に並んで歩き直す。

「我々デウスエクスは永遠に生きる。老いず、傷つかず、欠けず歪まず永遠に。
太陽系が滅び、銀河が組み変わり、やがて熱的に死、そしてその後何が起こるのか。
我々は永遠に見続けることができる。
お前たちはケルベロスは、そんな私たちの永劫を殺す。永遠に消し去る。無限への可能性を不可逆的に消滅させる。

 だから、一人たりとも生かしておく理由がない。」
「あーらアナタ見た目よりお熱いノネ。熱暴走は大丈夫?」

パトリシアは振り返り言う。

「それにあなたの言うことは現実的ではアリマセン。
デウスエクスは地球のグラビティチェインを消費して生きている。
100億年もすれば、地球という星そのものが赤色巨星になった太陽に飲み込まれて消えてる。
まあそれだけ時間があれば、『ピラー』だの『地球』だのに頼らないグラビティチェインの確保方法を見つけてるカモしれないケド。」
それでも永遠は尊いと?その未来においては、すべてのデウスエクスは完全にグラビティチェインを失い、使い切っているだろう。
己の肉体を保持することすらも適わず、コギトエルゴスムという宝石形態になって復活の時を待つ仮死状態に陥る。
グラビティチェインを供給する新たな星が出現し、偶然にそれと出会い、復活するに十分な量のそれを摂取するその日まで。
可能性はある。宇宙は広く、地球に似た星も存在する可能性がある。広大な宇宙も彷徨い続けていればいずれはそういった星にたどり着くこともあり得るだろう。

「可能性の問題、で、いいノ?」
「……。」
「ワタシには、約束された終末にしか見えないンだけど。」
「それでも。
それでも我々は、今を生きていく必要がある。コギトエルゴスムではなく、この体で。
お前の言うように、新たなグラビティチェイン供給源を見つけるためにも必要なことだ。」
「うっふっふっふっふっふっふっふ……。
永遠の命を持つお方から、今を生きるだなんて言葉をいただくトハ。うふふっ♪」

足音は変わり続けていた。
舗装されたアスファルトから砂利、そして土の道へ。
風景も変わり続けていた。
ビルの並ぶ街から離れ、暗く静かな山間へ。

「……サテ。ダモクレスさん。そろそろ」
「Gyugyuuguuuuuweeeeeeeeeeeeeeee!!!」

猛烈な機械音を立て振りぬかれた剣を、パトリシアの左腕の銀籠手が受け止める。
返しに繰り出す右の金籠手のジャブ連打はステップバックで交わされた。

「やるじゃん Vagabundo.」
「GiGiGiiiiiiiiiiiijijijji!」

攻防は互角と言えた。
ダモクレスが斬りつければパトリシアはそれを防ぎ、
パトリシアがカウンターを狙えばダモクレスは察知して引き下がる。
パトリシアが攻めっ気を出せば、ダモクレスは剣を掲げ牽制し、
ダモクレスが攻勢をかければ、パトリシアは両手の籠手を壁のように構え、防ぎきれなかった傷をヒールグラビティで傷を消し去る。
何合か打ち合ったあと、ダモクレスが剣をもう一本取り出した。
隙を見つけて一撃を入れるのではなく、攻勢で押して隙を抉じ開ける構えだ。
俄かに手数の増えたダモクレスに、パトリシアは防戦一方を強要される。
ヒールによる回復も追いつかなくなり、両手の籠手も傷つきだした。
反撃をしようにも相手が絶え間なく振るうは鋭い刃。リーチも致死性も遥かに上だ。
それでも行かねばならぬ。苦しい時こそ前に出る。そうでなければ勝機ないまま嬲り殺される。
師匠の教えを反芻し、意を決してパトリシアが踏み込む。
その瞬間、ダモクレスの剣がパトリシアの両腕の隙間を縦に裂いた。

「!!」

顔面から胸、そして腹の上部まで一直線に血が滲み、そして噴き出す。
昏倒寸前のパトリシアにさらなる追撃をかけるダモクレス。パトリシアは反射的に両手を突き出すも、痛打に耐えきれず左右金銀の籠手は叩き割られた。
だが、ダモクレスは大きく退く。

「何だそれは。」

割れた籠手から現れたのは、腕ではない。
赤黒い、青黒い、それでいて光を放つ縮れて伸びた触手だ。

「お前は、」

パトリシアの割れた顔からは出血が止まっていた。
代わりに傷口からは底知れない闇が覗いている。

「……何だ。」

縦に裂かれた口が大きく開き、問いの答えを叫ぶ。
ただし、言葉ではない何かで。

「GuGuGuuuuu!!!」

突如叩きつけられた何かにダモクレスの肉体が軋む。
記憶容量に莫大な量の情報が流れ込み、演算装置が急激な負荷を訴える。

『ワタシは、お前たちの』
『ワタシたちの』
『生まれた意味を知っている』
『それは』

大量のノイズ。痛み。頭を抱える。
目の前の者を何とか見据えようと瞳を凝らすとそこには。
触手と骨と立体で編まれた醜悪な手があり。
それは先ほど自分が切り裂いたパトリシアの傷口から沸いていた。

『お前たちの生から取り出す』
『永劫を』
『引き裂く』

受信した言葉を理解する前に、『手』がダモクレスを打ち据えた。いや、打ち上げた。
腹部を打ち前のめりになった体に更に下から。
何度も打ち上げ、その度に触手は伸び、高く高くダモクレスは殴り上げられていく。
一撃ごとに、ダモクレスの神経が異常な感覚を覚え、脳内には記憶と未来視とが交互に差し込まれた。
反撃は愚か姿勢の制御すらもできなくなったダモクレスは、パトリシアの肉体から伸びた異形の拳に押し上げられ、遂に地球の重力圏から遥か遠くへと殴り飛ばされてしまった。
思い返すのは、夜空を見ながら演算していたこと。星の動きと星同士が相互に与える影響、そこから予測される遥か未来の姿。わたしも、その星の一つになるとは。

パトリシアが目覚めたのはいつものベッドの上。
酒を飲み過ぎてぶっ倒れた。そんな記憶がある。酷く痛む頭、今にも吐き出しそうな胃袋を抱え、バスルームへ。
水を一杯飲み、シャワーを浴びてもう一度水を飲む。人心地ついて長い息を吐き、洗面所の鏡に目を向ける。
まぎれもなくワタシでない何か。

以上……。」

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